69 / 85
第二章
67 昇降機
しおりを挟む
俺はアルテアに案内してもらいながら、砦の中を探索。まずはクーの所に向かった。こちらの戦力がどれだけあるのか知りたかった。いずれここは戦場になるからな。
「では、ここから昇降機を使って、最上階まで向かいましょう」
「え? いいのか? 昇降機は魔力不足なんじゃ?」
「今回は特別です。それに、たまには動かさないと錆びついてしまいますからね」
アルテアはそう言って、昇降機のある場所まで案内してくれた。
昇降機は砦の中央にあり、魔導モーターでウインチを巻き上げる感じの物だった。作りは雑で、安全装置などない。見た目は鉱山にある手動の昇降機で、停止スイッチのタイミングを間違えれば、天井に激突してお陀仏だ。しかも、昇降機を支えるウインチのワイヤーが細い。もしも切れたら、下まで真っ逆さまだ。上も下も地獄である。
「まじかよ。これがエレベーター? 軽く死ねるぞ」
「エレベーター? これは昇降機ですよ」
アルテアはエレベーターと聞いて不思議な顔をしていた。エレベーターは地球の言葉だからな。
「アルテア。この昇降機、中にスイッチが無いぞ。どうなってるんだ?」
「こちらの魔術師が魔力を送り込み、動かします。中から操作はできません。彼らはベテランですので、問題ありませんよ」
俺は昇降機のメンテをしていたと思われる、魔術師を紹介された。まっ白い髭を生やした、おじいちゃんだ。とても魔術師には見えない。引退して年金で暮らす、気の良いおじいちゃんにしか見えない。
そのおじいちゃんたちは、俺たちを見て、ニコニコ笑っている。孫でも見ているような感じだ。
「カリスさんと、マリクさんです。二人とも、ベテランの魔導技工士です」
「ワシがカリスだ」
「私がマリクです」
帽子を取って、禿げた頭を下げてきた。
「アルテア。魔導技工士って?」
「魔術を使って魔導機械を作る人たちです」
ほぉ。魔導機械ね。このエレベーターは魔導機械なのか? 魔石で動いているといってたしな。
俺はもう一度エレベーターを見る。薄い金属の板に、金網が張り巡らされた、鉄の箱だ。定員は四人程度の小さな昇降機になる。かなり錆びているし、不安しかない。
「これは本当に動くのか?」
「動きます。最上階には砦の防衛設備がありますので、お見せしますよ」
アルテアが俺の背中をグイグイ押して、鉄の棺桶(昇降機)に乗り込む。もしも落ちたら、俺は確実に死ぬ。
「ではお願いします、カリスさん、マリクさん」
「あいよー。アルテア様、手すりにつかまっといてなぁー。そこの坊主もなぁー」
昇降機の中に、錆びた手すりがあった。言われた通り、俺も掴む。
白髭をたくわえた、カリスさんとマリクさんは、何かのパネルスイッチを操作し、ガラス版に魔力を送りはじめた。尻からブーっと、「屁」を漏らしながら、魔力を送り込んでいる。顔を真っ赤にしていることから、彼らはものすごく必至だ。
もはや、この砦に安全基準は無い。
ブーっと屁をこく音を聞きながら、ウインチがゆっくりと巻き上げられ、昇降機が昇り始める。ガタガタと揺れて、すごく怖い。本当に大丈夫なんだろうな?
「アオ様。もしも途中で止まったら、壁を登らなければなりませんので、そこは覚悟しておいてください」
壁? 登る?
「……………え?」
アルテアがにっこりと俺に微笑んだが、俺は彼の言っている意味が理解できなかった。
「では、ここから昇降機を使って、最上階まで向かいましょう」
「え? いいのか? 昇降機は魔力不足なんじゃ?」
「今回は特別です。それに、たまには動かさないと錆びついてしまいますからね」
アルテアはそう言って、昇降機のある場所まで案内してくれた。
昇降機は砦の中央にあり、魔導モーターでウインチを巻き上げる感じの物だった。作りは雑で、安全装置などない。見た目は鉱山にある手動の昇降機で、停止スイッチのタイミングを間違えれば、天井に激突してお陀仏だ。しかも、昇降機を支えるウインチのワイヤーが細い。もしも切れたら、下まで真っ逆さまだ。上も下も地獄である。
「まじかよ。これがエレベーター? 軽く死ねるぞ」
「エレベーター? これは昇降機ですよ」
アルテアはエレベーターと聞いて不思議な顔をしていた。エレベーターは地球の言葉だからな。
「アルテア。この昇降機、中にスイッチが無いぞ。どうなってるんだ?」
「こちらの魔術師が魔力を送り込み、動かします。中から操作はできません。彼らはベテランですので、問題ありませんよ」
俺は昇降機のメンテをしていたと思われる、魔術師を紹介された。まっ白い髭を生やした、おじいちゃんだ。とても魔術師には見えない。引退して年金で暮らす、気の良いおじいちゃんにしか見えない。
そのおじいちゃんたちは、俺たちを見て、ニコニコ笑っている。孫でも見ているような感じだ。
「カリスさんと、マリクさんです。二人とも、ベテランの魔導技工士です」
「ワシがカリスだ」
「私がマリクです」
帽子を取って、禿げた頭を下げてきた。
「アルテア。魔導技工士って?」
「魔術を使って魔導機械を作る人たちです」
ほぉ。魔導機械ね。このエレベーターは魔導機械なのか? 魔石で動いているといってたしな。
俺はもう一度エレベーターを見る。薄い金属の板に、金網が張り巡らされた、鉄の箱だ。定員は四人程度の小さな昇降機になる。かなり錆びているし、不安しかない。
「これは本当に動くのか?」
「動きます。最上階には砦の防衛設備がありますので、お見せしますよ」
アルテアが俺の背中をグイグイ押して、鉄の棺桶(昇降機)に乗り込む。もしも落ちたら、俺は確実に死ぬ。
「ではお願いします、カリスさん、マリクさん」
「あいよー。アルテア様、手すりにつかまっといてなぁー。そこの坊主もなぁー」
昇降機の中に、錆びた手すりがあった。言われた通り、俺も掴む。
白髭をたくわえた、カリスさんとマリクさんは、何かのパネルスイッチを操作し、ガラス版に魔力を送りはじめた。尻からブーっと、「屁」を漏らしながら、魔力を送り込んでいる。顔を真っ赤にしていることから、彼らはものすごく必至だ。
もはや、この砦に安全基準は無い。
ブーっと屁をこく音を聞きながら、ウインチがゆっくりと巻き上げられ、昇降機が昇り始める。ガタガタと揺れて、すごく怖い。本当に大丈夫なんだろうな?
「アオ様。もしも途中で止まったら、壁を登らなければなりませんので、そこは覚悟しておいてください」
壁? 登る?
「……………え?」
アルテアがにっこりと俺に微笑んだが、俺は彼の言っている意味が理解できなかった。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる