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28話 婚約式2
しおりを挟む室内が急にさわがしくなったと思ったら… アンバレが広い背中でソレイユの視界を遮るように立つ。
招待客の奥方たちと、話に夢中になっていたソレイユは… 元婚約者リベルテの存在に、まだ気づいていなかった。
「アンバレ様?」
急にどうしたのかしら?
自分の前に立つ、婚約者の広い背中を見上げて、ソレイユが名前を呼ぶと… アンバレはキュッ… とソレイユの手をにぎりしめた。
「大丈夫だ! 私がいるから、何も心配しなくて良い… ソレイユ大丈夫だよ」
まるで怯える子供をなだめるように、アンバレはソレイユに声をかけた。
「そんなにカリカリするなよ兄さん!」
「お前の来る場所では無い! サッサと帰れ、リベルテ!!」
厳しい口調のカルムが、ソレイユの元婚約者リベルテを追い出そうとしていた。
「…っ!?」
なぜ、リベルテがここにいるの?! 招待もしていないのに?! 何をしに来たの? まさか私に会いに来たわけでは、ないわよね…?!
リベルテの名前を聞き、ソレイユはハッ… と息をのみ、身体を強張らせ… 自分の手をにぎるアンバレの手をギュッ… とにぎり返した。
「ソレイユ… 私にまかせておきなさい」
「ア… アンバレ様…!」
「大丈夫だよ…」
「はい…」
そ… そうね! 今の私は1人ではないし… 私を守ろうとしてくれる味方がいるわ?! ジャルダン子爵家の居間で、家族から一方的に、リベルテと婚約解消をさせられた時とは違うのよ?!
リベルテはソレイユにとって、何年もずっと待ち焦がれ、心の支えにしていた人だった。
だが、別れてから何年もたっていたために、声を聞いただけでは… その声の主がリベルテ本人なのか、ソレイユにはわからなくなっていた。
アンバレの背中に隠れたまま、ソレイユはこっそりとカルムが言い争う相手をのぞき見る。
チラリと見た先に、ソレイユの記憶に残るリベルテよりも… 身長も身体のあつみも一回り大きくなり、大人へと成長した姿があった。
「……」
あれが本当にリベルテなの…? まるで別人だわ?!
大人になったリベルテは、ニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべ… その顔には、義母や義妹と共通するやらしさがあり、ソレイユは嫌感を感じる。
ソレイユは無意識で、アンバレの広い背中に触れた。
「これはペイサージュ伯爵! お久しぶりです、もうおケガはよろしいのですか? 僕にはまだ、治っていないように見えますが…?! その状態で、若い花嫁をむかえるなんて、伯爵は勇気がおありだ!!」
絵に描いたような慇懃無礼な態度で、リベルテはアンバレを見くだすような言い方をした。
招待した魔法騎士団の元部下たち全員が、以前と変わらずアンバレを団長と呼び、騎士団へ必ず復帰すると信じているのにも関わらず… リベルテはアンバレを騎士としてではなく、ただの貴族としてあつかい、爵位名で呼んだ。
そのうえ、ケガ人のくせに若い女性と結婚するのかと侮辱までした。
「……」
なんて性根の腐った人なの?! 頭が空っぽで意地悪なリュンヌと、お似合いだわ?!
リベルテの無礼な態度に、ソレイユは腹を立て、ムッ… とする。
「リベルテ、お前は騎士にしては品性が欠けているから、今日は招待しなかったのだが… なぜ、わざわざ来たのだ?」
成熟した大人の男性のアンバレは、腹を立てて我を忘れることも無く、リベルテの暴言を軽く流してあきれたようすで、器の違いを見せた。
「ですから… 僕は幼馴染のソレイユに、祝いの言葉を贈ろうと…」
「リベルテ… たとえお前が、私の婚約者の幼馴染でも… もう成人した大人なのだから、子供のように気安く、私の婚約者の名を呼ばないでくれないか? やはりおまえは品性に問題があるな?」
アンバレはリベルテを、礼儀知らずな子供のようにあつかった。
「彼女は僕の元婚約者で…」
「元…? 元婚約者だって?! お前はもうジャルダン子爵家のリュンヌ嬢に、婚約破棄をされたのか?! ずいぶん、早かったな?」
「なっ…?! 違う僕は、ソレイユと…」
明らかに一枚上手のアンバレと、未熟な愚か者に成り下がったリベルテのやりとりに… 大きな背中に隠れたまま、ソレイユは思わずクスクスと笑ってしまう。
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