この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

無名

文字の大きさ
39 / 85
第一章 伝説の水魔法使い

37 王都へ到着

しおりを挟む
 王都への到着目前となり、オーガの処遇をどうするか話し合うことになった。

 俺が衝動的に助けてしまった為、今後どうするか詳しく考えていなかった。このまま解放してもいいが、確実にオーガは人へ復讐するだろう。

 解放してやりたいが、現状では難しい。しかもこのオーガはどこぞの商人が買い上げたオーガと思われる。このオーガの為に大勢の人が死んでいる。場合によっては討伐隊が編成されているかもしれない。このオーガに、街中で目立つような恰好はさせられない。

「一体このオーガをどうするつもりなんだ。どこかの奴隷商に売り払うのか?」

「そんなことはしない」

「ならどうする気だ? 子供の衝動的な思い付きで飼えるほど、オーガは甘い生物じゃないぞ」

 ライドは正論を振りかざす。確かに、ライドの言うとおりだ。俺のやっていることはどうかしているが、偽善者魂に目覚めた日本人を甘く見るなよ。

 こうなったら、やるところまでやる。

 俺の最終目標はハーレムパラダイスなんだ。オーガだろうと、俺の気に入った女なら助ける!

 もはやむちゃくちゃな理論で俺の脳内は完結する。

 助けると言ったら助ける。無理を通して道理を蹴っ飛ばす! 

 この旅自体、むちゃくちゃなんだ。行けるところまで行くさ。

「リザ。牛車のまま街の中に入れるのか?」

「税金は取られるが、普通に入れるぞ。王都は狭い道も多いが、牛車が通れる大きな道もたくさんある」

「なら、オーガを降ろさず、このまま王都に入る。オーガは布でくるんで隠しておこう」

「分かった」

 リザは頷いてくれるが、ライドが首を横に振る。

「お前は何を考えているんだ? 常識がないのか? 無知で奴隷法を知らないのなら、俺が今から教えてやろうか?」

 奴隷法がなんなのか、俺には知らん。奴隷自体、この世になくていいものだと思ってる。このくそったれな世界の法律など、知ったことではない。

「ライドの意見など知らん。水を売るための商人を教えてくれればいい」

 俺の言葉に、ライドの表情が険しくなる。頭がイカれている思っているんだろう。

「どうやら言葉が通じないようだ。お前が破滅に向かうのは構わないが、俺を巻き込んでくれるなよ?」

 巻込むだと? お前が勝手についてきたんだろうが。よく言うよ。

 俺にとっては、俺の水魔法を知っているライドをどうにかしたい。オーガよりも、ライドを処分したいぞ。結局、ライドとは意見が割れたまま、王都に入ることになった。


★★★


 長い時間をかけて、ようやく王都に到着した。

 万単位の人間が住むというから、どんな場所かと思ったら、王都は、巨大な湖に浮かぶ島だった。

 島へ渡るには船が必要かと思うが、レンガ造りの巨大な橋が架けられている。虹のようなアーチを描きながら、王都へと伸びている。

 島の上空には飛竜が舞い、塔のようにそびえ立つ真っ白な城へ、離着陸しているのが見えた。

 俺はその光景を見て、感動した。

 この世界に生まれてから、ようやくファンタジーらしい景色を拝めたからだ。地球にあるモンサンミッシェルを、何倍にもしたような風景だ。

「おお。すごい。これが王都か」

 牛車の幌から顔を出して、王都を眺める。田舎ッペ丸出しだが、関係ない。

 橋の上にはたくさんの人が行きかっているし、馬車も牛車も普通に走ってる。橋の上だというのに露天まで出来て、お祭りのようだ。

 俺にとっては大好きな光景だが、一つ気になった。

「湖ってあんな色してないよな?」

 湖に浮かぶ城下町と言うから、飲み水が大量にあると思ったが、違った。

 湖の水は赤く濁り、とても飲めるような状態ではない。今までに見てきた、毒水と同じ色をしていた。

 村の水も酸が強く、赤く濁っていた。王都の湖も赤い。同じ状態に見える。なんだか関係がありそうだ。そして、王都には水魔法使いがいないのだろうか? 世界には数人いると聞いているし、王都だから一人くらいいるんじゃないか?

 この赤い水。どうしているんだ?

 俺は疑問に思うことは多々あったが、考えても無駄だと思った。俺がどうにかするレベルじゃないからな。

 いろいろと考えているうちに、王都に到着した。

 街に入る時に税金は払ったが、牛車の中をいちいち確認されたりしなかった。ライドは通行証を持っていたし、金を大目に払うことにより、それを回避していた。

 簡単に言うと、門番の兵士に賄賂を贈って街に入れてもらった格好になる。だから面倒な検閲はされなかった。とんでもないザル警備だが、入っていいのだから入らせてもらおう。

 オーガに関しては意外とおとなしくしていたので、特に問題なく街に入れた。

 さて、ここからが大変だ。ファンタジーの街ということで、ワクワクもある。いろんな店を回って買い物もしたいが、まずは先立つ物が必要だ。

「こっちだ。知り合いの水屋がいる」

 俺とリザはライドに案内され、水屋のいる場所に向かった。









しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...