必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 かつては最も安全で、今は最も危険になった城の一室で芳次は空を見上げながら深いため息をついていた。その様子を報告に訪れていた小姓が見つめている。
「仕方ない。今一度、皆に伝えよ。けっして報復など考えるなと。攻撃すればするほど、己が首を絞めることとなる」
「……御意に」
 芳次は天下の将軍だ。だが、その将軍の言葉を今の近臣はどれほど聞くだろうか。分かりきっていて、それでも今の芳次にできることなどこの程度でしかない。そんな現実をこの小姓も理解しているのだろう、先程から随分と顔色が悪かった。それもそうか、もはや衛府の者というだけで命を狙われる世界だ。政を行う立場にないとはいえ、小姓もまた将軍に近いという理由で狙われている。だというのに頼みの綱がこのように脆弱では蒼白にもなろうというもの。
「して、華都の様子はどうだ? 弥生が無事に朗報を持ち帰ってくれれば良いのだが」
 今はそれだけが頼みだと口にする己に芳次は苦笑した。
(誠に、何が将軍か)
 今回の放火事件も春風が私兵を伴って動き、すべてを潰すことはできなかったようだが被害は少なかったと言えるだろう。そしてその息子である弥生は今も人々を生かす為、戦を回避するために命懸けで駆けているに違いない。そんな春風を従え、忠誠を誓わせているのが己自身であればまだ誇ることができたかもしれないが、彼らは何も芳次の為に動いているわけではない。
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