この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

無名

文字の大きさ
49 / 85
第一章 伝説の水魔法使い

47 金が腐るほど入ってくる

しおりを挟む
 ライドリザが毎日、水を売っている。知り合いの水屋のみに専売し、出所を探らせないようにしている。ライドたちは教会とは別に宿を取り、そこに帰るようにしている。教会での水の荷卸しは深夜に行い、明け方に牛車を取りに来る。尾行を極力避けるためだ。

 いずれ水の出所はバレてしまうが、その前に大量に水を売りつけ、金を儲ける。

 儲けた金で奴隷になった子供たちを次々に買戻し、ヌアザの所にいた子供たちが帰ってきた。

「リザ姉ちゃん!!」

「リザ姉!」 

「お姉ちゃん!!」

 水屋で働かされていた子供たちは、リザに抱き着いた。泥だらけで汚かったが、リザは構わず子供たちを抱きしめる。子供たちは骨と皮だけになっており、栄養状態も最悪。いつ死んでもおかしくない。ギリギリのところで助けられた。

 リザは子供たちを抱きしめ、泣いている。少しでも多くの命を救えて、嬉し泣きしている。

「アオ君。ありがとう。これでヌアザ様もお喜びになる」

「いや、まだまだこれからだろ。リザはこんなんで満足なのか? 俺はまだまだ儲けて、水をばら撒くぞ。俺は陰湿な男だからな。ルドミリア教会にどんどん嫌がらせするぞ」

 この水不足を招いたのは、王国の失態と言うより、ルドミリア教会が手を引いているらしい。マーティン司祭から話を聞いて、何となくわかった。

 敵には、俺と同じ水魔法使いがいる。そいつが原因で、各地の井戸水が枯れるなどしているようだ。オーガの里襲撃も、ルドミリア教会の差し金だ。

 王都の水も、つい数年前まではこんな汚くなかったらしい。地下に水魔石があるし、湖が赤く染まるのはおかしいのだ。この国の水を、奪いに奪いまくっているようだ。ルドミリア教会が、水の権利を掌握するために。

「まぁ見てろ。奴らに一泡吹かせやるよ。次はクーの仲間を解放だな」

 俺は街で買った金庫に、腐るほどの金を放り込んだ。わずかだが生き残り、奴隷になっているオーガたちを解放する。彼らは、俺の力になる。

 
★★★


 俺は一日に三個の水魔石を復活させた。朝起きて一個。昼前に一個。寝る前に一個だ。

 掌に収まる小さな水魔石なら、そのペースで直せる。最初に行ったバスケットボールサイズは一日に一個が限界だが、小さいものなら数をこなせる。

 それによって、教会の至る所から水を出すことに成功する。

 三百年以上前に壊れて使えなくなっていた水道がある。日本にもある、蛇口式の水道管だ。教会内部にはそのシステムがあり、井戸水を使わずに蛇口から水が出るようになった。

 さすがに水道管は腐っていたので修理して直したが、蛇口をひねるだけで飲める水が出るのだ。これは、一気に文明が進歩したことを意味する。

 子供たちは毎日風呂に入るようになったし、食事も栄養がある物に変えた。少しずつだが、肌も髪も艶々になっていった。

 特に素晴らしいのは、孤児の女の子たちがみんな美人揃いなことだ。将来が約束されたような美人が、ゴロゴロいるのだ。これは異世界のクオリティーが高いことを意味する。地球ではアイドル並みの子が、ここでは普通に歩いている。これは、確実に俺の夢が広がる。

 特にプルウィア。彼女は素晴らしい。10歳程度だというのに、すでにCカップの持ち主。煤けていた髪も、今は金色に輝いている。顔も美しく、その美しさはダーナ様の生まれ変わりと、みんなから言われている。

 彼女は教会で俺を見ると、常に近寄ってきて、何かをくれる。

「アオ様! これ、作ったの! 食べて?」

 手作りのクッキーだった。シスターたちとお菓子を作ったらしい。俺が食料をたくさん渡したから、作ったようだ。砂糖はさすがに入っていなかったが、素朴な味ですごくおいしい。

 女の子から手作りクッキーをもらうなんて、日本ではなかったことだ。俺はうれしさのあまり飛び上がってしまった。

「ありがとうプル! 今日もかわいいよ!!」

「え? そんな。かわいいだなんて……」

 プルウィアは俺に褒められてまんざらでもない顔をしている。モジモジと俺を見て、顔を赤らめている。

 俺たちが後5歳、年齢が上だったら、即ベッドインの状態だ。

 プルウィアの俺に対する好感度はうなぎのぼり。水魔法使いと言うこともあるが、なぜか彼女は俺を勇者様扱いしてくれる。出会ったばかりだが、彼女は俺のハーレムパーティー確定だ。

 俺とプルウィアがイチャイチャしていると、水を売ったリザが帰ってきた。リザはイチャイチャしている俺たちを見ると、走ってきて文句を言った。

「アオ君! だから言っただろう!! 女には気を付けろ!! ろくでもない自己中心女と一緒になったら、身の破滅だぞ!! 私のような女を選べ! そうだ! 私を選べ!」

 リザは俺を抱き上げると、プルウィアから引き離す。子供に嫉妬は見苦しいが、リザも一人の乙女だ。しょうがない。

「ちょ! 何するんですか!! アオ様が困っているじゃないですか! 止めてくださいリザさん!」

 プルウィアが抗議しているが、リザは聞く耳を持たない。俺をギューッと抱きしめて離さない。

 ふふふ。ついに俺もモテ期到来か。日本ではモテ期なんて、幻想だったからな。異世界に来てからモテ期が来るのは少し悲しいが、今が幸せならそれでいいだろ。ふあはははは!

 そんなニヤニヤが止まらない俺を、ライドは遠くから冷たい目で見ていた。

 
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...