この異世界には水が少ない ~砂漠化した世界で成り上がりサバイバル~

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第二章

68 味方の戦力と敵の戦力

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 なんとか俺は砦の最上階に来た。昇降機の速度は意外と速く、三分もかからず砦の頂上に辿り着いた。俺はアルテアの指示に従い、外に出る。

 砦の最上階には大きな岩がゴロゴロとあって、岩の下にはベルトコンベアみたいなものが設置してあった。それに、変な筒? 砲塔のようなものがたくさんある。近くで見ると壊れているのか、それは使われていなさそうだ。遺跡のような感じになっている。

「いや、デカい岩とかもスゲェけど、ここはめっちゃ高いな」

 高度は数百メートル以上ある崖だ。その頂上に、俺たちは立っている。空は快晴だが、風が、ものすごく強く吹き付けてくる。

 一応、崖のふちに、申し訳ない程度の、木の柵が取り付けられてある。木の柵を乗り越えれば、下まで真っ逆さま。頭が潰れて、綺麗な血の花を咲かせるに違いない。

「まるでグランドキャニオンみたいだな」

「グランドキャニオン?」

 アルテアがまたしても俺に聞いてくるが、俺は適当にごまかす。グランドキャニオンは、アメリカ合衆国アリゾナ州にある峡谷だ。ものすごい巨大な谷で、数百年前の地層が見れる場所だ。

 今俺がいる異世界の巨大渓谷は、グランドキャニオンに似ていた。渓谷の下を流れる川は干上がっていたが、地球とかなり酷似した場所だ。

「アオ様。ここにある大きな岩を下に落として、敵を倒すんです。ほら、岩が落ちるように設置してる兵士がいるでしょう?」

 確かに、兵士と思われる男たちが、巨大岩を削って何かをしている。俺にはよく分からないが、下に岩が落ちて、破裂するように工作しているみたいだ。

 男たちはアルテアと俺を見て、頭を下げてくる。アルテアに下げるのは良いが、俺には止めてほしい。

 それから俺はアルテアに教えてもらいつつ、砦の設備や戦力を聞いていく。砦の頂上から大岩を落として敵兵を倒したり、砦の中に隠れて、敵兵を狙撃したりと、いろいろな戦法を教えてくれた。実は、砦は最終防衛ラインであり、戦力は国内に存在する無数の反乱軍だという。

「へぇ。そうなのか」

「そうなのです」

 えっへんと、胸を張るアルテア。ドヤッとしている。これが女だったら、飛びつくほどの可愛さだ。

 アルテアの説明を聞きながら歩いていると、知っている奴がいた。

「あれ? クーじゃないか? クーがいるぞ」

 ようやくクーを見つけた。最上階で、砦の警備を強化していた。

 彼女は何人かの兵士に囲まれており、兵士たちに講義をしている。戦い方や戦術を教えているようだ。オーガ流の戦い方だろうが、人間相手でも十分通用する。たった数日で、クーは隊長のような感じになっていた。

「おーい。クー。今大丈夫かぁ?」

「ん? アオか。どうしたこんなところに」

 クーが俺に気付いて、近寄ってきた。クーの周りにいる兵士は、よく見ると女が多かった。俺を見て顔を赤らめたり、ひそひそ話している。クーは俺のことを兵士たちに何か喋っているのか?

「上手くやってるみたいだな。現状、戦力はどんな感じかと思って、見に来た」

「なんだそういうことか。現状は、武器弾薬、人員、砦の設備。すべてにおいて不足している。天然の要塞と言うことで防御力は高いが、攻め込まれれば、結局は負けるだろう。この国の各所には反乱軍の基地があるようだが、それらを含めても、勝ち目は薄い」

 戦いに馴れたクーでも、やはりそういう結論になるか。アルテアもその言葉を聞いて、肩を落とす。

 この状況で総力戦は無理か。

「アルテア。この砦の位置は、敵にばれているのか?」

「下っ端の兵士は分かりませんが、王国の上層部にはバレているでしょう」

「え? ばれているのか? じゃぁ、どうして総攻撃してこない?」

「する価値もないからでしょうね。いずれは私たちが負けると思っています。現に、私たちの息がかかった村や町は、神殿騎士に滅ぼされています。どんどん物資の調達が難しくなってきている。今や砦は、行き場のない難民だらけです」

