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フォンルージュ家編
??-夢2
しおりを挟む保健室の外から担任の先生とお母さんの話し声が聞こえる。
「**くん、朝から熱があったみたいで…私たちも気づくの遅くなってしまってすみません」
「いえいえ、こちらこそうちの息子が迷惑かけてすみませんね」
「迷惑なんてそんな。ではあとはお願いしますね」
ガラララッ
お母さんだ。お母さんが来てくれた。嬉しい。うれしい。
…ぁ…でも怒ってる。目が怖い、顔が怖い。ぼく、またやったんだ。ごめんなさい。
「はやくこいや」
腕を引っ張らないで、いたいよ。ちゃんと歩くから。怒らないで。
「何フラフラしてんのよ。いいからちゃっちゃと車乗れや」
「…ん…」
バンッ
ガチャ、ヴゥゥゥン
「…はぁ…あんたさ、お母さんが仕事で忙しいの知ってるよね?私の代わりいないのよ。穴あけれないの、簡単に休めないの、そうやって教えたじゃないッ」
「…ご、めんなさい」
「謝って許されるなら警察要らないのよ。
今ただでさえ繁忙期で忙しいのに…ッ!
なんなの?あんた。
楽しい?私に迷惑ばかりかけて楽しい?嫌がらせなの?ねぇ」
「ちが、ちがう。ごめんなさい」
「何が違うのよ。嘘つくなや。
あんたさ、1人であんたみたいなの育てるのがどれだけ大変かわかる?私の苦しみがわかる?あんたのクソ父親は養育費も払わないし、他の奴らと違って親にも頼れないであんたを1人で養ってやってんの。
あんた知ってるでしょ。私がどれだけ昔あの親から酷い扱い受けてきたか。話したわよね?」
「…ごめ…なさ」
「熱くらい私は我慢したわよ。なんであんたは出来ないの?なんで?わざとやってんの?他人の前で熱に気付けない馬鹿な親って、恥じ掻かせてよかったわね。
私を悪者にして、良いわよね。あんたは子供だから。責められんのは私なの。私」
「…ごめ…んね…」
あたまぼんやりしてさっきよりふわふわする。かなしい感情だけわかる。
めいわくかけてごめんなさい。がまんできなくてごめんなさい。
はぁぁぁぁぁ………
お母さんがタバコの端を齧りながら、大きなため息を吐く。
「私に迷惑ばかりかけて…こんなんだったら、あんたなんか産まなきゃ良かった」
ぇっ……はっ………ぁ…………
包丁でさされたみたい。いたい。いたい。むねに穴が空いたみたい。いたい。いたい。いたい。
穴空いてないのに、おかしい。
手でふさいでもいたい。いたいよ。
「フゥーー……なに辛いフリしてんのよ。病院なんて行かないから、明日にはどうせ治ってんのよ。こんなの。
先生には病院に行って何ともなかったってちゃんと言っとけよ。
……返事ッ!」
「っ…はぃ…」
泣いちゃダメ。おこられる。おこられる。だめ。だめ。家ついたら、つくまでだめ。
がまんして。がまんして。がまんしてっ!
ガチャン、バンッ
「…ついたわ。私は会社戻るから。その程度なら1人で戻れるでしょ」
「ん…ごめ…ね、おかぁさ…」
「謝っても私の時間は戻ってこねぇの。
これ以上イライラさせないで」
「…はぃ…」
「二度とやるなよ」
「はぃ…」
ガチャン、ヴゥゥゥゥゥゥゥン…
おかあさ…お母さん。
「ぅっ…ひっく…ぅぁぁ…ッ…ぁぁぁ…」
泣いちゃダメなのに。がまんできない。
ぼく、のぞまれてなかった。ぼくうまれたらだめだった。
ぼくいらなかったんだ。ぼくのせいでくるしいんだね。おかあさん。
ごめんね。きてくれたのよろこんじゃって、ごめんね。
ごめんね。ぼくがうまれちゃってごめんね。
ごめんね。
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