この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

29 教会に帰ったら

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 武器屋で買い物を済ませ、それから服や靴を買いそろえた。最後に牛二頭を買ったら、ろくな金が残らない。当初は教会に寄付する金を残しておく予定だったが、ほとんど金が残らなかった。

「リザ。金を寄付するのは無理そうだ」

「寄付か。でも、もう十分寄付したんじゃないかな?」

 教会は今、パチンコで言うところの確変に突入しており、大フィーバー中だ。絶賛、水が出続けている。

「アオ君は、まだ旅を続けるのか?」

「俺は教会で働くつもりはない。もっと別のことをしたい」

「別のこと?」

 でっかい屋敷を買って、何人もメイドをはべらして、馬や牛たち、そのほかいろんな動物たちと戯れて生きる。毎日可愛いメイドたちとパーティーして、遊んで暮らす。それが俺のしたいことかな。今のところ。

「リザには教えない」

 というか、そんなことを言う子供がいたら、ドン引きするにきまっている。

「なんだ。教えてくれないのか?」

「強いて言うなら、自由気ままに生きるって感じだな」

「自由気ままに? はは。アオ君らしいね」

 まぁ、俺が言う自由の根幹は、酒池肉林になっているけどな。

「リザはどこまでついてくるんだ?」

「どこまでも行くよ」

「ふーん」

 一体何を考えているか分からないが、まぁいいだろう。俺とリザは買った牛を連れて、教会に戻った。



★★★




「アオ様。もはやあなた様は神の生まれ変わりだ」

 教会に帰るや否や、神父のヌアザとシスターのアリアンは、俺に土下座してきた。教会の床に頭をこすり付け、泣いている。ただ泣いているのではない。号泣だ。

「なにしてんだ。それに、いつの間にかアオ様って呼んでるけど、やめろ。普通に呼び捨てでいい。気持ちが悪い。さっさと立て」

 俺は言ったが、ヌアザは鼻水を飛ばして叫んだ。

「なにをおっしゃいますか! アオ様は主神ダーナ様の生まれ変わりだ!!」

 ヌアザとシスターは土下座したまま立ち上がらない。もう、なんだというんだ?

「神父様。一体どうしたのですか? 確かに水が出たことは喜ばしいことですが、どうして土下座など」

「リザ。アオ様。地下の泉に来てください。それを見ればわかります」

 泉? 水が止まったのか? 何が起こった?

 俺とリザは神父とシスターに連れられ、再び地下室に行った。



★★★



 行ってみると、確かに水は止まっていた。止まっていたが、おかしな輝きを発していた。

 水が光っている。蒼く透きとおり、優しい光を発している。

 しかも、プールの中央に設置した水魔石が、LED電球のごとくペカーッと輝いている。

「なんだこれは。なんで光ってる?」

「これは、聖水です!!」

「聖水?」

「はい!! 伝説の水魔法使い、水神リル様が生み出したと言われる、聖水でございます!!」

 ヌアザのキャラが壊れ始めた。最初の頃にあった、優しい神父の顔はない。泣きすぎて、顔面崩壊している。

「そうか。聖水ね。よかったじゃん? あとはこの聖水の管理、お前たちに任すわ」

 俺はポンと、ヌアザの肩を叩いた。すごい軽い口調で言ってみた。

「はい!! 命を懸けて守ります!!」
 
 命を懸けるらしい。勘弁してくれ。

 その後、ヌアザはダーナ教会の本部に問い合わせ、教会の聖騎士を呼び寄せるという。それまで俺がここにいてくれと言われたが、真っ平御免である。

 俺はその場で「分かった」と言ったが、心の中では逃げる算段を考えていた。そして次の日の深夜、教会を抜け出して街を出発した。もちろんリザもグルになって、一緒に逃げ出す。牛車や必要物資は、一日だけ倉庫を借りてそこに隠した。いつでも出発できるように準備したのだ。

「このままだと俺は教会の神様として祀られそうだ。そんなことになったら、自由なんてない」

「そうだな。アオ君は一日中信者に拝まれるな」

「そんなことは絶対に嫌だ」

 俺とリザは危険を顧みず、真っ暗な夜に街の倉庫へ向かい、オルフェと牛たちを連れ、この街を抜け出した。借りていた倉庫のカギは、金とともに倉庫の中に放り込んでおいた。きっと賃主が見つけるさ。

「さて、アオ君。行先は?」

「そうだな」

 どこに行こうか悩んだが、王都に行くべきだと思った。

「王都に行こう」

「じゃぁ。街の北にある街道だな。そっちが王都への道だ」

「砂漠化はしていないのか? この装備で行けるか?」

「ここら辺はまだ大丈夫だ。だいぶ緑が減ったけど、砂漠化はしていないよ。私の国は砂漠化がすごいけどな」

「そうだったのか。すまない。俺は牛車を操れない。リザ、頼むぞ」

「分かった。だけど、アオ君にもきちんと教えるからな」

「了解した」

 俺とリザは王都への街道に向かう。暗い夜道だが、月明かりが綺麗で、何とかなりそうだ。ポニーのオルフェは牛車の後ろにロープでつないで、後をついてきもらう。街を出る時、優しいヌアザとシスターのアリアンを思い出したが、きっとなんとかやるだろうと思い、心の中で別れを言った。

 そして、街を出てすぐのことだった。

 なんと、深夜の誰もいない街道で、知っている顔を見つけた。夜中だというのに、奴は俺たちをずっと待っていたようだ。

「やっと来たか。待ってたよ。リザ」

 その男はにこやかに俺たちへ挨拶をした。

「まさか、お前」

「ライドか?」

「そうだアオ君。ライドだ。ライド・エルナントだ。俺も、一緒に行かせてもらうぜ」


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