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17話 朝がきて
しおりを挟む聖水で濡らした布をソレイユが何度も傷痕にあて、一時的にだが、傷の奥まで染み込んだ魔獣の呪毒の穢れが浄化されて薄くなり… 伯爵はまともに話が出来るまで体調が回復した。
『朝食の時にもう一度、話そう』 …と伯爵と約束し… ソレイユは自分が泊まる、伯爵夫人の部屋へと戻る。
ベッドに入っても、夜明け近くまで眠ることが出来ず… 朝になると、目の下にくまを作り、ソレイユはげっそりと疲れ果てていた。
「まぁ! お嬢様、初めてのお部屋であまり眠れなかったのですね? おかわいそうに!」
着替えを手伝う侍女のディヴェールに気づかわれ、ソレイユはいた堪れない気持ちになった。
「そんなことはないわ… とても素晴らしい部屋だから」
眠れなかったのは部屋のせいではなくて… 私自身がこの伯爵夫人の部屋に、相応しい女性ではなかったからよ。
だって伯爵様は、私との結婚の話自体を知らなかったのだから!
『待ってくれ! 私と結婚?! 私と君がか?!』
昨夜見た、何も知らない伯爵の驚いた表情が脳裏をよぎり… ソレイユの胸の中は、苦い思いでいっぱいになる。
「……」
伯爵様は私が、王立魔法騎士団で伯爵様の部下だった、リベルテの元婚約者だということは知っていたわ。
でも、それ以外のことは… 私について伯爵様は、きっと何も知らないのね? 私のすべてを知っていて、受け入れられたと思っていたのに…?
ソレイユが一番、気にしている… リベルテに純潔を捧げてしまったことを、伯爵は知らないのだ。
『傷モノのお前が、結婚できるかもしれない機会を、お前はすてるつもりか?』
「お父様は…」
お父様はそう言って私を説得したけれど… 私が純潔を失った瞬間に、私は結婚できる機会を、すでに失っていたのよ! 私のような貧しい未婚の女性が、最後にたどり着く場所は… 娼館か女神ルージュの神殿ぐらいだから… 私は本当にジャルダン子爵家から捨てられたのね?
結局… ペイサージュ伯爵家にも、ソレイユの居場所は無かったのだ。
義母の本当の狙いが何かわからず、ソレイユがこの縁談を不安に思っていたのも事実だが… それでも昨日までは、小さな希望を持ち続けていた。
でも今は…… 元から何もなかったように、ソレイユの希望は跡形もなく消えさった。
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