この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

無名

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第一章 伝説の水魔法使い

31 休憩の中で起きた悪夢

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 俺たちは街道を歩き続けた。

 街道と言っても、それほど整地されているわけではない。砂利や岩、地震による地崩れ。ボコボコした道で、けっこうな悪路が続く。牛車に揺れ防止の高性能スプリングが付いていなければ、俺の胃の中はすでに空っぽだったろう。

 そんな街道の両脇には、ユーカリの木に似た植物が多く生えている。名前は分からないが、ユーカリの木っぽい。地球でユーカリは乾燥に強く、地中深くに根を張る。地下水を引き上げ、砂漠の緑化に貢献しているようだ。

 ふいに、リザが牛車を止めた。どうしたのかと思ったら、お花を摘みに行くという。俺は摘めるような花をまだ見たことが無いが、リザは花を摘みたいようだ。彼女はすぐ近くの茂みに消えたと思ったら、「ジャーッ」という、ものすごい音が聞こえて来た。

「あの女、まじか? 一体、何にぶっかけてやがる」

 彼女は茂みから出てくると、少し顔を赤らめている。手には水筒を持っており、まさかと思った。

「おいリザ。その手の物はなんだ」

「……乙女にそれを聞くのか?」

「いいから、なんだと聞いている」

「私のお花だ」

「…………」

 言葉が出ない。以前、山越えをした時も水筒を手に持っていたような気がするが、今回初めて気が付いた。

「まさかとは思うが、お前……」

「アオ君。君には分からないと思うが、冒険者にとっては貴重な飲み水なんだぞ。聖粉を入れてシェイクすれば、半日は持つんだ!」 

 リザは顔を真っ赤にして恥らっているが、俺はドン引きだ。

「やめてくれ。それは最終手段にしてくれ。俺がいる以上、排せつ物を飲む必要はない。俺は毎日魔法の訓練を続けているし、出せる水の量も少しずつ増えている。今は教会から持ってきた聖水もいっぱいあるし、なんとかなるだろ?」

「そうだが、これは私の習慣と言うか、当たり前になっていたから、つい……」

「近くに池や沼があったらすぐ行ってくれ。浄化すれば大量に水を作れる。そんなことをする必要はない」

「アオ君。君はやさしいな。ありがとう」

 ニコッと、リザは微笑むが、手に持っている水筒が気になって仕方ない。早く捨ててほしい。おしっこも浄化できるが、今のところ、彼女の尿を浄化する気にはなれない。 

「リザ、今はそれよりも周りに気を配ってくれ。盗賊がいるんだろ?」

「大丈夫だ。範囲は狭いが、私も気配察知の魔法は使える。ここにはいないと思う」

「そうなのか? じゃぁ、外に出て牛たちに水を与えて大丈夫か?」

「大丈夫だ。私が近くにいるし、何かあったらすぐに応戦する。牛たちのこともあるし、少し休憩しよう。交代で仮眠を取るんだ」

「分かった。まずはオルフェと牛たちを休ませる」

 俺は牛車の外にピョンッと飛び出る。身長が低いから、仕方ない。俺は彼らの為に大きめの桶を用意すると、そこに水を生成し、飲ませた。ごくごくと飲んでいる。

 リザはと言うと、少し周りを見てくると言って、ユーカリが生える林の中に消えて行った。こんなところに俺一人残すなと思ったが、近くにいるから大丈夫だという。一体何の保証があって言っているのか不明だが、今はリザを信用するしかない。

 俺は牛たちの蹄の状態や体調の確認をしていると、リザが突然林の中から現れた。今度は「大」をしてきたのかと思ったが、違った。彼女の手には、なにやら大きな黒い生物が握られている。

「アオ君。獲物を捕まえた」

「な、なんだそれは。足がいっぱいあるけど」

「ゴキブリだな」

 リザはサッカーボールほどもある、真っ黒いゴキブリを手に持って、ドヤ顔を決めた。ゴキブリはまだ生きており、足をワサワサと動かしていた。

 俺は、声にならない声を上げてしまった。

「アオ君! こんなところで騒ぐな!!」

「す、すまん。だが、その虫は絶対に食べないぞ。見たくもない」

「こいつは美味いんだぞ。枯れ草しか食べない、おとなしい奴らなんだ。確かに見た目は悪いが、味は保障する」

 リザのサバイバルレベルが並じゃない。間違っても俺はゴキブリは食べられん。

「今からこいつを焼くから、少しだけ食べてみるといい。おいしいぞ」

 リザは煙があまり立たないように、小さく薪を積み上げ、ゴキブリを焼き始めた。

 俺はその光景を見て、この女は逞しいなと、本当に思った。  

 

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