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「それが誰の命であったとしても、弥生は〝仕方が無かった〟なんて言えない。〝必要だった〟とも〝尊い犠牲だった〟とも、きっと言えない。当然、紫呉や雪也たちを大切に想っているよ。弥生は抱きしめて守る人だから。でも、そんな皆のためなら他はどうなろうと関係ないなんて、それを弥生は思えない」
ほんの少しでもそう思う心があったなら、きっと弥生はここまで走らなかっただろう。必死になって帝を説得することも、一度離れた衛府のために尽くすこともせず、自らの大切な人だけを連れて遠く安全な場所に身を隠せばいい。もしも弥生がそれを望んだならば父たる当主は許しただろうし、春風が縁を繋げ続けた領主たちは進んで弥生を匿っただろう。紫呉にしても、雪也たちにしても、特別場所に拘りを持つ性格ではない。皆が側に居るなら、それがどこであろうと楽園だと言い切っただろう。
だが、弥生はそれを選べなかった。選べるはずもない。例え顔を知らずとも、会ったことがなくとも、あるいは悪人であったとしても、消えるのは命だ。多くの人から明日を奪い、これ以上ない苦しみと悲しみをもたらす。わかっていて、それを回避できるかもしれないというわずかな希望も知っていて、なのに、誰かの大切な人を犠牲にして己の大切な人だけを救う道を歩めるはずもない。
ほんの少しでもそう思う心があったなら、きっと弥生はここまで走らなかっただろう。必死になって帝を説得することも、一度離れた衛府のために尽くすこともせず、自らの大切な人だけを連れて遠く安全な場所に身を隠せばいい。もしも弥生がそれを望んだならば父たる当主は許しただろうし、春風が縁を繋げ続けた領主たちは進んで弥生を匿っただろう。紫呉にしても、雪也たちにしても、特別場所に拘りを持つ性格ではない。皆が側に居るなら、それがどこであろうと楽園だと言い切っただろう。
だが、弥生はそれを選べなかった。選べるはずもない。例え顔を知らずとも、会ったことがなくとも、あるいは悪人であったとしても、消えるのは命だ。多くの人から明日を奪い、これ以上ない苦しみと悲しみをもたらす。わかっていて、それを回避できるかもしれないというわずかな希望も知っていて、なのに、誰かの大切な人を犠牲にして己の大切な人だけを救う道を歩めるはずもない。
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