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第一章 伝説の水魔法使い
39 王都の水情報
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俺とオーガのクーは、牛車で大人しく待っていた。二時間ほど待っていただろうか?
しばらくしてリザとライドが帰ってきた。
ライドは意気揚々としているが、リザの顔つきがおかしい。何か落ち込んでいるような表情だ。水屋との交渉は決裂したのだろうか? ライドの表情を見る限り、そうは思えないのだが。
「リザ。水は売れそうなのか?」
「ん? あぁ。売れた。これから水樽を運び込むから、少しだけ手伝ってくれ」
リザの顔は浮かないままだ。声のトーンも低い。何があったのだろうか?
俺が心配していると、ライドが急に怒鳴った。
「おいお前! ロープをほどいたのか!? オーガを野放しにしたら大ごとになるぞ!!」
クーをロープで縛っていないので、ライドが怒ったようだ。さっきロープがほどけたからな。そのままにしていた。
「別に、逃げる気配はないし、逃げられないだろ。こんな王都のど真ん中で」
「だからと言って、危険が無いわけじゃない!! そいつの恐ろしさはお前も見ただろ!!」
ライドがヒステリックに騒いでる。うるさい。オーガの危険性など俺は知らん。
「騒がないでくれ。クーに関しては俺がきちんと見ている。心配するな」
「ちょっとまて、クーだと? そいつの名前か? オーガの言葉が分かるようになったのか?」
別に、普通に喋ったけどな。オーガ語じゃなく、俺たちが喋る大陸語で。きちんと話は通じるし、言うことも聞いてくれる。今のところ、敵意は全くない。
「どういうことだアオ。そいつと契約したのか?」
「契約? そんなものは知らん。とにかく説明はあとだ。水を売るんだろ? さっさとしてくれ」
「…………アオ、きちんと説明はしてもらうからな」
子供に良いようにあしらわれて、ライドはご立腹だ。作業を進める為、俺が作った水樽を全て外に運び出すことになる。クーは俺の指示に従い、水樽を荷台から移動させてくれた。馬車から出ないように、水をリザに受け渡していた。
リザはオーガが言うことを聞いているのを見て驚いていたが、「やはりアオ君は神の御使い様」などと言って自己完結していた。
★★★
水を売った金は全部で10万シリンほどになった。小樽8個を売ってその金になった。
多いと思われるが、ライドには仲介料として3万シリンを払った。文句を言われると面倒なのでそのくらいの金を払ったのだ。リザにも3万払い、俺の手元には4万シリンとなった。これでオルフェや牛たちの餌をたくさん買える。
ライドはそれ以外にも別の商品を売りつけて金を得ていたようだが、それは知らない。ただ、リザがずっと浮かない顔をしていた。水屋から帰ってきてから、ずっとだ。リザに元気がないと、なんだか落ち着かない。
奇虫を取ってきては俺に食わせてくれるリザ。生血を飲んで、下痢をして、自分のおしっこを飲む根性ある女。そのリザが元気でないと、なんだか不安になる。まだ出会ってから浅いが、俺はすでにリザを信頼していた。
俺はリザに聞いてみた。
「リザ。どこか具合が悪いのか? 元気がないみたいだが」
「あ? いや、そんなことはない……」
御者台に乗って、牛車を操るリザ。手綱を握る手に、力が無い。今向かっているのは宿がある場所だが、リザは御者台に乗ったままボーっとしている。
「どうしたんだ? 言ってくれ」
月の物か? 生理ならどうしようもないが、どうなんだ? おじさんに言ってみろ。
「すまない。あまり顔に出すつもりはなかったんだが、今回はどうしようか悩んでいてな」
リザが口ごもる。一体何があったんだ?
