俺は自販機使いの魔王

無名

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ニホンジン魔王爆誕

魔王様、自販機で買いまくる

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 なぜこんなことになったのか理解できない。

 寝て起きたらこれは夢でした。誰かそう言ってほしいが、寝て起きても、俺は魔王のままだ。
 
 俺は以前魔王が使っていたと言われる寝室に案内された。案の定、戦闘があったせいでボロボロだが、ベッドは綺麗にメイクされていた。多分、生き残っているメイドがやってくれたんだろう。

 出された食事も腐りかけたパンに、味のしないスープだった。これでは、自販機の食べ物を魔力で購入した方が何万倍もマシだ。

 俺は生き残った民に、城に出現した自販機には触るなと言っておいた。危険だからと。

 リシャールが自販機の警備兵を選抜し、子供が自販機に触らないように監視することになった。

 エルナも疲れていたし、リシャールもいろいろと疲れていたようだ。人間たちの軍は今、動きはないとのことだ。

 この城は捨てられた古い廃城で、大昔に戦争があった場所らしい。今は森の中にひっそりと隠れるように建っている。人間たちもこの城のことは忘れており、俺たちを探しきれていないようだ。

 とにかく俺は、エルナと一緒にベッドで眠った。ススだらけで汚い状態だったので、エルナはきちんと体を拭かせてからベッドに入れた。

 ぐっすり眠って朝起きると、やはり俺の体は魔王のまま。日本に戻ることはなかった。

 ひび割れた鏡で自分の顔を確認すると、どこのギャル男だと言いたくなる顔をしていた。浅黒い肌で、髪は金髪でロング。側頭部からにょっきりと一本ずつ角がなければ、渋谷にでもいるギャル男である。

「魔王様、チャライ顔してんなぁ~。イケメンなんだろうけど、女遊びしてそうな顔だな」

 俺には縁のないほどのイケメンだ。これは相当女に苦労しただろうな。

 と言っても、生き残っているのが孫のエルナだけだ。彼女は大切に育てなければならない。

「はぁ。今日はどうすっかな。まずは食料と、けが人の治療だな。自販機に何かないかな」

 俺はベッドで寝ているエルナを起こさないように、部屋から出た。

 やることも分かっている。城中に現れた自販機を一台一台確認するところから始めた。なにか使えるものはないかと。

 崩れかけた城の通路を歩いていると、さっそく自販機を見つけた。昔からここにありましたよって感じで、自販機が通路わきに設置されている。城の中に、異常に馴染んでいる。

 俺は自販機の商品サンプルを見てみる。

「スポーツドリンクと、お菓子か。お? 隣はカップラーメンの自販機か?」

 お湯が出てくるタイプだ。俺は日本が恋しくなってしまい、カップラーメンを購入する。昨日と同じくらい魔力が吸われた。

 取り出し口に落ちてきたカップラーメンはシーフード味。

 蓋を開けて、ボタンを押して、お湯を投入。3分待って、備え付けの割り箸を使い、ラーメンを食べる。

 うまい。

 やっぱり、ジャンクフードは美味い。体に悪いとか関係ない。塩分の取りすぎとかは、今は関係ないのだ。味が良ければすべてよし。

 俺はズズーっとラーメンをすすりながら、城の中を徘徊する。

 階段の踊り場や、倉庫の中。至る所に自販機がある。どうやって動いているのか分からないが、電気が通っていない。もしかしたらこの自販機、俺の魔力で動いているのかもしれん。

 さまざまな自販機を見て回って、これだと思った自販機がある。

 回復薬を売っている自販機と、銃火器を売っている自販機だ。

「リボルバーマグナム44口径。弾は別売り。となりにはAKライフルもあるな」

 信じられないが、自販機で武器が売っている。しかも日本にある武器が。この世界には銃火器はあるのだろうか? 魔法が支配している世界だから、火器類は発展しない可能性が高い。

 もし発展しているなら、魔法を使った武器類だろう。銃火器は有っても、火縄銃程度ではないか? 

