死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

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別荘編

48-婚約指輪

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…あたまがいたい…。


ズキズキとこめかみ辺りが痛む。

何とか身体を起こそうとする。


「ッ゛~~…!」


全身がギシギシと軋み、痛む。腰が絶望的に重い。
声もどうやら掠れすぎて出ないらしい。


…満身創痍だ。


薬を飲まされたのが2日目の夜、窓を見るに今夜だから…3日目…?まさか昼まで抱かれてたのか?

外の月明かりを頼りに、僕の自身の身体を確認する。
前のように服も着ておらず全裸で、僕を守るものはシーツ1枚だけだった。

至る所に噛み跡と鬱血痕があり、それが身体が痛む一因になっていた。


…アーノルドを怒らせちゃったな…。
あれからどれだけ抱かれたのだろう。

アーノルドはいない。彼も薬を飲んだはずだ。別のところで寝ているのかな。


薬の副作用か、まだ頭が少しぼんやりする。


シャワー浴びたい。前は浴びる前にアーノルドに捕まって、1人で入れなかったし。

今は夜みたいだから、そんなに人もいないよね。


痛む身体で何とか立ち上がり、シーツで身体を隠し、寝室を出る。


壁にかけてあった蝋燭を持ち、1階に降りる。


ーーー



シャーーーー…


お風呂場に入り、シャワーを浴びる。

少し冷ためのシャワーを浴び、少し頭がすっきりと冷静になってくる。


浴室に付いている鏡を見ると目視で見た時よりも全体が見え、なんとも言えない気持ちになる。

何処まで噛まれているんだ僕は。太ももの付け根まで噛まれている。

意識があったら絶対痛かっただろうな。

左手で首に残る締められた跡を触る。痣になっていて触ると少しヒリヒリする。


…ころして…ほしかったな…。



ふと金色の何かが僕の目に入る。


…あれ…?


父の呪いの腕輪が嵌っている左手首。
それはいつも通り…だが、

この左手の薬指の指輪はなんだ…?


金に控えめな翡翠が付いてる指輪が、
僕の薬指に嵌ってる。


…この翡翠…アーノルドみたい…。


奥がキラキラ光に反射して綺麗だな…。


僕の指にピッタリと嵌って……あ……?



……あれ、これ父上のと同じじゃないか?



嫌な予感がして指輪を外そうとするが、抜けない。

髪に付けるためのオイルを出し、滑らせて外そうとするも…抜けない。


間違いない。この頑なに外れる気配のないこれは…呪いだ。


一体どんな呪いをかけられたというのか。



…僕が一体何をやったって言うんだ。



シャワーを浴びながら僕は項垂れた。




ーーー






別荘生活今日で4日目。

やった!これでアーノルドから開放される!

僕はもうウキウキだった。

メイドさん達が用意してくれた朝食を食べる。ソーセージにアスパラみたいな野菜、それにポーチドエッグが添えてあるものだ。

何だかいつもより美味しい気がする。


向かいに座るアーノルドがそんな僕を見る。あれから特に以前と変わった様子もなく、何事もなかったかのように朝になってから僕を起こしに来た。

…逆に怖い。

この態度は指輪とも関係があるのか…?


「なんだか嬉しそうだね。ルーク」


「…いえ、そんなことは…」


「僕はルークと離れるなんて、寂しくて耐えられないよ」


ポーカーフェイスで歯の浮いたようなことを言うな。そんなキャラじゃないだろ。僕のこと散々弄んで笑ってたくせに。鳥肌が立つ。


「僕もですよ。アーノルド様」


「……あはっ、そう…わかった」


よく見るとアーノルドの左薬指にも金に青いサファイアのような宝石が付いた僕のものと同じ指輪が嵌められていた。


アーノルドはぎらりと怪しい瞳を据え、うっそりと微笑む。


「これはね、僕たちの婚約指輪だよ。

一昨日と昨日は手酷くしてしまったから……

そのお詫びと言ってはなんだけどね」


詫び指輪ってこと…?いや、いらない。
なんの詫びにもなってない。
物騒だから外してもらえると助かる。
これ以上何か呪いをかけられていると思うと耐えられない。もう呪いはたくさんだ。


「ふふっ…あははっ…」


何故かアーノルドが笑い出す。
いつものポーカーフェイスではなく、素で笑っている。

珍しい姿に僕は食べることも忘れて呆けてしまう。


「ごめんね、これは外せないんだ。

だって外す必要が無いからね」


言葉がちぐはぐだ。外す必要が無いから外せないって何…。

何の呪いをかけたのか聞きたいけど、アーノルドの沸点がまだわかりきってない以上、下手に聞けない。


「まあ…ルークも寂しくなったら、それを見て僕を思い出してくれるといいな」


僕は忘れたいよ。アーノルド。




そうしてこの怒涛の4日間は幕を閉じ、
アーノルドに連れられ、僕はフォンルージュ邸に帰ったのだった。
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