あまり聞くのも悪いかと思って荷台に戻ろうとしたら、金を数えていたライドが口を開いた。
「教会の子供が働かされていたんだよ。それを見てリザがおかしくなったんだ」
「ライド! お前!」
「どうせわかることだ。今言っても変わるまい」
「どういうことだライド。教会の子供?」
「水屋の建物があっただろう? あの建物の地下には、大きな採掘場がある。王都があるこの島からは、少量だが水魔石が採掘されるんだ」
「水魔石が採掘される? あんな街中で、しかも建物の下で採掘しているのか?」
地盤が沈没したらどうする気だ? 馬鹿なのか?
「そうだ。採掘場って言っても、地下は迷宮になってる。王都の地下には、ダンジョンが広がってるんだよ。この王都には、ダンジョンへの入り口が腐るほどある。奴ら水屋はその入り口の上に建物を建てて、不当に水魔石を採掘してる。奴隷の子供たちを使ってな」
何? 子供たちを使って?
「まさかその子供たちってのは……」
俺がリザに聞くと、リザは残念そうな顔で言った。
「ヌアザ様の所にいた、教会の子供たちだ。私があの水屋に入ったら、牢屋に入れられていた。泥だらけで、傷だらけだった。私を見て助けを求めていたが、どうしようもなかった」
「そうだったのか……」
宗教間の戦争だか知らないが、結局は捕まえた子供を奴隷として売ったらしい。ヌアザはその戦いに負けて、子供を奪われたんだな。
「助けたくても助けられない。奴隷は文化の一つだから、金で買い戻すしか方法は無い。たとえ買い戻しても、全員を養う余裕はない。ましてやあれだけの人数、逃がすなど不可能だ」
リザは肩を落とした。元気がなかったのはこれが原因か。
まったく、次から次へとろくでもない事ばかりだ。とんでもない国だぜここは。
俺はオーガのクーを見ると、クーは俺をじっと見ていた。
クーも目で訴えているように見えた。
『私の里も滅ぼされた。女子供たちは奴隷にされた』
なぜだか、そう言っているように見えた。
なにか期待しているように俺を見ていたが、俺はまだ子供だ。水魔法使いとして未熟だし、何もできない。
今はあきらめてくれ。
宿に着くまで、俺も無言になり、牛車には重い空気が漂った。
しばらくしてリザとライドが帰ってきた。
ライドは意気揚々としているが、リザの顔つきがおかしい。何か落ち込んでいるような表情だ。水屋との交渉は決裂したのだろうか? ライドの表情を見る限り、そうは思えないのだが。
「リザ。水は売れそうなのか?」
「ん? あぁ。売れた。これから水樽を運び込むから、少しだけ手伝ってくれ」
リザの顔は浮かないままだ。声のトーンも低い。何があったのだろうか?
俺が心配していると、ライドが急に怒鳴った。
「おいお前! ロープをほどいたのか!? オーガを野放しにしたら大ごとになるぞ!!」
クーをロープで縛っていないので、ライドが怒ったようだ。さっきロープがほどけたからな。そのままにしていた。
「別に、逃げる気配はないし、逃げられないだろ。こんな王都のど真ん中で」
「だからと言って、危険が無いわけじゃない!! そいつの恐ろしさはお前も見ただろ!!」
ライドがヒステリックに騒いでる。うるさい。オーガの危険性など俺は知らん。
「騒がないでくれ。クーに関しては俺がきちんと見ている。心配するな」
「ちょっとまて、クーだと? そいつの名前か? オーガの言葉が分かるようになったのか?」
別に、普通に喋ったけどな。オーガ語じゃなく、俺たちが喋る大陸語で。きちんと話は通じるし、言うことも聞いてくれる。今のところ、敵意は全くない。
「どういうことだアオ。そいつと契約したのか?」
「契約? そんなものは知らん。とにかく説明はあとだ。水を売るんだろ? さっさとしてくれ」
「…………アオ、きちんと説明はしてもらうからな」
