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第一章 伝説の水魔法使い

47 金が腐るほど入ってくる

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 ライドリザが毎日、水を売っている。知り合いの水屋のみに専売し、出所を探らせないようにしている。ライドたちは教会とは別に宿を取り、そこに帰るようにしている。教会での水の荷卸しは深夜に行い、明け方に牛車を取りに来る。尾行を極力避けるためだ。

 いずれ水の出所はバレてしまうが、その前に大量に水を売りつけ、金を儲ける。

 儲けた金で奴隷になった子供たちを次々に買戻し、ヌアザの所にいた子供たちが帰ってきた。

「リザ姉ちゃん!!」

「リザ姉!」 

「お姉ちゃん!!」

 水屋で働かされていた子供たちは、リザに抱き着いた。泥だらけで汚かったが、リザは構わず子供たちを抱きしめる。子供たちは骨と皮だけになっており、栄養状態も最悪。いつ死んでもおかしくない。ギリギリのところで助けられた。

 リザは子供たちを抱きしめ、泣いている。少しでも多くの命を救えて、嬉し泣きしている。

「アオ君。ありがとう。これでヌアザ様もお喜びになる」

「いや、まだまだこれからだろ。リザはこんなんで満足なのか? 俺はまだまだ儲けて、水をばら撒くぞ。俺は陰湿な男だからな。ルドミリア教会にどんどん嫌がらせするぞ」

 この水不足を招いたのは、王国の失態と言うより、ルドミリア教会が手を引いているらしい。マーティン司祭から話を聞いて、何となくわかった。

 敵には、俺と同じ水魔法使いがいる。そいつが原因で、各地の井戸水が枯れるなどしているようだ。オーガの里襲撃も、ルドミリア教会の差し金だ。

 王都の水も、つい数年前まではこんな汚くなかったらしい。地下に水魔石があるし、湖が赤く染まるのはおかしいのだ。この国の水を、奪いに奪いまくっているようだ。ルドミリア教会が、水の権利を掌握するために。

「まぁ見てろ。奴らに一泡吹かせやるよ。次はクーの仲間を解放だな」

 俺は街で買った金庫に、腐るほどの金を放り込んだ。わずかだが生き残り、奴隷になっているオーガたちを解放する。彼らは、俺の力になる。

 
★★★


 俺は一日に三個の水魔石を復活させた。朝起きて一個。昼前に一個。寝る前に一個だ。

 掌に収まる小さな水魔石なら、そのペースで直せる。最初に行ったバスケットボールサイズは一日に一個が限界だが、小さいものなら数をこなせる。

 それによって、教会の至る所から水を出すことに成功する。

 三百年以上前に壊れて使えなくなっていた水道がある。日本にもある、蛇口式の水道管だ。教会内部にはそのシステムがあり、井戸水を使わずに蛇口から水が出るようになった。

 さすがに水道管は腐っていたので修理して直したが、蛇口をひねるだけで飲める水が出るのだ。これは、一気に文明が進歩したことを意味する。

 子供たちは毎日風呂に入るようになったし、食事も栄養がある物に変えた。少しずつだが、肌も髪も艶々になっていった。

 特に素晴らしいのは、孤児の女の子たちがみんな美人揃いなことだ。将来が約束されたような美人が、ゴロゴロいるのだ。これは異世界のクオリティーが高いことを意味する。地球ではアイドル並みの子が、ここでは普通に歩いている。これは、確実に俺の夢が広がる。

 特にプルウィア。彼女は素晴らしい。10歳程度だというのに、すでにCカップの持ち主。煤けていた髪も、今は金色に輝いている。顔も美しく、その美しさはダーナ様の生まれ変わりと、みんなから言われている。

 彼女は教会で俺を見ると、常に近寄ってきて、何かをくれる。

「アオ様! これ、作ったの! 食べて?」

 手作りのクッキーだった。シスターたちとお菓子を作ったらしい。俺が食料をたくさん渡したから、作ったようだ。砂糖はさすがに入っていなかったが、素朴な味ですごくおいしい。

 女の子から手作りクッキーをもらうなんて、日本ではなかったことだ。俺はうれしさのあまり飛び上がってしまった。

「ありがとうプル! 今日もかわいいよ!!」

「え? そんな。かわいいだなんて……」

 プルウィアは俺に褒められてまんざらでもない顔をしている。モジモジと俺を見て、顔を赤らめている。

 俺たちが後5歳、年齢が上だったら、即ベッドインの状態だ。

 プルウィアの俺に対する好感度はうなぎのぼり。水魔法使いと言うこともあるが、なぜか彼女は俺を勇者様扱いしてくれる。出会ったばかりだが、彼女は俺のハーレムパーティー確定だ。

 俺とプルウィアがイチャイチャしていると、水を売ったリザが帰ってきた。リザはイチャイチャしている俺たちを見ると、走ってきて文句を言った。

「アオ君! だから言っただろう!! 女には気を付けろ!! ろくでもない自己中心女と一緒になったら、身の破滅だぞ!! 私のような女を選べ! そうだ! 私を選べ!」

 リザは俺を抱き上げると、プルウィアから引き離す。子供に嫉妬は見苦しいが、リザも一人の乙女だ。しょうがない。

「ちょ! 何するんですか!! アオ様が困っているじゃないですか! 止めてくださいリザさん!」

 プルウィアが抗議しているが、リザは聞く耳を持たない。俺をギューッと抱きしめて離さない。

 ふふふ。ついに俺もモテ期到来か。日本ではモテ期なんて、幻想だったからな。異世界に来てからモテ期が来るのは少し悲しいが、今が幸せならそれでいいだろ。ふあはははは!

 そんなニヤニヤが止まらない俺を、ライドは遠くから冷たい目で見ていた。

 
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