この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第二章

57 荒野の真ん中で、キャンプ?

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 エルメールの国に入ったが、まだまだ大きな村や町には到着しない。依然として、荒野のど真ん中だ。

 ときおり大きなキャラバンを率いた商人とすれ違うので、水と食料の売買をするくらいだ。もう何日も牛車で歩き続けているが、一向に街へ辿り着かない。

 牛は常に歩き。重い牛車を引っ張っているし、一日の移動距離は20~30キロ程度。人間一人で歩くよりも遅い。体力のある馬だったら一日に100キロ以上踏破したかもしれないが、これは牛だから仕方ない。いくらバイソンみたいな牛でも、足が速いわけでも体力があるわけでもない。

 しかも夜になると真っ暗になるので、牛車を止めてその場で車中泊するしかない。

 荒野で旅をするのは過酷なのか、ここに来るまでに何度も人の死体や白骨死体を見た。

 水のない世界なので、野垂れ死ぬ冒険者が多い。俺たちもこうならないように、気を張らないとな。

 俺たちの今の役割だが、プルウィアとクーは飯の準備。

 ライドは周囲の見張り。

 リザとポニーのオルフェは、今夜の夕食に華を添える為、狩りに出かけた。

 俺は孤独に、水をせっせと作る係り。

 一人だけ水を作り続ける、むなしい係りだが、一番重要なことだ。なにせ、みんなの生活水を作るんだからな。

 とはいえ、ダーナ教会から、水魔石を数個もらってきている。それがあれば無理に俺が水を作る必要はないのだが、魔力制御の訓練も兼ねているので、俺は水を頑張って出し続ける。

 俺が旅を始めたころと比べると、段違いで水を生成できるようになった。計ってはいないが、多分数百リットル出せるようになってる。すごい速度での成長だ。さすが俺だ。

 水の質も、さらに上がってる。聖水には及ばないが、魔水と呼べるほどの、究極の水だ。

 俺は出来た水を小さな樽に詰めて、調理しているプルウィアに渡した。どうやら今夜はシチューを作るようだ。

「いつもありがとうございますアオ様」

 プルウィアがぺこっと頭を下げる。彼女の可愛いつむじが見えた。

「プル。いいかげん俺にアオ様っていうのやめないか? 様ってつけられるほど偉い人間じゃないぞ」

「そんなことありません。アオ様はみんなを救ってくれました。アオ様は勇者様です!」

 プルウィアが握り拳を作って俺を見てる。彼女の透き通る瞳が、俺の濁った両目に突き刺さる。

 彼女に俺の真の目的がばれたら、きっと失望されるだろうな。ハーレムの王国を築こうとしてるんだからな。

「じゃぁプル。せめて敬語は辞めてくれないか?」

「敬語ですか? でも、私はただの平民ですし……。勇者様に敬語を使わないのはどうかと……」

「いや、リザもライドも、クーだって敬語使ってないだろ。別にかしこまる必要はないんだぞ」

「は、はい。分かりました。少しずつ努力します」

 プルウィアはなんだか俺を神聖視してる。止めてほしい。いずれプルウィアを喰っちまおうと考えてるのに、それは止めてほしい。彼女に手が出しづらくなる。

「まぁ、そうだな。少しずつでいいから、敬語は辞めてくれ。んじゃ、今日のシチュー、楽しみにしてるよ。クーもがんばってくれ」 

「はい。アオ様」

「あぁ。分かってる」

 クーはかまどで火の調節を黙々とこなしていた。真面目で頼りになる女である。

 俺は再び水の生成に勤しむ。

 今度は水の濃度を変えて、生成してみる。

 今までは純水を出すだけだったが、アルカリ性の水を出せるようにしてみる。もしも魔法で強アルカリの水を出せるなら、油と混ぜ合わせて洗剤や石鹸を大量に作れるかもしれん。塩がいっぱいある国なら、塩析という手法で石鹸を作れるかもしれないからな。

 俺は新たな魔法実験に取り組んでいると、リザがどこからともなくやってきて、獲物を取ってきたと言った。

 こんな荒野でまともな生き物がいるのかと思ったら、モグラを取ってきたという。リザの手には灰色のモグラが握られていた。

「どうだアオ君! 私はやる女だ!」

「そ、そうか。すごいな。さすがリザだ」

「ふふん」

 リザはすごくうれしそうだ。

 彼女の捕まえてきたモグラは、大型の猫サイズ。とてもモグラの大きさではない。手は鋭い爪が生えているし、完全な魔物である。

 モグラを取るには地中を深く掘る必要があるのだが、リザは巣穴に燃えた木をぶち込み、煙を焚いていぶりだしたのだという。

 簡単に取れないらしく、リザは運が良かったと喜んでいる。

 彼女の手に握られているグッタリとしたモグラを見ると、なんだか哀れである。過酷な環境で頑張って生きていたのに、いきなり殺されるんだからな。弱肉強食だから、仕方ないッちゃ仕方ないけどさ。

 リザは取ってきたモグラをどうするのかと思ったら、血抜きをして内臓を取り出した。すぐに食うらしい。下処理が終わると、リザは毛が付いたまま火の中に投入。脂の乗ったモグラは、焚火の中で盛大に燃え上がった。

 10分も経てば、肉汁が垂れてきて、うまそうに見えるモグラ君。体毛は火で焼け落ち、ただの肉塊になってしまう。こうなると、可哀想とかいう感覚は無い。おいしそうとしか思わない。

「今夜はごちそうだな!」
 
 リザはすごく喜んでいる。肉が食べれるので、俺もうれしいことはうれしいが、丸焼きにされたモグラを見ると、なんだか微妙なうれしさだった。

 案外、可愛い見た目をしていたからかもな。

 ルドミリア教会のロイドとかは死んでもなんとも思わんが、可愛い動物や魔物が死ぬと、心が痛むな。やはり、地球にいた時の記憶があるからかな。

 俺はそう思いつつも、リザが切り分けてくれたモグラ肉をガツガツ食べた。




 
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