この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第一章 伝説の水魔法使い

45 話し合いはほどほどにして、計画開始!

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 俺たちは牛車に乗り、忘れてはいけないポニーのオルフェを連れて、ダーナ教会に向かった。

 教会に到着すると、すでにクーが待機していた。司祭や助祭、教会の関係者が、何か不審な動きをしていないか聞いてみた。俺たちのことを教会本部に通報しているなら、もはやこの教会は頼れない。

 クーに聞いてみると、特に不審な動きは無いということだ。影から見張っていたらしいが、司祭の行動に問題は無いらしい。聖騎士を待ち伏せさせているとか、国に通報したりはなさそうだ。

 その後クーの手引きで礼拝堂に入ってみると、昨日のゴリラ司祭が信者に説教をしていた。

 汚れてはいたが、高級そうなローブを着て、左手には聖書らしきものを持っている。女神像がある壇上に立ち、集まった数少ない信者たちに向け、ダーナの教えを説いていた。 

 礼拝堂に入った時、一瞬、ゴリラ司祭と俺たちは目があったが、この場では知らないふりをしておく。信者たちが目の前にいるし、騒ぎ立てるのは不味い。

 俺たちもその信者の中に入り込み、説教が終わるまで聞くことにした。ゴリラ司祭はこう言っていた。

「暴力を暴力で返してはいけません。相手を赦すことが出来れば、憎しみ合うことはそこで止まります。私たちは今日も明日も困難に立ち向かわなければなりませんが、希望を捨てなければ必ず夢は叶います」

 というようなことを、信者たちに説いていた。信者たちを見ると、その話を理解しているのかよく分からない。服はボロボロ、顔は垢だらけ。靴すら履いていない奴もいる。信者の集まりと言うより、炊き出し目当てのホームレスだな。

 ただ、説教を聞く人々の中に多くの子供たちもいたので、ここには孤児がいる。奴隷にされたりしていない。そこはヌアザの教会と違うところだ。シスターも数人いるし、働いている人は多い。

 俺はリザやライドを連れ、説教が終わったゴリラ司祭に会いに行く。

「こんにちは。司祭殿。少し話をしたいのですが」

 リザが声をかけると「ここではまずい。こちらへ」と言って、すぐに執務室のようなところに案内される。かなり警戒されている。まぁ、当たり前か。

 執務室は床が抜けているなどのボロボロの内装だったが、一人の助祭がいた。助祭とは、司祭の仕事をフォローする人間だ。机に向かって何やら書類を書いている。俺たちに視線を向けたが、特に何も言って来ない。

「ここに座ってください」

 ゴリラ司祭に言われるまま、備え付けられてあったソファーに座る。するとプルウィアがどこからともなくやってきて、元気よく挨拶してくれた。

「アオ様! 来てくれたのね! ありがとう!」

 ニコニコ笑顔で出迎えてくれた。この朽ちた教会で、彼女の笑顔だけが癒しだよ。

 見ると彼女はお盆を持っていて、その上にはお茶らしき飲み物があった。飲んでくださいとテーブルに置かれるが、俺はその飲み物を見て言葉を失う。死んだ芋虫のような物が混入していたからだ。

「どうぞ! とっておきのレモネードです!」

 プルウィアはニコニコしてレモネードを置いて、部屋を出て行った。子供ながら、客の応対もしているらしい。

 俺は置かれたレモネードを見て、匂いを嗅いでみるが、錆びた鉄のような匂いがする。色も黒い。人が飲むものではないと思った。

 隣に座ったリザとクーは疑いもせずゴクゴクと飲んでいるが、ライドは躊躇している。彼は腐っても商人だ。水の良し悪しが分かっているのだろう。飲もうとしない。

 テーブルを挟んで俺たちの向かいに座ったゴリラ司祭は、ため息をついて俺たちに話しかけてきた。

「私は司祭のマーティンと申します。率直に伺いますが、水魔法使い様。あなたは我々に何を求めているのですか? ここには子供が多く、出せるお金もありません。昨日、我々から盗もうとしたものは、何なのですか?」

 社交辞令だろうが、筋肉ダルマが敬語で話してくる。気持ち悪い。昨日のように、山賊らしく話しかけてきてほしい。その方が交渉しやすい。

「いや、水を売ろうと思ってる。だから、あんたたちに水の事業を手伝ってほしい。ただ、俺を追っている奴らもいるだろうから、そいつらには俺のことを秘密にしてほしい」

「追っている奴ら? あなた方は犯罪者なのですか?」

「犯罪は犯してないと思うよ」

 うん。オーガのクーを勝手に連れまわしてるけど、人殺しはしてないな。大丈夫だろ!

「犯罪者ではない? では、先日来た聖騎士が探していたのは、あなたですか?」

「聖騎士ってのがどんな奴らか知らんが、多分そうだろうな」

 カイトの街で、神父のヌアザが聖騎士を呼び寄せるとか言ってたし。

「教会本部で探しているのはあなたなのですか? ヌアザ様とはお知り合いで?」

「あぁ。ヌアザとは知り合いだな。ここにいるリザもそうだ」

「ふむ。そうですか。では大事な質問です。あなたはルドミリア教会の水魔法使い様ではないのですか? スパイとかですか?」

 スパイ? ルドミリア? はげしく勘違いしてるな。ルドミリア教会とは仲が悪いと聞くが、本当らしいな。

「俺はどこの教会にも属してない。流浪の水魔法使いだ。ここにいるライドは冒険者で商人だ。俺の水を売ってくれる。リザは俺の護衛だ。オーガのクーは出会ったばかりだが、リザと同じく俺の護衛みたいなもんだ」

 筋肉ダルマのマーティン司祭は、俺のことをじっと見てる。嘘をついてると思ってんのか?

「はっきり言うぞ。これ以上面倒くさい話はしたくない。黙って俺に従え」

「なっ、なんだと?」

 ゴリラが目つきを変える。隣に座っていたライドは、俺の言葉を聞いて呆気にとられている。仮にも司祭に向かって、十歳の子供が命令してるんだ。そりゃ常識ある奴だったら驚くだろうな。

「マーティンのおっさんに聞くぞ。プルウィアに、綺麗な水を飲ませたくないのか?」

 俺は目の前にある汚いレモネードに指を突っ込み、綺麗な純水に変えてみせる。まるで手品だが、混入していた芋虫は、俺の浄化魔法で光の粒になり、透明な水へと変わった。

「こ、これは……伝説の浄化魔法」

 ゴリラが驚いてる。ていうか、浄化魔法って伝説だったのかよ。

「付き合ってもらうのは短期間だ。その間だけ、俺たちの秘密を守らせろ。職員だけじゃなく、子供たちにもだ。話は以上! さっそく水魔石を復活させる。行くぞリザ! クー! ライド!」

「「はい!」」 

 二人は元気よく返事をしてくれたが、ライドは頭を抱えていた。

「なんで俺がお前の手下みたいになってんだよ、まったく。信じられねぇガキだぜ。いい金になると思ったが、このガキについてきたのは失敗だったかな……」

 俺たちはソファから立ち上がると、水魔石復活に取り掛かった。

 計画開始だ。


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