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昔ばなし ~オイ視点~
しおりを挟む「まったく…」 単語
先ほどから 終わりの見えないため息が、ひっきりなしに 口から こぼれ落ちていた。
原因は明白。
朝方、耳にした 長屋のおかみさんの話が、心を重くさせていた。
『アイツが 鯉太郎を 追い出したのって…
やっぱ、アレが 原因だよな⁉…』
「ハァーーーーーー」
頭を抱え 長いため息を吐く。
『事故みたいなもんだったのに…
アイツ、まだ 引きずってんだな…』
呟いた顔が、苦痛に歪む。
++++++++++++++
【十数年前】。
オレ、【オイカワのオイ】と【ナマズのゼベット】。そして、【鮭のサーモンの助】は、幼なじみで 大の仲良しだった。
なにをするにも いつも三匹一緒。
その日も、一人暮らしのゼベットの家で 酒を飲んで ドンチャン騒ぎしていた。
だけど、もともと酒の弱かったゼベットは、先に寝ちまったんだ。
そこで、悲劇がおきた。
ノスケ(名前長いからサーモン抜いて ノスケって呼んでた)が ふざけて、ゼベットのヒゲや口の周りを ツンツンいじりはじめた。
結果は明白 というか最悪。
寝てたんだから当たり前だけど、寝ぼけてたゼベットは、ガブリと ノスケに襲いかかり、そのまま飲み込もうとした。
慌ててオレは、ノスケを引っ張ったけど ナマズって意外とチカラ強くて なかなか思うようにいかない。
そのうち 騒ぎを聞きつけた近所の人たちが、加勢に来てくれて 寝ぼけてたゼベットも、しっかりと目を覚ましてノスケを吐き出したんだ。
だけど。
「人殺し‼ お前なんて、もう友達じゃない‼」
って ゼベットに向かって、ノスケは叫んだ。
その後、オレも引きずられるように ゼベットの家から押し出された。
結果、アイツは ワケのわからないまま、一人 家に取り残された。
その後、引っ越すと言って、ノスケは この場所を捨てた。
オレも なんだかんだ忙しと言い訳しながら、なかなかアイツに 会いに行かなかった。
でも、それからなんだ。
ゼベットが、他人を寄せつけなくなったのは。
わかってるけど…
「どーしたら、いいんだ?」
零れた弱音が、吸い込まれるようにして 壁に消えていく。
当然ながら、その問いに 答えるものは 誰もいなかった。
++++++++++++++
具体策など なにも思いつかず、
悶々とした日々を ただやり過ごしていた。
そんなオレだったけど…突如、思い立ち 長屋を訪ねた。
おかみさんから 紹介されたオレを見て、 鯉太郎は 目を丸くする。
そして 次にオレに尋ねた。
自分のなにが そんなに、ゼベットを 怒らせてしまったのかと。
オレは誇張することなく、過去の一部始終を 鯉太郎に語った。
そして…二人、頭をつき合わせて 悩みはじめた。
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