従姉が私の婚約者と結婚するなら、魔法騎士団をめざします

みみぢあん

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24話 両手の傷2

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「……」
 ジョエル様は自分を揶揄からかううウスタシュ様を、怖い顔でジロリとにらむ。

「おお、怖い! 本当に落ちついて下さい、ジョエル卿。 先にお嬢さんの治療をしなければ… この傷は痛そうだ」

 ウスタシュ様は挑発しているようにしか見えない、おどけた態度でジョエル様をなだめようとする。 

「ハッ! そうだった。 治療のために連れて来たのに… ウスタシュ殿、早く治癒魔法をアナイスにかけてやってくれ!」

「はい、はい」
 ヤレヤレとあきれながらウスタシュ様は私のとなりに腰をおろす。

「え? 待って下さい! 治療は必要ありません」
 冗談ではないわ! そんなお金、私は持っていない。 家ではお医者様の診察だって受けられないのに… 神官様だけが使う特別な魔法の治療をうけるなんて!

※一般的に神官が使う治癒魔法は傷を一瞬で治すため、高い寄付金を神殿に払わないと受けられない。 平民や貧乏貴族などは神官の治癒魔法よりも、時間がかかっても治療費が安い医師の治療を受ける。 


「なぁアナイス、傷が痛むだろう? …それにこの傷では治癒魔法で治療しないと、みにくい傷あとが残ってしまうよ」  

 私が治療をこばむと、ジョエル様は困った顔で見おろしてくる。

「そんなことどうでも良いわ。 私は治療を受けたくありません! 治療に使うお金なんてありませんから」

「大丈夫ですよ、お嬢さん。 ここでは治療費を取りませんから」

 私の隣に腰をおろしたウスタシュ様まで、私に治療を受けさせようと説得を始めた。

「でも… 今、私からは取らなくても、ワザ―トン子爵家に治療費を請求するのでしょう? そんなことされたら私と妹が叔父様に……」
 しつけと称した暴力のあとを治療されたあげくに、この場にジョエル様まで居合いあわせたと叔父様に知られたら… 本当にシモーヌと2人で娼館に売られてしまうわ!! ああ、本当にどうしよう!!

 私はあわててほどいた包帯ほうたいをひろって、自分の手にグルグルと巻きなおす。

「どうなると言うんだ、アナイス? 叔父に君と妹が何をされるんだ?」

「と… とにかく、治療はダメです! やめて下さい」 
 早く試験会場に戻らないと! これ以上、この人たちとはいられない。

「待つんだアナイス!」

 シルクの手袋を持つと、私はあわててベッドから下りて扉に向おうとするが、またしてもジョエル様が私を捕まえ背後からギュッ… と抱きしめて自由を奪った。


「嫌っ! お… お願いです! ジョエル様、放して下さい! 放してぇ―――っ!!」
「落ち着けアナイス! 頼むから暴れないでくれ!」
「嫌よ! 私は魔法士の認定試験を受けて、自立したいの! そうすれば何もかもうまく行くはずなのよ!」
「アナイス!」
「お願いですから… 放して下さい。 これぐらいのケガなら我慢できます! 治療なんていりません!!」

 ウスタシュ様もベッドから腰を上げ、ジョエル様に自由を奪われた私の前にきた。

「ああ… これは仕方ないなぁ…… お嬢さんすまない」
 頭をかきながら困った顔でぼやき…… ウスタシュ様は私のひたいにペタリと手のひらあてる。

 ウスタシュ様の手がひたいに触れた瞬間、私に魔力が流れ込んで来た。


 私はその場で意識を失った。




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