子供に良いようにあしらわれて、ライドはご立腹だ。作業を進める為、俺が作った水樽を全て外に運び出すことになる。クーは俺の指示に従い、水樽を荷台から移動させてくれた。馬車から出ないように、水をリザに受け渡していた。
リザはオーガが言うことを聞いているのを見て驚いていたが、「やはりアオ君は神の御使い様」などと言って自己完結していた。
★★★
水を売った金は全部で10万シリンほどになった。小樽8個を売ってその金になった。
多いと思われるが、ライドには仲介料として3万シリンを払った。文句を言われると面倒なのでそのくらいの金を払ったのだ。リザにも3万払い、俺の手元には4万シリンとなった。これでオルフェや牛たちの餌をたくさん買える。
ライドはそれ以外にも別の商品を売りつけて金を得ていたようだが、それは知らない。ただ、リザがずっと浮かない顔をしていた。水屋から帰ってきてから、ずっとだ。リザに元気がないと、なんだか落ち着かない。
奇虫を取ってきては俺に食わせてくれるリザ。生血を飲んで、下痢をして、自分のおしっこを飲む根性ある女。そのリザが元気でないと、なんだか不安になる。まだ出会ってから浅いが、俺はすでにリザを信頼していた。
俺はリザに聞いてみた。
「リザ。どこか具合が悪いのか? 元気がないみたいだが」
「あ? いや、そんなことはない……」
御者台に乗って、牛車を操るリザ。手綱を握る手に、力が無い。今向かっているのは宿がある場所だが、リザは御者台に乗ったままボーっとしている。
「どうしたんだ? 言ってくれ」
月の物か? 生理ならどうしようもないが、どうなんだ? おじさんに言ってみろ。
「すまない。あまり顔に出すつもりはなかったんだが、今回はどうしようか悩んでいてな」
リザが口ごもる。一体何があったんだ?
あまり聞くのも悪いかと思って荷台に戻ろうとしたら、金を数えていたライドが口を開いた。
「教会の子供が働かされていたんだよ。それを見てリザがおかしくなったんだ」
「ライド! お前!」
「どうせわかることだ。今言っても変わるまい」
「どういうことだライド。教会の子供?」
「水屋の建物があっただろう? あの建物の地下には、大きな採掘場がある。王都があるこの島からは、少量だが水魔石が採掘されるんだ」
「水魔石が採掘される? あんな街中で、しかも建物の下で採掘しているのか?」
地盤が沈没したらどうする気だ? 馬鹿なのか?
「そうだ。採掘場って言っても、地下は迷宮になってる。王都の地下には、ダンジョンが広がってるんだよ。この王都には、ダンジョンへの入り口が腐るほどある。奴ら水屋はその入り口の上に建物を建てて、不当に水魔石を採掘してる。奴隷の子供たちを使ってな」
何? 子供たちを使って?
「まさかその子供たちってのは……」
俺がリザに聞くと、リザは残念そうな顔で言った。
「ヌアザ様の所にいた、教会の子供たちだ。私があの水屋に入ったら、牢屋に入れられていた。泥だらけで、傷だらけだった。私を見て助けを求めていたが、どうしようもなかった」
「そうだったのか……」
宗教間の戦争だか知らないが、結局は捕まえた子供を奴隷として売ったらしい。ヌアザはその戦いに負けて、子供を奪われたんだな。
「助けたくても助けられない。奴隷は文化の一つだから、金で買い戻すしか方法は無い。たとえ買い戻しても、全員を養う余裕はない。ましてやあれだけの人数、逃がすなど不可能だ」
リザは肩を落とした。元気がなかったのはこれが原因か。
まったく、次から次へとろくでもない事ばかりだ。とんでもない国だぜここは。
俺はオーガのクーを見ると、クーは俺をじっと見ていた。
クーも目で訴えているように見えた。
『私の里も滅ぼされた。女子供たちは奴隷にされた』
なぜだか、そう言っているように見えた。
なにか期待しているように俺を見ていたが、俺はまだ子供だ。水魔法使いとして未熟だし、何もできない。
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