必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「だから、振り返っては駄目だよ。走り続けるんだ。真っ直ぐ前だけを見て衛府を目指して。例え何が起ころうと、今だけは迷うことなく進むんだ」
 優には珍しい、強く譲らない声音。その事実に弥生は唇を噛み、応えるように顔を上げて前を見据えた。
 胸の内に湧き上がる衝動を抑えるよう手綱を強く握る。駆けて、夢中で駆けて――その時、地鳴りのような音が響いた。
「なんだッ!」
 どんどんと近づいてくるその音に弥生と優は馬を走らせながら視線を巡らせる。遠くから土煙が見えるのは錯覚か?
「走り続けるんだッ! 振り返らないでッ!」
 弥生を守るようにして刀を抜き、それを口にくわえて優は弓矢を構えた。土煙をあげながら走るあれは馬だ。数えきれないほどの馬が近づいてきている!
(敵か?)
 弥生の噛んだ唇から真っ赤な雫が溢れる。やっとここまで来たのに、武衛はもうすぐそこだというのに、こんな場所であんな大軍が押し寄せてくるなんて。
 背後で優が相手の隙を伺っているのがわかる。矢の先端には小さな布袋がつけられている。その中にあるのは優特製のしびれ薬だ。それを放てば何かに刺さろうと、あるいは敵の刀に切り捨てられようと薬は辺りに充満するだろう。あまりに近すぎれば自らも犠牲となるため安易に使うことはできないが、そんなことも言っていられない。
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