/NTERSEⓒT

宇崎初夏

文字の大きさ
2 / 3

001『幻聴』

しおりを挟む
《アノコの声が貴方様に届きますように》

 誕生日、決まって知らない誰かの声で目が覚める。

 自分のから聞こえる知らない……女の人? はいつ会ってもずっと泣いていて。

《あなたを狂わせてごめんなさい。でも、本当に、もう、こうするしかなかったの……ごめんなさい。ごめんね、どうか虚弱よわい私を許してね》

 いつも謝っていて。

《あの子達…………を……って。みんなを救えるのは、みやこの…………》

 いつも途中で夢が終わって、朝になっている。


 ✵


 異星人。

 己の強さを誇示するための争いを繰り返す88ヶ国を静めるべく。全知全能の大神ゼウスの神託により始まった世界大戦が終わり、現在の4ヵ国……レグルス、アルタイル、シェアト、ベテルギウスが誕生してしばらく経った頃。

 空の上から飛来してきた、異形。

 異星人の目的はただひとつ。自身が視認した人間を絶命させること。

 平民だろうが、貴族だろうが、王族だろうが、異星人には無関係。視界に捉えた人間を手当り次第に刻み、引き裂き、時に喰らう。

 どういうわけか剣で斬っても、砲弾を撃ち込んでも、有毒ガスを噴射しても、人間が思っているよりもずっと強靭なつくりをしているらしい。異星人は殺しても死ななかった。

 ある偽善者は異星人との交流を試み、ある科学者は異星人を生け捕りにして調べ尽くしたが『わからないことがわからない。』だけが残った。

『地球外生命体である。』

『蛍光色の、色鮮やかすぎる体液が流れている。』

『炎に弱く、心臓コアを焼却すると絶命する。』

『異星人から発せられる意味を持たない不快音は解読不可能。』

『人間と異星人はどこからも繋がれない、交われない。』

 ほとんど何も解明されないまま、はじめの異星人が飛来して500年と少しの月日が過ぎた今日こんにちでも、各国の軍隊は異星人を焼き払い、突如として壊される平穏を取り戻そうと、武器と炎を奮っていたーーーー

 しかし所詮は昼夜を問わず飛来する死なない異形と、か弱い人間。力の差は歴然、それなりに鍛錬を重ねている軍人といえど、ちっぽけな人間が頑張ったところで異星人の数は減らないし、犠牲者と重傷者が増えるだけ。

 そこで登場したのが異星人専門ハンターギルドだ。

 国の許可を得てギルドマスターとなった者が独自に人を集め、軍人と同様に異星人を討伐し、平穏の維持に務めるだけの、簡単だけど危険極まりないお仕事。

 規律厳しいイメージが先行する軍とは異なり、自由奔放に異星人を討伐するハンターは職業としての人気が高い。次々と新たなギルドが誕生しては実力不足を理由に廃業していったが、一見すると『しん』は違った風に見える。

 小規模なギルドではあるものの、数十年に渡り続いているだけでなかなかの実力であると言えるだろう……というわけにもいかない、昨今の事情。

 犠牲者を増やさないために、平和のために開発された浮遊型異星人殲滅兵器『プテリュクス』の登場により、晨があるシェアト国のハンターは役目を奪われ、ハンターを商いとする者の数は緩やかな減少傾向にあった。

 そんな中ではあるが、昔から変わらずハンターは花形の職業ではあるし、晨も変わらずシェアトに存在している。

「おはよ」

 光が当たる場所で色が変わる濡れ羽色の髪。銀色に瞬く星々を移植うつした目。

「今日はどうする?」

 聞いた者を惹き寄せて離さない、透徹きよらかな声。

「うん、わかった」

 少年にも少女にも無機物ドールにも見える、豪奢でいて秀麗な顔立ち。

「気を付けて、いってらっしゃい」

 綺麗と言われればそれまでだが、つい他の言葉を探したくなるような……神秘どくとくな雰囲気が印象深いこの少年は京。今日15歳になったばかりの、異星人専門ハンターギルド『晨』の受付担当だ。

「身の程知らず、こっちのクエストにしときな」

《ねえ》

《なんで無視するの》

《ちゃんと聞こえているのに》

《いつまで知らないフリをしているの》

《もう僕達を殺さないで……!》

 頭の中に響いてこだまする、幻聴に似たナニかを首を横に振ってはらった京はパッと顔を上げて、受付の仕事を再開する。

「おはよ。ん? あぁ、ここの区画は……」

 数時間後、自分自身を変える出来事が待っているとも知らずに。

 今日は普段よりも多く聞こえる誰かの悲鳴こえを無いものとした京は受注完了の判を押し、もう会えないかもしれない団員に手を振る。

「いってらっしゃい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

聖女エーステリアの死

倉真朔
恋愛
聖女エーステリアはなぜ最愛の人に断罪されたのか。切ない物語です。 この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。 王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。 『…本当にすまない、ジュンリヤ』 『謝らないで、覚悟はできています』 敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。 ――たった三年間の別れ…。 三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。 『王妃様、シャンナアンナと申します』 もう私の居場所はなくなっていた…。 ※設定はゆるいです。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...