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66話 胸騒ぎ
しおりを挟む魔石の鉱山が点在する、王都から離れた辺境の地で… 王立魔法騎士団の騎士たちは、勝つ見込みのない、防戦一方の戦いを強いられていた。
1人… また、1人と… イフリートは騎士たちを捕まえ、魔力を奪い殺してゆく。
目の前で仲間の身体がボロボロと崩れ去る姿を、騎士たちは為す術も無く、見つめている。
「オレが囮になる! その隙に全員この場から退避しろ! 1人でも多く生き残れ!!」
今すぐ王都に転移して、聖女の浄化を受けなければ、オレの命は長くはない! だが、この状況ではそんな余裕も無い! それに、あの性悪聖女が素直にオレの浄化をするとは思えない… クソッ…!!
騎士たちに命令を下したカルムの身体は、コカトリスの呪毒に侵され、腕から瘴気を放ち始めていた。
「お供します!! 副団長が1人で稼げる時間なんて、たかが知れていますから!」
隣に立つ部下が、水の盾を作りながらニヤリと笑った。
「悪いな、フロア…っ! お前には良い嫁を紹介してやりたかったのに残念だ!」
だが、フロアがいるなら心強い!
頼りになる部下の言葉を聞き、カルムは苦笑いを浮かべた。
「独身でなければ、副団長のお供なんてしませんよ!」
死を覚悟した2人が、軽口を言い合う背後で、大きな魔力が高まる気配を感じ… カルムたちはハッ… と息をのんだ。
イフリートの青い炎の猛攻で、背後を振り向き自分の目で確認することは出来なかったが… 騎士たちが良く知る、転移魔法陣を発動させる時に使う、魔石に蓄積された魔力の高まりだと気づく。
「…援軍か?!」
若い騎士の口から、期待の籠ったつぶやきがこぼれた。
「……」
いや、援軍にしては早すぎる!
若い騎士に言い返しはしなかったが… カルムは眉をひそめた。
不意に青炎の猛攻が止まり… 騎士たちへの興味を失ったようすのイフリートは、青い炎を撒き散らしながら飛び立った。
「何だ…? 助かった…のか…?」
焼け焦げた大地に片膝をつき… カルムはハァッ… ハァッ… とあらい息をはく。
自分たちが全滅するまで、イフリートの攻撃が止まることは無いだろうと考えていた騎士たちは… イフリートが唐突に、攻撃を中止したことが信じられなかった。
「…なぜ、イフリートは… 攻撃を止めたのだ…?!」
フロアやその場にいた騎士たちも、イフリートの猛攻が止んだとたん、崩れ落ちるように膝をつき、首を傾げる。
「イフリートは転移魔法陣の魔力に引かれて、そちらに向かったのではないか…?!」
真っ直ぐ転移魔法陣へ向かって、イフリートが飛び立ったように見えた! 恐らく間違いない!
カルムは嫌な胸騒ぎがした。
「誰が… 転移魔法陣を、発動させた…?」
ふわふわと灰が舞い散り、騎士たちに降りかかる。
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