死にたがり(愛されたがり)の悪役令息

たまも。

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学園入学編

73‐脅し

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昼休みを知らせる鐘の音が鳴る。

鐘の音を聞いた生徒たちはガヤガヤと音を立てて食堂へ行くもの、昼寝をするもの、友人と喋る人、各自それぞれ自由行動をとっている。


お昼だ。どんな料理が出るのだろう。何気に楽しみだ。

席を立って教室の入口の縁を踏んで外に出た瞬間、真横から視線を感じた。


ガシッ


横からでてきた手に手首を力強く掴まれる。突然の事で喉がヒュっと詰まる。

僕の手を掴む人物を見る。

先程不審な挨拶をしてきたガインだった。


「一緒にお食事でもどうです?フォンルージュ様♡」


口ではこちらの同意を得ようとしているが、僕の手首を掴む力はキリキリと強まっている。


こいつ…!


「…俺は君と食べたくない。手を離してくれる?」


「え~~やだ」


手首がミシミシと悲鳴をあげる。


聞いたくせに拒否権は無いのか。

貧弱な僕じゃ振り解けない。
力強すぎだろ。こいつは一体何をしたいんだ。僕に何のようなんだ。

魔法でも使えれば逃げれるだろうけど、こんな人が沢山いるところで目立ちたくもない。

……ついて行くしかないのか。


「…魔法使えばいいじゃん」


「…え?」


「使えるんだろう?便利な魔法をさァ」



…は?




「おい!ガインお前…ッ!!」



僕がガインの言葉を聞いて呆然としているとノールが奥の方からガインを怒鳴り、こちらに走って来てくれる。


「チッ…めんどくせぇな…。

良かったですねぇ。フォンルージュ様ぁ。

守ってくれる騎士ナイトがいて」


いやに口角を吊り上げてガインが笑う。


「そんな守ってもらってるお姫様がだって知ったらぁ…どんな顔をするんだろうなぁ?」


なんで…知ってるの。


「王子様も悲しんじゃうよなぁ。自分の婚約者が悪魔だなんて知ったら…王位継承も出来んのかなァ」


ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
冷や汗が止まらない。


アーノルドの…王位継承が危うくなる…?
僕が闇魔法を使えるってなっただけで…?

いや、まさかそんな……でも、毛嫌いされているのは確かだし…それに僕は…魔法を使って人を脅した。

ガインは、一体どこまで知っている。
誰に言われて何が目的で僕を脅している?

…アレンか?確かに彼は知っているはずだ。何せなんだから。


手を振りほどきたい、後ろから来ているノールに助けを求めたいけど、ガインが何をするか分からない。


「ハアッ…ハ……すみません。目を離すべきじゃなかった。ガイン、お前…今すぐ手を…」


「ノール。いい。ガインと一緒に食事をするから。下がって」


困惑した様子でノールが僕を見る。


「いや、でも、アーノルドが…」


「…いいから、大丈夫だから」


「…ルーク様…」


僕が制止するとノールは何かを察したのだろう。心配そうな顔をして動きを止めた。

それを見たガインが満足そうに笑う。

僕が逃げないと分かったのだろう。手首から手をするりと移動させ、僕の手を握ってきた。指と指の間にガインの指が入り込み、所謂恋人繋ぎという繋ぎ方をされ、がっちりと手を固定される。


「そうそう、ノールばっかりずるいだろぉ?俺にも仲良くさせてくれよ。なぁ?


分かったらとっととどっか行けよ三下」


ガインが僕を食堂へと引っ張り歩き出す。


ノール、ごめんね。


後ろにいるノールから目を逸らして、ガインと食堂へと移動した。
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