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フォンルージュ家編
54-化物
しおりを挟む…どれくらい経ったんだ?おしり痛い。
客室に閉じこもって泣き疲れて寝てしまったらしい僕は、三角座りのまま隅っこに座っていた。
壁に手をついて立ち上がるも、ずっと座っていたからか、身体が痛くて上手く立ち上がれない。泣き過ぎたからか頭が重く、フラフラする。
…あれ…身体も熱い気がする。
ああ、魔力…使いすぎたんだ。本で読んだ。その身体にそぐわない魔力を暴走によって解放すると、身体に負担が返ってくるって。
熱って自覚したら尚のこと身体が重たくなった気がする。
久々だな。熱なんて。ルークの体になってから初めてじゃないかな。
なんて他人事みたいに考えて、壁を使って立とうとするが膝に思ったように力が入らずカクカクする。
…ぁ、これ、あれだ。例えるならただの風邪の時の熱じゃない。
どっちかと言えばウイルスにやられた時の熱だ。
魔力消費の代償ってウイルスかよ…。
ギリギリで壁を伝い、何とかベットまでたどり着く。
ぼふんっ
そのまま僕の部屋のベットよりは小さい、客用ベット(ダブルサイズ)に倒れ込む。
朦朧とした頭で悶々と自身を省みる。
…ぼく、さいていなくそやろうだ。
ルークになる前からそうだったけど、他人にあんなことを強制するなんて、やっぱり独りでいるべきだ。
ラルクのあんな顔初めて見た。
人にあんな顔をさせて、ぼくはそれでも自分を優先した。本当に化物みたい。
いや、僕は以前に拗らせて死んだ時点で、もう化物になってたんだ。
ごめんね、ラルク。ごめんなさい。
ほんとにごめんなさい。ごめんなさい…
視界が暗くなって意識が薄れていく。
そのまま気絶するように目を瞑った。
ーーー
「きゃぁぁぁぁあッ!!!」
女性の悲鳴で目を覚ます。
どうやら部屋を掃除しに来たメイドが、鍵の開かない客室を不審に思い、マスターキーで解錠し、恐る恐る覗いてみれば乱れたシャツ1枚でベットにぶっ倒れている僕を見つけ、悲鳴をあげてしまったらしい。
そんな、失礼な…。幽霊じゃないんだから。
悲鳴を聞きつけた執事長が爆速で駆けつけてきて、僕に説教。
自分の部屋があるのに客室で、しかもそんな格好で何してんだと。当たり前か。
それからあれよあれよと世話を焼かれ、いつもの僕の格好に着替えさせられ、いつも通りになった。
熱も昨日のウイルスにかかったんじゃないかと思うようなだるさが嘘だったかのように微塵も残っていない。
睡眠によって魔力が回復したからだろうか?魔力不足恐ろしい。
「朝食のお時間です。先に奥様がお待ちになっておられます。お早めにお願いします」
メイドのマリアが無表情で僕に告げる。
『私に逆らってまともに生きていけると思わないことねッッッ!!!』
昨日言われたことを思い出す。
……行きたくない。ああいう人間は忘れない。ずっと引き摺る。
自分っていうものが下に見られるのが耐えれないから、受け入れる許容がないから、
だから1度刃向かった奴は徹底的に潰しにかかってくる。
僕はよく知ってるよ、母上。
食卓がある部屋の扉の前に立つ。
メイドが扉を開けようとドアノブに手をかける。
…また会わなきゃ行けない。
体が緊張して強ばり、握る掌には手汗が出てきていた。
ギィィ…
開いた先には昨日とは違う真っ赤な派手なドレスに身を包んだ悪魔が食卓に座って僕を睨みつけていた。
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