この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第二章

66 劇的に食料生産を上げるには

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 それから数日が過ぎた。

 俺は畑にたまった汚泥や汚水の除去に奔走し、リザは数名の狩人とモグラ狩りに出かけている。ライドは顔が割れていないので、俺が作り出した水を持って、資金調達と物資調達に向かっている。プルウィアは子供たちと一緒に、水汲みや料理、洗濯をしている。特にプルウィアは頭が良いので、教育がない子供たちに勉強を教えている。

 最後に、オーガのクーは砦の警備、並びに、人材の育成を始めている。それぞれが手分けして作業している。

 俺はアルテアと一緒に砦の現状を改善すべく、奔走している。

 水不足と汚水処理が上手くいっているので、次に目をつけるのは食料不足だ。聖水で植物の発育は良いと思われるが、それだけに期待してはダメだ。

 俺は、食料足解決に向けて、一つの植物に目を付けた。

 植物と言うより、魔物だけどね。

「アルテア。これを見てくれ」

 俺はアルテアの前に、一つの木鉢を差し出した。その鉢植えの中には、二匹の魔物がウネウネと動いている。

「これは、マンドラゴラですか?」

 さすがに、アルテアも知っていたようだ。プルウィアが知っているくらいだからな。

「こんなに元気なマンドラゴラは初めて見ました」

 俺が作り出した水を数日与えていたからな。こんなに動く生き物だとは思わなかったけどな。

 良く見ると、鉢植えの中で根っこがウネウネ動いてる。俺が水を与えようと手を差し出すと、より根っこが激しく動く。俺が水をくれると認識しているようだ。

「なんだか、懐いているように見えますが」

「懐くっていうより、俺が水をくれる人間だと、認識している感じだな」

 大根のような形をしており、俺の手に向かって、根っこを伸ばそうとしてくる。

「もしかしてこの子達、使い魔になってませんか?」

「使い魔?」

「はい。魔物も一定の条件を満たすと、人間に従属するのです。犬と人間にある、主従関係みたいな感じです」

 ほぉ。そんなものがあるのか?

「従属? 奴隷とは違うのか?」

「従属は特に制約はありません。魔力のつながりは出来ますが、普通は家畜のように、人間へ従属するだけです。逆に隷属は、魔法の力で相手を縛ることです。命令に逆らうことが出来なくなります」

「へぇー。そんな感じなのか」

「調べてはいませんが、多分、ポニーのオルフェちゃんとアオ様は、主従関係にありますよ。魔力のつながりがうっすらと感じられますから」

「え? そうなの? なんでわかるんだ?」

「私は人より魔力制御が少し得意ですからね。魔力量は多くありませんので、それだけが取り柄です」

 アルテアは照れているのか、気恥ずかしそうにしている。

「それは面白いな。よし。外に行って、マンドラゴラを引っこ抜いてこよう」

「ちょ! 引っこ抜いてどうするんですか! マンドラゴラの根っこには毒があって、処理が大変なんです! 持ってきてもどうしようもできませんよ!」

 俺が突然引っこ抜いてくると言ったので、アルテアが「待った」をかける。

「いや、こいつらの頭に生えている葉っぱをもらえばいいだろ。俺が水を与えてから、急成長してるぞ」

 鉢植えのマンドラゴラを見ると、確かに、俺が育て始めたころと大きさが違う。大体、二倍くらい違う。俺の頭くらいに成長してる。たった数日でこの大きさだ。このまま行けばかなりの大きさになる。

「こいつらの葉っぱは無害なんだろ? 根っこを傷つけなければ死なないし、草を刈りとっても痛がる様子もない。荒野にはこいつらが点々と生えているし、ひっこぬいて育てようぜ」

 アルテアは俺の提案を疑問に思っている。

「確かに、葉は栄養があって食べられますが、苦くておいしくないですよ。灰汁抜きをきちんとすればおいしく食べられますが、とても面倒なのです」

「ふうん。そうなのか? 食べたことないから分からなかった」

 荒野に埋まっていて、誰も手を付けていない理由が分かった。食用にはあまり向かないからだな。マンドラゴラの事を教えてくれたプルウィアは、とても貧乏だった。食べるものが無い時は、仕方なくマンドラゴラを食べていたのかもな。

