やがて光りの王となり

雉村由壱

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【 第三章 】やがて光りの王となり

帰還②

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「マティアス陛下……それにまさかクラウス殿下とセラフィーナ殿下?!」

 ウィルバートとクラウスに拘束され、覆面を取られた暴漢達は無抵抗に呆然とその場に膝をついた。

「お前たちに指示したのはクレモラ卿だな」

 マティアスが暴漢三人に言うと三人とも息を詰まらせた。その表情はそれを肯定していた。

「自ら実行役に指示するなんてずいぶんマヌケだな」

 クラウスが鼻で笑う。

「きっと、バルヴィア山が予想外の変化を見せたので私が戻った可能性に気付いたのでしょう。それで慌てて証言者を始末しようとしたのでは」

「この国の一大事に、ある意味よく頭がまわるわね」

 マティアスの予想にセラフィーナは呆れたように溜め息をついた。

「オーケルマン殿。お久しぶりです。混乱している所申し訳ないが御息女をお借りしたい」

 マティアスはオーケルマンとマリアンナに近付き膝を折り話しかけた。

「ああ、陛下っ! 娘がしたことは聞いておりますっ! 大変なご無礼、どう償ったらよいかっ!」

 オーケルマンは床に付ける勢いで頭を下げた。

「マリアンナが私を思ってしたことだと理解しています。悪いようにはしませんのでご安心を」

「陛下……!」

 マリアンナはマティアスを見つめ、涙を滝のように溢れさせ子供のように泣いていた。

「陛下っ、そしてカイ様! も、申し訳……ござい……んでしたっ! 私、陛下が、王様で無くなったら……もっと自由に生きられるって、思ってしまって……!」

「うん……周囲にそう思わせるほど、私は自分自身の人生を楽しむことを諦めてしまっていたからね。心配かけてすまなかった」

 マティアスはマリアンナの頬を撫でその涙を拭うと大きな笑顔を向けた。

「マリアンナ、お前のおかげで実に楽しい休暇を過ごしてきたんだ。嫌味じゃないぞ。本当なんだ! これまでの人生で一番楽しかった! なあ、ウィル!」

 マティアスがウィルバートにも顔を向けるとウィルバートもまた照れたように笑った。


 マリアンナをセラフィーナの輝飛竜乗せてもらい、暴漢三人はクラウスが魔術で出した光の綱で輝飛竜から吊り下げられ運ばれた。

 輝飛竜三頭が城へと続く城下町の大通りを低空で飛んで行くと、町中から人々の大歓声が起こった。

先頭を飛ぶマティアスとウィルバートに気付き「陛下ー!」「マティアスさまー!」と声を上げる人々。

「髪も短いし、服装も王族には見えないのによく分かるな」

「マティアスは遠くから見てもすぐ分かるよ。そこだけ輝いてるから」

 マティアスの疑問にウィルバートは惚気のような答えを返してきて、頬が熱くなる。

 さらに人々はあとに続く二頭の輝飛竜に乗った人物にも気付きざわついていた。時折『クラウス』『セラフィーナ』と呼ぶ声も聞こえてくるのでその容姿で気付いた者もいるようだが、まさか二十年も前に姿を消した伝説の英雄がそのままの姿で現れるなどと信じられるわけもなくただ混乱しているようだった。

 三頭の輝飛竜は城へと着き、大広間に面したバルコニーへと降り立った。半年前マティアスの誕生日祝賀会が開かれ、マティアスとウィルバートがフェイと共に飛び立った場所だ。そこには城中の人々が集まってきた。

「陛下!」
「ベレフォード!」

 真っ先に人垣から出てきたベレフォードは老人とは思えぬ脚力でマティアスに駆け寄ると、老人とは思えない力強よさでマティアスを抱きしめた。

「良くぞ、良くぞご無事でっ!」

「ベレフォード! 聞いてくれ! 『黒霧の厄災』を鎮めたぞ!」

「ああ……! やはり陛下でしたかっ! 光の柱が立ったので、まさかと思いましたがっ」

 真っ白な髪と髭の小柄な老魔術師はハラハラと涙を流し喜んでいる。

「ベレフォード、私一人じゃ無理だった。結局失敗して一度死んだんだ」

「な、なんと!」

 マティアスの説明にベレフォードは目を見開く。

「でもウィルが命懸けで助けに来てくれて、さらに母さまとクラウス殿下が時を渡って来てくれたんだ!」

 マティアスは説明しながらセラフィーナとクラウスを見た。

「ベレフォード! あなた全然変わって無くて安心するわ!」

「ああ、昨日見たままだ」

 ベレフォードに駆け寄るセラフィーナとクラウス。

「ああっ……! なんたる、なんたる奇跡! イーヴァリ様にもお見せしたかった……!」

ベレフォードは呆然と二人を見つめ震える手で二人の頬を撫でた。
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