この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

35 王都への道中で

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 俺たちはオーガを助けることにした。傷だらけになってしまったオーガに傷薬を与え、包帯を巻く。打ち込んだ弾丸は相当数あるが、聖水を飲ませると傷が盛り上がり、弾頭が肉体から剥がれ落ちた。

 リザが以前、水魔法使いの水には回復効果があると言ってたのを思い出した。教会で生み出した聖水なので、回復効果も数倍あったと思われる。オーガに与えた傷は、深いものを残してほとんど完治した。

 オーガは暴れると困るので、ローブで手足を縛り、荷台に寝かせておいた。今は気絶していて目を覚ましていない。

 ライドだが、結局俺たちと一緒に来ることになった。彼に助けられたこともあるが、聖水を見られてしまった。

 必然的に疑われることになり、彼に嘘を付いて突き放すより、こちら側に引き込んだ方が得策だと判断した。ライドには、俺が水魔法使いであると伝えた。

 俺が水魔法使いであると知った時のライドの顔は、特に驚いていなかった。何となく感じていたんだろう。俺が特別な何かを持っていることに。それが水魔法だったとは思わなかったようだが、ライドは言った。

「なんでオーガを助けたが分からないが、アオの力は使わせてもらうぞ。水を売って金にする」

 こいつはよほど金に飢えているようだ。水が無ければ何もできないのに、金だけあっても仕方ないのではないか? それとも、金さえあれば何とかなるのだろうか?

 俺は村から出たことが無いし、情報が無い。もしかしたら金があれば水を独占できるのかもしれない。

 体制を整え、俺たちは王都に向かう。

 ライドは大型の馬に乗っていたので、彼はそれで移動してもらう。俺たちは牛車での移動だ。ちなみに、ポニーのオルフェは先ほどと同様、牛車の後ろにつないで歩かせた。


★★


 日が昇り、交代で仮眠を取る。休憩をはさんでひたすら街道を移動し続ける。木々は生えているが、水の気配はない。王都まではかなり遠いし、旅人や商人は飢え死にする可能性もある。

 それを避けるために、途中途中に移動販売の馬車が待機しており、旅人に水や食べ物を売っていた。

 国御用達の商人らしいが、並んでいる食べ物や水はぼったくりに近い値段だ。

「リザ。水を売って食料を買おう」

「ダメだ」

 ズバッと切り捨てられる。

「な、なんでだ?」

「食べ物なら私が狩ってくる。ここら辺には、野草もある。灰汁抜きが大変だが、下ごしらえをきちんとすれば食べられる野草が多くある」

「そうだなアオ。俺もリザの意見に賛成だ。ここで水を売っても、大した額にならない。もっと高値で買ってくれる水屋に行くべきだ」

「水屋だと?」

「王都には水を専門にしている商人がいる。俺には知り合いが何人かいるから、ここで売るよりは高く買い取ってもらえる。アオはこんな場所で無駄に魔力を使うな。俺の為に使え」

 ライドがリザの意見に同調する。かなり尊大な態度でイラッとするが、彼の話も一理ある。仕方ないので俺は黙って従った。

「だけどリザ! 俺はもう虫を食わんぞ!」

「虫は食べない? 王都でも虫は常食されているぞ。アオ君。君は今まで何を食べていたんだ?」

「腐りかけたパンや、ドロドロのスープが大半だな。地中深くにジャガイモもあったから、それを食っていたこともある」

「ジャガイモ?」

 たしかこっちではジャガイモではなく、モイという名前だった。ジャガイモっぽい食べ物だ。いや、自然薯に近いかな? とろろ芋っぽい、ジャガイモだ。この世界では水に強くて、結構とれる。

「ジャガイモってのは、俺の勝手な呼び方だよ。正確には、モイっていう植物のはずだ」

「モイだと? あれは毒があったはずだし、相当深く掘らないと出ないぞ」

「芽をとれば食べられるし、水魔法を使えば固い土も泥に出来る。だから時間をかければ取れるんだ」

 俺は村で食べ物が無いときは、いろいろと食えそうなものを探して取っていた。夜、村人にばれないようにコッソリとな。いくら腹が減っていても、虫は嫌いだから食べないようにしていたんだ。

「そうなのか。君はまだ子供だというのに、本当に逞しいな」

 リザが感心しているが、俺の精神年齢は子供ではない。大人だ。逆に逞しいのは、リザだよ。俺じゃない。虫を食べたり、狼の血を飲んだり、並みの精神力じゃ出来んぞ。

「アオ。今後は水をそんなことに使うな。俺たちの生活水と、売る為だけに使うんだ。魔力がもったいない」

 ライドが横やりを入れてくる。しかも俺に向かってリーダー面している。かなりムカつく態度だ。

「ライド。はっきりさせておくぞ。リーダーは俺か、状況によってはリザになる。お前に発言権はない」

「子供のお前がリーダーだと?」

「あぁそうだ」

 俺は小さな胸を張って、リザの座る御者台の横でふんぞり返る。

「くはははは! 俺がいなければ死んでいたのに、ずいぶん強気にでるなぁ! それにオーガを助けて牛車に運んでやったのはリザと俺だぞ。よくそんなことが言えるな」

 確かに、オーガに襲われたときは助けられた。命の恩人かもしれないが、俺はライドを信用していない。

「ライドにはいろいろと見られたから一緒に来てもらう。借りは確かにあるが、いずれ利子を付けて返す。今はお互いに利があるから、利用しあうだけだ」

「ははは! すごいことを言う子供だな。お前のような子供が、まだこの国にいたんだな」

 ライドは俺の言葉にびっくりしているようだ。確かに、10歳程度にしか見えないガキにそんなことを言われればびっくりもするだろう。大人顔負けのセリフだからな。

「おいライド。アオ君は神の御使い様だ。分をわきまえろ」

 牛車に乗ったリザが、手綱を握りながらライドに命令した。

「はぁ? リザまで何を言っているんだ。こいつが神の御使いなわけないだろ。水魔法が使えるただの餓鬼だ。すこし頭が回るようだが、お前ほどの冒険者が騙されるなよ」

 リザはライドの言葉に苛立ちを隠さない。

「ライドは教会でのアオ君を見ていないからわかるんだよ。彼は本物だ。なぁアオ君♡」

「……え?……」

 いや、本物ってなんだよ。ハートマークまで付けるなよ。リザは俺を崇拝していないか? 洗脳したわけじゃないのに、いつからこうなった。

「リザ、何の話だ。教会だと?」

「ライドには分からなくていい。態度を改めなければ、いずれお前は聖騎士に粛清される」

「聖騎士だと? おいおい。何のことだ」

 ライドが馬に乗りながら牛車を操るリザに食い下がる。牛車の横を大型の馬に歩かれるので、けっこう邪魔だ。

「アオ君の言った通り、信用される行動をとらない限り、お前は私がどこかで殺す。以上だ」

 リザはそれだけを言って黙った。もう何も答えない。

「町では助けてやったのに、ひどい言われようだな。こいつはまいったよ」

 ライドは苦笑いをして、牛車から離れて歩いた。

 
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