 ためしに、俺はマンドラゴラの頭に生えている草を一枚もらった。ギザギザした、硬そうな葉っぱだ。ブチッとはっぱを千切ったが、マンドラゴラは何も感じていない。ウネウネ動いてる。

 俺はそのギザギザした硬い葉っぱを食べてみた。生で食べてみた。

「あっ! 生で食べると体によくないですよ!!」

 俺は芋虫のように、葉っぱをムシャムシャ食べた。確かに、繊維があって食いづらい。シャキシャキしていて歯ごたえは良いが、繊維質だ。きちんと茹でないとダメだ。

「アルテア。確かに食いづらいが、別に苦くないぞ」

「え? そんなはずはありませんよ」

 アルテアは俺が千切った葉っぱを分けてやると、それを口に含んだ。

「ほ、本当だ。どうして苦くないんでしょう? 荒野に生えているマンドラゴラは、研究し尽くされた魔物なんです。どうしてこんなことが?」

 アルテアは驚いている。俺にもよく分からんが、多分、水魔法使いの水と、土壌の問題じゃないか? 塩害で死んだ土地だし、水も汚い。悪い条件が重なっただけだろ。

「よし。問題ないと分かったら、マンドラゴラを取りに行くぞ。誰か人を寄越してくれ」

「え……、えぇ分かりました」

 アルテアは腑に落ちない顔をしているが、俺の要請に応じてくれた。手の空いている子供たちを使って、枯れているマンドラゴラを数百匹掘り出した。

 土はいいのが無かったが、小麦を育てている土なら大丈夫ということで、それをもらってマンドラゴラを畑に植えに植えた。俺が水を与えると、干からびていた葉っぱがみずみずしさを取り戻し、仮死状態から復活した。

「よし。このまま育ててみよう」

 数日間、水魔石から出た聖水を与え、マンドラゴラを育ててみた。


★★★


 数日後。

 かなり大きく育ったマンドラゴラが、そこにはいた。

 スイカみたいに、丸々と育ってる。もちろん、根っこの頭にはたくさんの葉っぱが育っている。あたり一面、マンドラゴラ畑になっていて、村人たちも近づくのを怖がっている。

 俺は大丈夫だろうと高をくくって、マンドラゴラ畑に足をふみいれた。

 すると、マンドラゴラたちは俺に向かって根っこを伸ばして『水くれー水くれー』と言ってきた。声には出ていないが、直接脳内に響いた。

 女の子の声だった。

「アルテア。マンドラゴラに雌雄ってあるのか?」

「あります。ある時が近づくと、雌か雄に分かれます」

「ある時ってのは?」

「発情期の時ですね」

 植物に発情期なんてあるのかよ。

 俺はマンドラゴラに言われるまま、水をシャワーのように出してやった。するとマンドラゴラたちは根っこを伸ばして水を飲み始めた。ものすごく、不思議な生物だ。

「こんなことが起きるとは思いませんでしたよ。私の水魔法ではこんなことにならなかったのに、どうしてだろう? やっぱり本物の神の御使い様だからかな?」 

 アルテアが腕を組んで唸っていたが、俺にはどうでもいい。俺は彼らに命令して、葉っぱを分けてもらった。

 ものの数分で、俺の両手には抱えきれくない位の葉っぱが集まった。彼らは自分で自分の葉っぱを千切って、俺に分けてくれた。こんなにくれて大丈夫なのか聞くと『すぐ生えるー』と言っていた。大丈夫らしい。

「よし。アルテア。とりあえずこれがあれば、今すぐに餓死者は出ないだろう。葉っぱしかないけど、多少は腹にたまるはずだ」 

 難民200人を受け入れて食料が不足気味だったが、マンドラゴラの葉っぱがこんなにあれば、一ヶ月以上は持つだろう。その間に、大量の食料を調達しよう。今はこれが限界だな。

 マンドラゴラは俺の水を飲んで、不思議な踊りを踊っていたが、気にしないことにした。




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