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第22話 女の子にプレゼントしたこと? ……もちろんありますよ、当然じゃないっすか②

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「……無理だ」
 俺は頭を抱えた。

 若い女の子へのプレゼント……バキバキの童貞には高すぎるハードルだ。

 なんだろう。女子って何が好きなんだ?
 イケメン? どうせイケメンだろ? うわぁ、そんなことしか浮かんでこねぇ。

 もうとりあえずなんでもいいから高級そうなものでいくか? ブランドもののバッグとか。
 一説によると女性はデザインより値札を見てプレゼントを判断するという研究結果もあるらしい。誠意は金額、みたいな。足りないセンスは金額で補う感じでいくか?
 いやでも、よく考えたらあんまり高価なモノは錬成できないんだよな……。

 実は一見万能そうな錬成魔法だが、消費魔力がエグいという致命的弱点がある。
 物の大きさや複雑さ、それと希少性に比例して必要な魔力がどんどん増大する。好きなものを作れる、なんてお題目だが、実際はかなり対象が絞られるのだ。

 あと当然っちゃ当然そうだが、おカネの錬成はできない。
 師匠の本曰く、強い煩悩に阻害されて失敗するらしい。本には適当な金属を集めてやろうとしたらグズグズのデロンデロンななにかできてしまったと書いてあった。
 ……やろうとはしたんだな、あのじいさん。

 あーあ。こんなとき元の世界なら『女子 10代 プレゼント オススメ』とか検索できるのに。
 自分の脳みその圧倒的なデータ不足が嘆かわしい。

「くそ。今までの会話にヒントでもあればなぁ……」
 なんかそれっぽいこと言ってなかったか? アレが欲しいとかコレが欲しいとか。
 もしくはそこまでピンポイントでなくとも、興味のあることとか……あるいは気にしていることでもいい。

 俺はとにかく手がかりを求め、メスガキの過去の言動を探った。

 そして、見つけた。

「……美容」

 口にした瞬間、これだと確信した。

 古今東西、女子なんて自分をかわいく見せることに余念がない生き物だ。
 ヤツらは基本『美』に飢えている。それは異世界人だって同じはず。
 その証拠に、ヤツは前回こんなことを言っていた。

 ――女子の髪を不用意に濡らすなッ!!!

 あれこそまさしく見た目に気を使っているがゆえに出た言葉。
 まあぶっちゃけあんなにずぶ濡れにされたら誰でもキレそうなもんだが……そこは置いておこう。

 で、肝心の何を作るかだが。
 これに関しては珍しくすぐに決まった。

 美容という単語が浮かんだ際、同時に俺の頭の中には“あるもの”が思いついた。
 というのも、経験がないと言ったが、実のところ俺はそれを一度女性にプレゼントしたことがあるのだ。

 それが――『美顔器』。

 手のひらサイズの、自分で顔に押し当てて使うタイプ。
 振動と熱で筋肉やリンパを刺激し、肌を活性化させる。マッサージ感覚でも使えて、当時あげた女性からは「けっこう気持ちいい」と好評だった。

 ま、女性と言っても母親なんですけどね。
 ごめんなさい、見栄を張りました。こんな成功体験しかない自分が悲しい……。

 ともあれ、これでなんとかプレゼントは決まった。
 あとは材料を用意して錬成を実行するだけ……なのだが。

「…………」

 俺は手に持った“スマホ”をジッと見つめた。

 ……ぶっちゃけた話、絶対にコイツを使わなければいけないということはない。
 モトとなる素材さえあれば、錬成自体はできるはず。この場合、美顔器なら金属とプラスチックとセラミックなどがそうだろう。その原料を町で調達してくれば事足りる。

 だが、錬成魔法は――ひいては魔法とはイメージが物を言う世界。

 美顔器の外観は想像できても内部構造を知らない俺にとって、今のままでは弱い。
 振動と熱で――という機能をいったいどういう仕組みで生み出しているのか、朧気な知識で想像するしかない。

 だがしかし、そのどちらの機能も有しているのがスマホこいつだ。
 であれば、こいつを素材にすれば俺の足りない知識と想像力を補ってくれるのではと考えたのだ。

「く……」

 しかし、如何せんもったいない。

 作ろうとしている美顔器は数千円程度。一方、スマホは数万円。
 明らかに価値が釣り合っていない。

 俺は悩んだ。悩みに悩み抜いた。
 そして決断した。

「……背に腹は代えられない、か」

 すべては、このデススパイラルから逃れるため。

 ならばこれは必要なコストと割り切るしかない。
 それに、この世界じゃスマホなんてたいして役に立たない。せいぜい時計代わり。もしくは文鎮。
 であるならまあ……惜しくは……うん……その――。

「ええぃ――【錬成魔法アルキマイズ】!」

 もういいヤケクソだ。やったらぁ!

 魔法が発動する。
 地面に置いたスマホが緑色に発光し、徐々にそのフォルムを変えていく。

 結果は……成功だった。

 そこにあったのは、紛れもなく以前見た記憶のある美顔器だった。
 ディテールこそやや異なるものの、かなりイメージしたものに近い。

 ただ、代償もあった。

「ハァッ……! ハァッ……!」

 やばい……なんだこれ……!?
 めちゃくちゃ苦しいっ……!!!

 全身を激しい疲労感が襲う。マラソン直後にさらに100メートル走をさせられたみたいだ。
 呼吸ができない。肺が張り裂けそうなくらい痛い。
 死ぬほど脱糞を我慢しているときみたいな嫌な汗が噴き出してくる。

 くっ、これが魔力が枯渇した反動か……!

 やはり錬成魔法は魔力を喰うらしい。
 想定はしていたが、このサイズでもこれほどとは。機能が単純とはいえ、やはり機械のように複雑な物体を錬成するのは無茶な行為だったようだ。

「……ふぅ。まさかたかがプレゼント一つで死にかけるとは……」
 やっとこさ起き上がりながら汗をぬぐう。
 未だかつて、プレゼントひとつでこんなに身を削った人間が他にいるだろうか。

「しかし、我ながら見事な出来栄えだな」
 試しにスイッチを入れてみると、ちゃんと問題なく動作もした。
 いける。市販のものにも全く見劣りしない。

「クク……」

 これで準備は整った。

『ねぇキミ、ちょっとイイものあるんだけど……ほしい?作戦』――発動だっ!! 
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