 射程距離が魔法よりも長く、連射できるライフル。威力も一発で人間を殺せる。下手な鎧など、簡単に貫通する威力を持っている。

 魔力コストが低いのなら、大量に購入するべきだ。

「よし。まずはリボルバーマグナムを買うぞ」

 俺は購入ボタンを押した。

 すると、今までより比べ物にならない量の魔力が吸われた。

 おでん缶の30倍以上だろうか? よく見ると、購入ボタンの下に、なにやら数字らしきものが書いてある。見てみると、1000という数字があった。俺はおでん缶の数字と見比べてみる。

 おでん缶は、30という数字だった。 

 リシャールよ。お前はもともと魔力が少ない体質ではないのか? おでん缶で30だぞ? この先、自販機はおでん缶ぐらいしか買えんぞ。

 俺は通常よりも大きい取り出し口から、リボルバーを取る。箱入りだ。もちろん、弾丸も一緒に購入している。30発ほど買っている。

 俺は初めてリボルバーマグナムを持った。どこのメーカーかは分からんが、かなり質は良い。弾を込めてセイフティーレバー? そんなようなものを下して、トリガーを引いた。

 撃鉄が自動で叩き込まれ、弾丸飛び出た。

 火薬の大きな破裂音とともに、壁に穴が開いた。かなり、巨大な穴が。

 人の頭ほどの穴が、レンガの壁に空いたのである。

 おいおい。なんだこの威力は。普通のリボルバーマグナムじゃねぇぞ。レンガに大穴開けるって、大口径のライフルかよ。なんで小さなリボルバーでこんな威力が? しかも反動は全くなかったぞ。

 俺はリボルバーを観察すると、なんだか分からない、魔法の文字が描かれている。グリップの部分に、細かく刻印されている。これはもしかして、魔法銃? 

 俺はうーむと唸っていると、リシャールが走ってきた。

「魔王様!! 今の音はなんですか!!!」

 リバルバーの炸裂音に、血相を変えて走ってきたのだ。

「リシャールか。おはよう」

「おはようではありません! 寝室に言ったらいらっしゃらないし、いきなり大きな音は鳴るしで! どういうことですか!」

 俺は騒ぐリシャールを落ち着かせ、自販機で武器を買ったことを説明した。その後、兵士の訓練施設があるというので、リシャールに案内してもらう。

 そこで弓矢の的を設置してもらい、俺はそこにリボルバーの弾丸を発射する。

 弓矢の的を粉々に怖し、さらにその奥にある壁も破壊した。その威力見ていたリシャールは、茫然と立ち尽くす。

「魔王様。その大砲はなんですか?」

「大砲ではない。銃だ」

「銃? マスケット銃ですか?」

「マスケット銃がなんだか知らんが、これは弾を6発連射できる銃だ。携帯性に優れた武器だな」

 俺はリシャールにマグナムを渡す。

「か、かるい。こんなに軽い銃は初めて見た」

 リシャールはなんだか感動している。

「ああ、それとリシャール。ついでにポーションも買っておいた。傷ついた民にポーションを分けてくれ」

「な!! ポーションですと!!」

 リシャールはことのほか驚く。そんなにポーションが珍しかったか?

「今は薬剤師が不足しているのです。しかも原料もありません。人間が全部押収したので。これはすごいですよ! ポーションも手に入るなんて!! 早速民に渡してきます!!」

「ああちょっとまて。ポーションは一本だけではない。100本ほど買っておいた。倉庫に置いてあるから、持っていきなさい」

 リシャールはまたも茫然と立ち尽くす。この子はフリーズすることがかなり多い。

「はは!! 必ずや役立てて見せます!!」

 リシャールは俺に敬礼をして走り去っていった。

 その後、俺から提供されたポーションで、民は全快した。どうやらただのポーションではなく、ハイポーションだったらしい。すぐにみんな傷が癒えた。病気の人も回復に向かっている。

  

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