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27話 婚約式
しおりを挟むソレイユがアンバレの求婚を受け入れた、その翌日の午後にカルムの宣言通り、2人の婚約式は行われた。
婚約式と言っても… 目的はペイサージュ伯爵の婚約者となるソレイユのお披露目パーティである。
カルムの思いつきで急遽、決まった式だが、招待状を送られた12人の招待客たちはそれぞれ、パートナーを連れて全員出席した。
「ジャルダン子爵家の招待客が、1人もいないから… 皆様、変に思わないかしら?」
急いでドレステーラーで購入した、アンバレの瞳と同じグリーンのドレスをまとったソレイユは… ふと考え込んだ。
「大丈夫だよ、ソレイユ… 今日招待したのは、全員が魔法騎士団の騎士たちだけど… カルムが選んだ気の良いやつらばかりだから」
ソレイユの隣に立ちエスコートする婚約者のアンバレは、ニコリッ…と笑ってソレイユの手袋をはめた手をトントンッ… とたたいた。
「はい、アンバレ様」
ダメね、私ったら! せっかく美しいドレスを着て、侍女のディヴェールに完璧な化粧をしてもらったのに…?! 最悪なことばかりを考える癖が、出てしまったわ? こんな素敵な日を、起きてもいないことで、クヨクヨ悩んでだいなしにしてはいけないわ?!
「私たちも楽しもう…? ソレイユ」
「はい」
…だが、その招待客の中に懐かしい顔を見つけて、思わずソレイユは涙ぐんだ。
「シュクルお姉様?! 嬉しい、来て下さったのね!」
ああ、お姉様にお会いするのは何年ぶりかしら?!
カルムの妻シュクルも、ソレイユと同じ地方貴族の出身で… ソレイユがまだ子供の頃、カルムの婚約者として紹介され、姉のように慕っていた女性である。
「まぁ! 本当に綺麗になってソレイユ、こんなに魅力的な婚約者がいては、これから結婚まで伯爵様は気が気ではないわね?! だから、大急ぎで婚約式もするのでしょう?」
シュクルはソレイユの隣でデレデレとする、アンバレを見あげて揶揄う。
「ああ… ソレイユ、私は元部下たちと話して来るよ! 君も奥方たちと交流を深めると良い」
これ以上、揶揄われてはたまらないと… アンバレは、その場を逃げ出した。
「はい、アンバレ様」
「ふふふっ… 伯爵様のあんな甘いお顔は、見たことが無いわ?! 本当に嬉しそう!」
カルムからソレイユが抱える憂鬱な事情はすべて聞かされていても… 夫よりも何倍も思慮深い妻のシュクルは、そんなことは何も知らないという顔で、ソレイユを愛情深く抱きしめた。
「ごめんなさいお姉様! 婚約式よりも先に、挨拶をしたかったけれど… 準備で忙しくて」
「どうせカルムが、強引に進めてしまったのでしょう? ふふふっ… 再会の挨拶も婚約式も、嬉しいことが2つも重なって、今日は本当に良い日になったわ、ソレイユ!」
「お姉様!」
「これが2ヵ月後なら、私のお腹は大きくなりすぎて、招待を受けられずに悔し涙を流すところだったけれどね…」
ふっくらと丸みをおびた身体のシュクルは、3人の子供の母親で、現在は4人目を妊娠中だ。
コロコロと楽し気にシュクルは笑い、ソレイユの頬にキスをした。
「ふふふっ… 本当に良かったわ!」
少し前まで自分の招待客が1人もいないと、不安だったけれど… シュクルお姉様とカルムお兄様は私の招待客でもあるのね?
アンバレはカルムと元部下たちに囲まれ、散々冷やかされた後… カルムの妻シュクルと、元部下の妻たちと楽しそうに親交を深める、ソレイユの隣へもどり、細い腰を引き寄せて額にキスを落とした。
「ソレイユ、魔法騎士団の陰の支配者たちとは、仲良くなれたかな? 虐められてはいない?」
人前ではあるが、招待客たちはアンバレがよく知る、元部下とその妻たちのため… ついつい気がゆるんで、アンバレの普段は堅苦しく見える完璧な礼儀作法は、のんびりと休憩中らしい。
「アンバレ様!」
い… いくら私たちの、婚約式でも…?!
異性に腰を抱かれることに慣れていないソレイユは、真っ赤になる。
「まぁ! 団長様ったら!!」
おかしそうにシュクルに笑われたが、アンバレは気にせず、今度はソレイユの頬にキスを落とした。
そんな和やかな空気が… 一瞬で緊迫した空気に変わった。
「お前は招待されていない!! 今すぐ帰れ、なぜここに来たんだ?!」
あらあらしく怒鳴るカルムの声が室内に響く。
「薄情だな兄さん! 僕は幼馴染にお祝いの言葉を贈りに来ただけなのに?」
「帰れリベルテ!」
ソレイユの元婚約者リベルテがあらわれた。
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