この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

41 深夜の礼拝

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 俺たちは深夜に、ダーナ教会に向かうことになった。

 眠っているライドを起こすかどうか迷ったが、もはやここまでくれば一蓮托生。信用できるかどうかは関係ない。ボロ雑巾になるまでこき使ってやる。もしも裏切りそうになったら、捕まえて拷問でもなんでもしてやる。

 ということで、俺たちはライドをたたき起こして、みんなで教会に向かうことにした。


★★★


 深夜に数キロも歩くのはなかなか疲れる。俺の歩く速度が遅すぎたので、しまいにはクーがおんぶしてくれた。

「アオは軽いな。もっと食べないとダメだぞ」

「クーだってガリガリに痩せてるだろ。あばら骨が浮き出ててじゃないか」

「ははは。そうだな」

 クーは俺に軽口を叩く。最初の頃よりも、少しだけ心を許してくれたようだ。俺が水魔法使いだからかな。

「アオ。そんなことより、よくもこんな夜中に起こしてくれたな。一体教会に行って何をするつもりだ? 水の女神は俺たちに何もしてくれないぞ。あそこの教会は金が無いからな」

 ライドはとにかく金に固執する。深夜にまで金の話をされるとこっちが疲れる。

「いいから付いてきてくれ。ライドにとっても大事な話になる」

「大事な話だと? 金になるのか? ちっ。付き合いきれんガキだ」

 文句ばかり言うライド。彼はなんだかんだ言いつつも、ついてきた。詳しい説明はしていないのに付いて来るあたり、ライドも俺のことが心配なのだろうか?

 ……いや、それはないな。

 ちなみに、クーが大陸語を喋ると聞いた時、ライドは仰天していた。オーガは普通、大陸語を喋らないらしい。


★★★



 一時間ほどして、ダーナ教会に到着。王都の教会ゆえ、さすがに屋根が吹き飛んでいるなどは無かったが、ボロボロの教会なのはすぐに分かった。

 壁は崩れて落ちている場所があるし、ドアなどは補修した箇所がいくつもあった。

 そして当たり前だが、深夜だから教会は閉まっている。

 玄関から入ることが出来ないので、不法侵入させてもらう。

 リザが壊れている窓を見つけると、器用に鍵を解除して窓を開ける。盗賊かっていうくらい、鮮やかに侵入する。

「アオ君、足元に気を付けるんだ。さぁ手を」

 窓から侵入する際、リザは俺に手を伸ばして抱きかかえてくれる。ギュッと抱きしめてくるので、リザの甘酸っぱい女の子の香りが、俺の鼻孔をくすぐる。

「おいリザ、俺には手を伸ばしてくれないのか?」 

「お前は勝手に死ね」

「おいおい。死ねとは物騒だな。ずいぶん嫌われたもんだぜ」

「ここ数日で、お前をさらに嫌いになった。必要なこと以外、私に話しかけるな」

 リザはライドを罵倒する。死ねとは、かなりひどい。優しいリザをここまで嫌いにさせる男も、珍しいぞ。

 やれやれと言って、ライドも教会に侵入。

 全員が中に入ると、周りを確認。

 誰もいないようで、月明かりに照らされたステンドグラスが、キラキラと輝いていた。

「あった。女神像だ。手に丸い球を持っているはずだ」

 壇上に、女神像が鎮座している。カイルの街にあった女神像と、少し形が違う。

 俺は女神像の手を見るが、水魔石を持っていない。代わりに持っているのは、壺だ。水の壺だろうか? 水の女神だけに、水の壺を持っているようだ。石膏で、綺麗に作ってある。

「なんだ? ないぞ。丸い球を持ってないぞ?」 

 俺は少し大きな声を出して、教会に響いてしまう。

「静かにしろアオ。それと、分かるように説明しろ。女神像の丸い球がどうかしたのか?」

「ライド、女神像は水の魔石を持っているんじゃないのか?」

「水の魔石? もしかして、教会が昔持っていたとされる、水の魔結晶のことか?」

 魔結晶? 

「あれは戦争でほとんどが遺失したはずだ。残っていても、壊れていて使い物にならないと聞いているぞ」

「リザ、そうなのか?」

「あぁ。そうだ。だけど、この教会の女神像は、丸い球を持っていた気がするんだが……、まさか修理でもして、作り変えたのか?」

 女神像を見ると、綺麗になっている。ひび割れなどがない。状況からして、修理した可能性がある。新品にも見えるし、新しく購入した女神像かもしれない。

 そうなると、昔からある女神像はないということだ。水の魔石も無いということだ。

 くそ。なんとなくある気がしたんだけどな。ここ最近、俺の魔力が上がってきたし、勘違いしたのか?

 クーも教会の中を探してくれるが、どこにもない。

「あきらめるのは早い。どこかに保管しているのかもしれない」

 クーは礼拝堂ではなく、別の場所を探すべきだと言ってくる。そうなると、神父たちが寝ている居住区画に行く必要があるぞ。見つかったら大ごとになる。帰りのことも考えると、日の出前には宿にいないとまずい。オーガのクーを、明るいところで見られたら大変だ。彼女は奴隷の首輪一つさえつけていないのだからな。

 俺は悩んでいると、ライドが聞いてきた。

「アオ。水の魔石が欲しかったのか? あれは水魔法使いが持っても大した力は発揮しないぞ。魔力を込めれば水を出すだけだ。あんなものがあるから、俺の妹は……」

「妹?」

「あ……、いや。なんでもない」

 ライドが何か言いかけたが、それ以上は口をつぐんだ。

 水魔石が無かったことに落胆する俺とリザだが、クーは探すのを止めない。すぐには諦めない子らしい。

 といっても、時間的に余裕が無い。まったく下見もしないで来たので、それがアダになった。

 俺とリザ、ライドが、これ以上はまずい判断した。見つかると本当に犯罪者なので、すぐに出ていくべきだと思った。

 だが。そこへ、来てはいけない者が来てしまった。

 その者は。

「お兄ちゃんたち、誰?」

 教会にいた、孤児だった。俺と同じくらいの年齢の、女の子だった。

   
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