死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

文字の大きさ
55 / 79
フォンルージュ家編

??-夢2

しおりを挟む



保健室の外から担任の先生とお母さんの話し声が聞こえる。


「**くん、朝から熱があったみたいで…私たちも気づくの遅くなってしまってすみません」


「いえいえ、こちらこそうちの息子が迷惑かけてすみませんね」


「迷惑なんてそんな。ではあとはお願いしますね」


ガラララッ


お母さんだ。お母さんが来てくれた。嬉しい。うれしい。
…ぁ…でも怒ってる。目が怖い、顔が怖い。ぼく、またやったんだ。ごめんなさい。


「はやくこいや」


腕を引っ張らないで、いたいよ。ちゃんと歩くから。怒らないで。


「何フラフラしてんのよ。いいからちゃっちゃと車乗れや」


「…ん…」


バンッ

ガチャ、ヴゥゥゥン


「…はぁ…あんたさ、お母さんが仕事で忙しいの知ってるよね?私の代わりいないのよ。穴あけれないの、簡単に休めないの、そうやって教えたじゃないッ」


「…ご、めんなさい」


「謝って許されるなら警察要らないのよ。
今ただでさえ繁忙期で忙しいのに…ッ!

なんなの?あんた。

楽しい?私に迷惑ばかりかけて楽しい?嫌がらせなの?ねぇ」


「ちが、ちがう。ごめんなさい」


「何が違うのよ。嘘つくなや。

あんたさ、1人であんたみたいなの育てるのがどれだけ大変かわかる?私の苦しみがわかる?あんたのクソ父親おやじは養育費も払わないし、他の奴らと違って親にも頼れないであんたを1人で養ってやってんの。

あんた知ってるでしょ。私がどれだけ昔あの親から酷い扱い受けてきたか。話したわよね?」


「…ごめ…なさ」


「熱くらい私は我慢したわよ。なんであんたは出来ないの?なんで?わざとやってんの?他人の前で熱に気付けない馬鹿な親って、恥じ掻かせてよかったわね。

私を悪者にして、良いわよね。あんたは子供だから。責められんのは私なの。私」


「…ごめ…んね…」


あたまぼんやりしてさっきよりふわふわする。かなしい感情だけわかる。
めいわくかけてごめんなさい。がまんできなくてごめんなさい。


はぁぁぁぁぁ………


お母さんがタバコの端を齧りながら、大きなため息を吐く。



「私に迷惑ばかりかけて…こんなんだったら、あんたなんか産まなきゃ良かった」



ぇっ……はっ………ぁ…………


包丁でさされたみたい。いたい。いたい。むねに穴が空いたみたい。いたい。いたい。いたい。

穴空いてないのに、おかしい。
手でふさいでもいたい。いたいよ。


「フゥーー……なに辛いフリしてんのよ。病院なんて行かないから、明日にはどうせ治ってんのよ。こんなの。

先生には病院に行って何ともなかったってちゃんと言っとけよ。


……返事ッ!」



「っ…はぃ…」


泣いちゃダメ。おこられる。おこられる。だめ。だめ。家ついたら、つくまでだめ。
がまんして。がまんして。がまんしてっ!


ガチャン、バンッ


「…ついたわ。私は会社戻るから。その程度なら1人で戻れるでしょ」


「ん…ごめ…ね、おかぁさ…」


「謝っても私の時間は戻ってこねぇの。
これ以上イライラさせないで」


「…はぃ…」


「二度とやるなよ」


「はぃ…」


ガチャン、ヴゥゥゥゥゥゥゥン…


おかあさ…お母さん。


「ぅっ…ひっく…ぅぁぁ…ッ…ぁぁぁ…」


泣いちゃダメなのに。がまんできない。
ぼく、のぞまれてなかった。ぼくうまれたらだめだった。

ぼくいらなかったんだ。ぼくのせいでくるしいんだね。おかあさん。

ごめんね。きてくれたのよろこんじゃって、ごめんね。

ごめんね。ぼくがうまれちゃってごめんね。


ごめんね。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

ヤバい奴に好かれてます。

たいら
BL
主人公の野坂はある日、上司である久保田に呼び出された。その日から久保田による偏狭的な愛を一身に受ける日々が始まった。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...