この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第二章

65 バカ騒ぎばかりしていられない

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 俺とアルテアは砦を綺麗に掃除した後、家畜の状態を見る為、家畜小屋に向かった。

 砦の中には放牧場があり、そこで家畜を世話している。ほとんどはニワトリで、豚やヤギなども少数飼っていると言っていた。

 俺は相棒であるポニーのオルフェが気になったので、家畜小屋に直行。アルテアに案内されて小屋に到着した。

 小屋は、普通の厩舎だった。牛や馬を飼育するための、比較的大きめの家畜小屋だ。天井が少し低いが、照明も取り付けられていて、暗くはなかった。ただ、太陽光が無いのが少し残念だ。

 てっきり、この小屋の中にオルフェや牛たちがいると思ったら、砦の中を走り回っていた。牛たちはのんびりとクズ野菜を食べていたが、オルフェに限っては走り回っていた。

 背中には小さな女の子を二人乗せて、家畜小屋の周りをグルグル走り回っている。すごく楽しそうだ。でも、おとなしいオルフェが、出会ったばかりの子供を背中に乗せるなんてな。確かに、オルフェは優しくて社交性があるが、出会って数時間の子供を乗せることは滅多にない。

「あの馬がアオ様の大切な馬ですか?」

「ああそうだ。赤ん坊のころからの付き合いだ。オルフェっていうんだ」

「そうですか。オルフェですか」

 アルテアと俺は、家畜小屋の周りで遊ぶ子供たちを見ている。彼らは家畜の世話を任されている子供たちのようで、休憩時間にオルフェと遊んでいたようだ。

「元気そうで良かったよ。もしもオルフェが食われていたら、俺はこの砦を消滅させていたかもしれん」

「え? 今なんて?」

 近くにいたアルテアが、俺の言葉を聞き逃さなかった。

「もしもオルフェが殺されていたら、さすがの俺でも理性を保っていられそうにない。あの子は、俺の家族だから」

 縁もゆかりもないこの異世界で、初めて俺に優しくしてくれたのが、あのオルフェだ。人ではなくポニーだったが、俺にはそれで十分だった。奴隷のような生活を送っても耐えて来れたのは、オルフェがいたからだ。

「そ、そうですか。あの馬には、とびきりの野菜を用意しましょう」

 アルテアは俺の言葉を真摯に受け止め、オルフェを特別待遇にすることに決めた。


★★★


 この家畜小屋のある大きさは、テニスコート二面分ほどで、畑より少し大きい位の場所だ。平地でもないし、少し傾斜が付いている。オルフェはそんな狭い場所で、子供たちと一緒に遊んでいる。

 子供たちも牛やポニーを見るのが珍しいのか、すごくはしゃいでいる。

「おいおい。あんまりはしゃぐと転んで怪我するぞ。足元は岩だからな?」

 俺はそう思ってみていたら、一人の男の子が目の前で転んだ。俺と同じくらいの年齢の子だ。ひざをすりむいて、大泣きしている。

「だから言ったのに」

 俺はその男の子に近づいて、怪我の状態を見た。皮膚がめくれて、かなり血が出ている。岩場で転ぶのは危険だな。打ち所が悪かったら死ぬぞ。

 俺は岩場に住む危険性を再認識しつつ、けがの治療にあたった。

「名前は?」

「うっ。ぐす。え、エルロイ」

「そうかエルロイ。少し染みるぞ」

 俺は水魔法使ってエルロイの傷口を洗い流した。俺の水魔法は回復効果があるので、すぐに血が止まって、薄皮が出来始めた。

 万が一の時のためと、プルウィアに渡されていた包帯を、ポケットから取り出す。俺はその包帯をエルロイの膝に巻いて、ぎゅっと縛った。

「これでよし。今度は転ぶなよ」

「う、うん。ありがとう水魔法使い様」

 エルロイは舌ッ足らずな感じで言って、ぺこりと頭を下げた。年相応の、可愛い仕草だった。初めて俺を見て驚いていたが、きちんとお礼を言って頭を下げてきた。偉い子だ。

「ねぇ水魔法使い様」

 エルロイが急に、俺に尋ねてきた。プルウィアと同じく、「様」をつけて呼んでくる。

「エルロイ。俺は水魔法使いだが、名前は、アオっていうんだ。年もエルロイと近いはずだ。友達みたいに接してくれ」

「え? そう? じゃあ、アオ様。アオ様は、神の御使い様なんだよね? ボクの父さんと母さん、今どこにいるか知ってる?」

 エルロイの両親だと? なんで俺に聞く?

「ん? エルロイの父さんや母さんはこの砦にいないのか?」

「うん。戦争で怪我を負って、ダーナ様の所に旅だったんだ。だから、ダーナ様に遣わされてきたアオ様なら、父さんたちのこと知ってるかと思って」

 ダーナ様の所に旅立った? おいおい。ダーナ様はこの世にはいないぞ。それって、もう死んだってことじゃ……。

「エルロイ。君の両親のことは、分からない。どうして、俺が知っていると思ったんだ?」

「ダーナ様は、水の女神で、生まれ変わりの神様だから、水魔法使い様なら知ってると思って」

 エルロイは悲しそうな顔をしていた。近くでエルロイを見ていた子供たちも、同様の顔をしている。多分、この子達は親を失った孤児だ。オルフェが近くに寄り添って、子供たちを慰めている。

 普段おとなしいオルフェがあんなに走り回っていたのは、元気のない子供たちを癒すためだったのか?

「ねぇアオ様。ボクの父さんと母さん、ダーナ様のところに行けたかな」

 エルロイはさびしそうな笑顔で、俺に笑いかけた。

 さすがに、話が重すぎて答えられない。俺は沈黙するしかなかった。
 
 近くで見ていたアルテアは、彼らの両親を助けられず、悔しそうな顔をしている。アルテアは悔し泣きしそうな顔で、エルロイにこう言った。

「君たちのお父さんとお母さんは、きっと水魔法使いになって生まれ変わります。この世界を救うために、きっと帰って来ます」

「……………うん。そうですね、アルテア様!」

 エルロイや周りの子供たちは静かに笑った。無理やり笑っているような、いびつな笑顔だった。

「…………」

 リザがどうしてこんなに必死になってオアシスを探しまわっていたのか、今、少しだけ分かった気がした。ハーレム生活を夢見る俺も、さすがにこれは笑って見ていられない。

 この砦に来る時も子供や老人が死んだが、その時はあまり悲しくはなかった。出会ったばかりだったし、それが普通だと思ってしまった。だが、直接子供たちと触れ合ってみて、よく分かった。

 俺には力がある。日本人の時にはなかった、力がある。助けられるなら、助けようと、改めて思った。





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