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49話 控室で
しおりを挟む婚姻の儀式(結婚式)は、毎朝ソレイユが通っている王宮街の女神ルージュの神殿で、神官長のコンプレスがとり行うこととなった。
「コンプレス殿、急な依頼にもかかわらず、我々の婚姻の儀を引き受けて下さり、ありがとうございます」
「ありがとうございます、神官長様…」
祭壇広間のわきにある小さな控室で、シンプルな純白のドレスを着たソレイユと、騎士の礼装を着たアンバレは、丁寧にお辞儀をした。
左目は完治したがカモフラージュのため、アンバレは黒布で傷痕があった場所をふたたび覆い隠している。
「お礼など不要ですよ? 私は婚姻の儀をとり行うことが、他のどんな儀式よりも好きですから」
コンプレスは満足そうに、ソレイユの花嫁姿を見て目を細めた。
アンバレにエスコートされたソレイユは、赤みがかった茶色の髪をこまかく編んでアップにし、純白のドレスをフワフワと揺らしながら… 内緒話ができる距離までコンプレスに近づく。
オルドナンス行きをすすめたコンプレスなら、聖遺物が聖女エクレラージュの遺体だということも、聖女に関する秘密も、すべて知っているため… 2人が交わした沈黙の誓いを破ることにはならないだろうと、ソレイユが体験した『聖なる試み』について詳細に話した。
「そこまで強力な、増幅効果を得られるとは… 驚きました!」
「本当に… 私自身はあまり、自覚が無かったのですが… でも、嬉しいです! アンバレ様が苦しむことが無くなるのですから!」
隣に立つアンバレを見あげて、ソレイユはニコリッ… と笑った。
「正直、私の方は嬉しさと不安が半々… という気持ちです」
「伯爵様の気持ちもわかります… 聖女に課せられる責任はとても重く、そして孤独です… 私もソレイユ嬢を、そんな立場に追い込みたくはありません」
同じ神官長職にあっても… コンプレスはオルドナンスの神官長とは違う考えを持っているようだ。
コンプレスの考えを聞き、アンバレは内心でホッ… と胸をなでおろす。
「ご理解いただけて、良かった」
「それで婚姻の儀を早めたのですね?」
「はい、その通りです… オルドナンスの神官長殿の態度を見て、恐らくソレイユのことを誰かに話すのは、時間の問題かと思われます」
「確かに… オルドナンスの神官長とは少し縁がありまして… 伯爵様がおっしゃる通り、誠実な信仰心を持つ人ですが、神の教えを広めるためなら、誰かが犠牲になっても、当然の犠牲だと割り切れる人です」
コンプレスは厳しい表情を浮かべてうなずいた。
「やはり… 最悪の事態になりそうですね?」
「……っ」
コンプレスとアンバレの話を黙って聞くうちに、ソレイユは不安に襲われ… アンバレが着る白地に金糸の刺繍がされた、騎士の礼装の袖をキュッ… とにぎりしめる。
不安そうな顔をするソレイユに気づき、アンバレは微笑み自分の袖をにぎりしめる細い手を、トントンッ… とたたく。
「大丈夫だよ、ソレイユ… 私が守るから!」
「アンバレ様……」
2人を見ていたコンプレスは、パンッ…!! と手のひらを打ち合わせると、ソレイユの不安を吹き飛ばすように、明るい声で言い放つ。
「さぁ、ソレイユ嬢! 伯爵様! 面倒なお話は後にして、さっさと婚姻の儀を行ってしまいましょう?!」
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