 ふうむ。そうか。何年もかけて、俺たちを弱らせる作戦か。ねちっこい奴らだな。

「実は、降伏勧告は、なんども出ているんです。私が国に帰れば、この戦いは終結するのです。ですが、この砦にいる貴族や民、兵士は、殺されるか、奴隷にされてしまいます。それだけは避けたいのです」

 そうなのか。これは、完全に負け戦だな。泥船以前の問題だ。こうなったら、やることは一つだな。

「クー。やっぱり、暗殺しかないか?」

「そうだな。アルテア様以外の貴族や王族を、皆殺しにするしかない」

「なっ!? 暗殺ですって!?」

 アルテアが暗殺と聞いて驚く。しかも、権力を持った王族の皆殺しだ。

 血なまぐさい話だが、ここには勇者などいない。汚れた仕事をするしか勝ち目はないぞ。

「な、何を言ってるんですか! アオ様は全然分かっていない! 暗殺は無理です!!」

 アルテアが珍しく大声を出した。え? どういうこと? 暗殺しかないと思ったけど?

「国王のそばには、ルドミリア教会の枢機卿に、四魔将軍がいます! 彼らがいる限り、暗殺など不可能です! それに、神殿騎士の団長、ハインツも強敵です! 忍び込んで暗殺など、死ににいくようなものです!」

 なんだか、アルテアからとんでもない言葉が出て来たな。枢機卿に四魔将軍? 神殿騎士の団長ハインツだと? 
「え? アルテアさん? その、四魔将軍? そいつらはどのくらい強いんですかね?」

 俺は少し及び腰になり、アルテアに将軍たちの強さを聞いてみる。

「突然敬語になってどうしたんです? 四魔将軍の強さですか?」

「そ、そうだ。四魔将軍ってのはなんだ?」

「ふむ。私も興味があるな。アルテア様、教えてください」

 クーも話に乗っかってきた。敵の戦力はどのくらいだ?

「まさか、アオ様が将軍たちを知らないとは思いませんでしたよ。四魔将軍というのは、一人一人が一騎当千の強者です。火、風、土、水を操る、大将軍たちのことです。今は水の魔将軍である姉さまが捕まっていますので、火、風、土の将軍たちがいます」

「ほう。一つの属性を極めた奴らか。それはヤバいね」

 そんなのがいたなんて、聞いてない。リザ、どうしてそんな大事なこと、俺に教えてくれなかったの?

「四魔将軍も強いですが、ルドミリア教会の枢機卿が一番の強敵です。あの女は光と闇の属性を自在に扱え、その上、水魔法使いです。まず戦って勝てる相手ではありません」

 化け物かよ。敵サイドに、そんな奴がいんのか? 味方サイドはボロボロなのに、無理ゲーすぎるだろ。

 アルテアに、何とかしてやると言った数日前の俺を殴りたい。

「じゃぁ、アルテアは結局どうする気だったんだ? 何年もこの砦に籠城して、勝てるのか?」

「もちろん、作戦は考えてあります。ですが、勝率が低いのは我々も悟っていました。民だけでも、国外へ亡命させることを考えていたのです。ですが、世界的な水不足なので、亡命先も見つからず、今に至っています。それと、アオ様をここに連れて来たリザですが、我々の現状を危惧し、国を捨ててオアシスを探しに出たのです」

 まじか。リザがオアシスに固執するのは、そう言う理由があったのかよ。

「アルテア様。であれば、その作戦と言うのをお聞かせ願いたい。兵士たちに聞いても、詳しいことは分かっていないようですので」

 クーがアルテアに聞いてきた。

「分かりました。ここでは話せません。一度、会議室の方に移動しましょう」

 そう言って、アルテアはまた昇降機に乗り込んだ。今度はクーも一緒だ。クーは重いけど、大丈夫だろうな? 砦の頂上から落下したら、さすがに死ぬぞ。グランドキャニオンの崖から飛び降りるのと同じ高さだからな。

「では、アオ様、クーさん。ご案内します。昇降機に乗ってください」

「わ、分かった……」

 クーは初めて昇降機に乗るのでワクワクしていたが、俺は恐怖しかなかった。
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