すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

文字の大きさ
51 / 92

48話 目覚めると…2

しおりを挟む


 2つのグリーンの瞳でアンバレに見つめられるうちに… 少しづつソレイユの中に、聖女エクレラージュから受け入れた記憶がよみがえって来る。


「あ… 私は!」
 オルドナンスの神殿で聖女エクレラージュ様の聖なる力を受け入れて… それから… 心がちぎれそうな痛みがあふれて…

 不思議と昨夜のように、現実とエクレラージュの記憶との区別がつかず、ソレイユが苦痛を感じることは無かった。

「ソレイユ… 君が私にしたことを、おぼえているか?」
「私がアンバレ様にしたこと…?」

「君は私の傷痕に触れ、聖なる力で魔獣の呪毒じゅどくを綺麗に浄化したあと… 気を失ったんだ」

 眠るソレイユをつれて、オルドナンスから伯爵邸へ帰る途中、アンバレは何度か連絡用の幻鳥げんちょうで、魔法騎士団にいたカルムとやり取りをした。

 すると…

『何がなんでも団長の目を直して、騎士団長に復帰ふっきさせる!』
 …と言い張り、カルムは騎士団所属の腕利うできき治療師3人と一緒に、アンバレが帰宅するのを伯爵邸で待ちかまえていた。
 アンバレの左目に、3人がかりで高度な治癒と再生の魔法をかけて、完治させてしまったのだ。


「まぁ… 私が眠っている間に、そんなことが?!」

「カルムにはあきれるが… やっぱり両目が使えるのは気分が良いよ! だが、それもすべて君が私の呪毒じゅどくを浄化してくれたから、完治させることが出来た… ありがとう、ソレイユ… 君は何度も私を救ってくれた!」 

 アンバレにほほをなでられ、ソレイユもアンバレの頬をなでた。
 …不意に、ソレイユの脳裏のうりに自分が聖なる力を使った記憶がよぎる。


「あの時、なぜか… 自分が聖女だと思ったのです」
 自分の中が、神にたくされた聖なる力で満たされているのを感じ、その力を人々に分け与えるのが、私の使命だと…

 そして目の前にいる、魔獣の呪毒じゅどくで苦しむアンバレこそ、聖なる力を分け与える存在だと思ったのだ。


「それは…っ! ソレイユ、今はどうなのだ? 私の目から見ると君の身体に満ちていた聖なる力は、薄くなり消えたように見えるが?」

「はい、私も今は感じません…」
 聖なる力を感じていた時は… まるで夢の中にいるような、不思議な感覚だったわ?

「そうか!」
 アンバレは、ホッ… とため息をつく。

「アンバレ様…」
 
「聖女は王家が保護し、王族の妃にされる… 君の年齢だと王太子の側妃にされるかもしれないと…」
 顔をしかめて嫌そうにアンバレが語った話に、ソレイユはアンバレよりも嫌そうな顔をした。

「そ… そんなの嫌です! 私はアンバレ様の婚約者ですから!! たとえ相手が王太子殿下でも… アンバレ様とでなければ結婚したくありません!!」

「このまま君が聖女となれば、私は君を取り上げられることになる! だから私は、先に君を妻にしたいのだ」

「私は聖女になどなりません!」
 いきなり火が付いたように怒り出したソレイユに… アンバレはニヤニヤと嬉しそうに笑う。

「私もそうであって欲しい! 君はエクレラージュ殿が、どのような生き方をしたか覚えているか?」

「はい… 愛する人を失い、その人の子を出産しても、その子に自分が母親だと名乗ることも許されず… 産まれてすぐに愛する人の弟へ、養子に出さなければならなかった…」
 生涯しょうがい、聖女エクレラージュ様が感じ続けた痛みが、私の胸の奥にチクチクと残っているわ… こんな痛みを感じながら、生きて行くなんて… 私には耐えられない!

「いくら王家でも私の妻になった君を、取り上げることは出来ないはずだ」
 ペイサージュ伯爵家は古くから存在し歴史ある名家で… 代々王家につくしてきた実績がある。
 その伯爵家から伯爵夫人を取り上げれば、貴族たちから反発があるだろう。

「ああ… それで結婚を早めるのですね?」
 アンバレ様は私を王家から守ろうと… そこまで考えて下さるのね?

 何度かうなずき、ソレイユはようやく納得した。

「嫌か?」
 アンバレのグリーンの瞳が、不安で揺らぐ。

「いいえ! 早く結婚して、アンバレ様の妻になりたいです!」


 ニコッ… と笑い、ソレイユはアンバレの唇にキスをした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐
ファンタジー
 魔法もろくに使えない役立たずと言われ、婚約者にも彼の周りの人達にも馬鹿にされてきた私。ずっと耐えてきたつもりだったけど、誰もがこんな私よりも、もっと優秀な魔法使いがいたはずなのに、とため息をつく。  魔法によって栄え、王都にまでその名を知らしめた貴族の婚約者は、「なんでこんな役立たずが……」と私を蔑み、城の中で魔法使いたちを統率する偉大な魔法使いは、「こんな女がこの領地を任されるだなんて! なんて恐ろしく愚かなことだ!!」と嘆く。  貴族たちに囲まれ詰られて、婚約者には見放され、両親には罵声を浴びせられ、見せ物のように惨たらしく罰せられた。「なんでこんな役立たずがこの城に来たんだ……」そう落胆されながら。  魔法が苦手でここを出る手段はないけど……もうこんなところにいられるか!  そう決意した私に、私を虐げていた誰もが腹を立てる。激しくぶたれた私は、機嫌を損ねた残忍な竜たちに、枷をされて隣の領地まで連れて行かれることになった。  重労働を言いつけられ、魔物や魔獣、竜たちがうろつく森の城についてからは、暗く小さな部屋に放り込まれた。  たった一人で食事をして、何もない部屋から見窄らしい格好で窓の外を見上げる。  なんだこれ………… 「最高…………」  もう、私を踏み躙る奴らに好きに扱われることはないんだ! それだけで、何もかもが最高!!  金もなければ能力もまるでない! 魔法すらまともに使えない! だけど今は思いのままに身につけに行ける!! 何もないのでこれから欲しいもの全部、手に入れに行きます!  そんな風にして竜族の城に住むことになった私。気づいたらやけに皆さんとの距離が近い? 元婚約者も「戻って来い」なんてうるさいけど、知りません!! 私は忙しいので!

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...