この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第二章

67 昇降機

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 俺はアルテアに案内してもらいながら、砦の中を探索。まずはクーの所に向かった。こちらの戦力がどれだけあるのか知りたかった。いずれここは戦場になるからな。

「では、ここから昇降機を使って、最上階まで向かいましょう」

「え? いいのか? 昇降機は魔力不足なんじゃ?」

「今回は特別です。それに、たまには動かさないと錆びついてしまいますからね」

 アルテアはそう言って、昇降機のある場所まで案内してくれた。

 昇降機は砦の中央にあり、魔導モーターでウインチを巻き上げる感じの物だった。作りは雑で、安全装置などない。見た目は鉱山にある手動の昇降機で、停止スイッチのタイミングを間違えれば、天井に激突してお陀仏だ。しかも、昇降機を支えるウインチのワイヤーが細い。もしも切れたら、下まで真っ逆さまだ。上も下も地獄である。

「まじかよ。これがエレベーター? 軽く死ねるぞ」

「エレベーター? これは昇降機ですよ」

 アルテアはエレベーターと聞いて不思議な顔をしていた。エレベーターは地球の言葉だからな。

「アルテア。この昇降機、中にスイッチが無いぞ。どうなってるんだ?」

「こちらの魔術師が魔力を送り込み、動かします。中から操作はできません。彼らはベテランですので、問題ありませんよ」

 俺は昇降機のメンテをしていたと思われる、魔術師を紹介された。まっ白い髭を生やした、おじいちゃんだ。とても魔術師には見えない。引退して年金で暮らす、気の良いおじいちゃんにしか見えない。

 そのおじいちゃんたちは、俺たちを見て、ニコニコ笑っている。孫でも見ているような感じだ。

「カリスさんと、マリクさんです。二人とも、ベテランの魔導技工士です」 

「ワシがカリスだ」

「私がマリクです」

 帽子を取って、禿げた頭を下げてきた。

「アルテア。魔導技工士って?」

「魔術を使って魔導機械を作る人たちです」

 ほぉ。魔導機械ね。このエレベーターは魔導機械なのか? 魔石で動いているといってたしな。

 俺はもう一度エレベーターを見る。薄い金属の板に、金網が張り巡らされた、鉄の箱だ。定員は四人程度の小さな昇降機になる。かなり錆びているし、不安しかない。

「これは本当に動くのか?」

「動きます。最上階には砦の防衛設備がありますので、お見せしますよ」

 アルテアが俺の背中をグイグイ押して、鉄の棺桶(昇降機)に乗り込む。もしも落ちたら、俺は確実に死ぬ。

「ではお願いします、カリスさん、マリクさん」

「あいよー。アルテア様、手すりにつかまっといてなぁー。そこの坊主もなぁー」

 昇降機の中に、錆びた手すりがあった。言われた通り、俺も掴む。

 白髭をたくわえた、カリスさんとマリクさんは、何かのパネルスイッチを操作し、ガラス版に魔力を送りはじめた。尻からブーっと、「屁」を漏らしながら、魔力を送り込んでいる。顔を真っ赤にしていることから、彼らはものすごく必至だ。

 もはや、この砦に安全基準は無い。

 ブーっと屁をこく音を聞きながら、ウインチがゆっくりと巻き上げられ、昇降機が昇り始める。ガタガタと揺れて、すごく怖い。本当に大丈夫なんだろうな?

「アオ様。もしも途中で止まったら、壁を登らなければなりませんので、そこは覚悟しておいてください」

 壁? 登る?

「……………え?」

 アルテアがにっこりと俺に微笑んだが、俺は彼の言っている意味が理解できなかった。





 
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