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6話 セインとマリエル
しおりを挟む孤児院で暮らす子供たちの服を綺麗に洗濯して、マリエルが干していると… けわしい表情を浮かべた、セインがあらわれた。
「マリエル… 元気にしているか?」
「まぁ… セイン様! はい、元気です」
セインとマリエルは、婚姻の儀以来の再会である。
「手紙にはギリスとは暮らせないとしか、書いてなかったが……?」
部下をどなりつけた人物と、同じ人物とは思えないほどの優しい声で、セインは慎重にマリエルにたずねた。
「・・・・・・」
とても、あんな… ギリスさんに言われた、屈辱的なことをセイン様には言えないわ! あまりにも恥ずかしすぎるもの!
『マリエル、私は君を愛す気はないから、君も私に愛情は求めないでくれ!』
『どうせ君だって、結婚の適齢期をすぎてしまい、嫁ぎ先が無くて、困っていたのだろう?』
初夜にギリスとかわした会話を思い出すだけで、マリエルはくやし涙がにじみ出そうになり、唇をかみしめる。
そんなマリエルを見て、セインは心配そうな顔をした。
「いったい何があったんだ? …マリエル?」
「ギリスさんとの結婚は… 間違いでした! …あのかたは、妻はいらないそうです」
恥ずかしくても… 理由を言わなければ、セイン様はきっと納得しては、くださらないわね…?
「ギリスに、何を言われたんだ?」
「子供も、家庭も必要ないと…」
「何だって?! クソッ… 私がギリスと話す、あいつはマリエルのすばらしさを、知らないだけなんだ!」
セインはギュッ… と拳をにぎりしめた。
「いいえ! やめて下さい、セイン様! 私はこのままで良いの! もう結婚をする気はありませんから!!」
「あきらめてはダメだ、マリエル! ギリスが嫌なら他の部下を…」
華奢な肩に手をおき、セインはマリエルを説得しようとするが…。
「どうか、やめて下さい! 私には愛する人がいます! その方への愛を抱いた私は、他の男性と結婚をしては、いけなかったのです!」
「…愛する人?! マリエル、それは誰だ?!」
セインに問い詰められても、マリエルは答えられない。
「どうかこれ以上、私を結婚へと… 追いつめないで下さい!」
セイン様、私はとても弱い人間です! 愛する人に結婚しろと言われれば、間違っているとわかっていても、愛する人の言葉に流されてしまいそうなのです。
だから、どうか弱い私をこれ以上、追いつめないで下さい!!
「マリエル! 君が愛する人とは、誰だ?!」
「言えません、セイン様… ごめんなさい!」
セインの追求に耐えられなくなり、マリエルは逃げ出した。
「マリエル…?!」
走りさる華奢なマリエルの背中を、セインはぼうぜんと見送った。
「マリエルが、思いを寄せる男がいたなんて…?! 知らなかった! クソッ…! いったい誰なんだ?! 知っていたら、ギリスを紹介したりはしなかったのに! 何がなんでも、その男を説得していた!」
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