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67話 おびえる者たち
しおりを挟むソレイユの元婚約者リベルテが、自分の部下たちを助けようと攻撃をしかけ、青い炎を撒き散らすイフリートを引き付けているすきに… 新人騎士、コラスィオン公爵家の次男ディアレとその従兄弟プーベルは、無様に悲鳴をあげながら、夢中でその場を逃げ出した。
リベルテと先輩騎士たちに『逃げるな! とどまれ!!』 と命令されても、ディアレとプーベルの足は止まらない。
「ひっ… 嫌だ、死にたくない!!」
「こ… こんなところにいられるか!」
魔法騎士団に入団して以来、ずっと自分たちの面倒を見ていたリベルテが、自分たちを助けようと盾になっていても……
2人はリベルテを見すて、悲鳴をあげながら逃げ出した。
騎士として、もっとも醜く不名誉で致命的な、重大な規律違反を犯しても、ディアレとプーベルは死に物狂いで逃げ出したのだ。
「お、おい… ディアレ! 逃げ… 逃げ出しても良いのか?! オ… オレたち、まずいことにならないか?!」
「逃げられる時に、逃げて何が悪いんだ?! こ… こんなところで、お前は死にたいのか?! オレは2年だけ騎士の経験を積めと、父上が言うから… 嫌々騎士団に入っただけなのに!」
コラスィオン公爵家の次男ディアレは、自分の逃亡を正当化しようと、必死で従姉のプーベルに言い訳をする。
「で… でも…」
「だったら、お前だけ戻れよプーベル! オレは元々、騎士になんてなりたくなかったのに! コラスィオン公爵家は騎士の家系だからと… 1度は騎士団に所属しなければ、領地を分けてくれないと父上が言うから、仕方なくこんなところまで来たんだ!」
「リベルテさんが… 死んだりしたら… どうする? オレたちのせいにされたり… しないか?!」
「バカか?! あいつはオレたちのために、大金を父上にもらっているから… オレたちのせいで死んでも、金に目がくらんだ自分のせいなんだよ! オレたちは雇い主なんだからな?! あいつのことなんて知るかよ!!」
足をもつれさせながら、息が切れ肺が裂けそうに痛んでも、2人は逃げる足を止めなかった。
「どうせ、あそこにいた騎士は全員イフリートに殺されるんだ! オレたちが逃げ出したことなんて、誰にもわからないさ!」
イフリートの前から離れただけで、ディアレの心に余裕が生まれ、次々と醜い言い訳が口から飛び出す。
「そ… そうだな! どうせ、みんな… 死ぬんだよな?! 『逃げるが勝ち』と言うし… あんな怪物! イフリートなんかと戦うほうが間違いなんだ! オレたちは正しい判断をしているだけだよな?!」
2人は騎士の証しである剣を、自分たちが失くしたことさえ、気づかず、必死で走った。
目の前にせまるイフリートに怯えて転び、地面を這いずり、逃げるのに夢中で邪魔な剣を落としたのではなく、2人は無意識ですてたのだ。
ハァッハァッ… とあらい息をはきながら、魔法陣が設置された場所までたどり着くと… 2人は迷わず、転移魔法陣に打ち込まれた、魔石がはめられた杭型の魔道具13本に、ぶるぶると震える手で一本ずつ触れ、魔法を発動させるための魔力を流す。
「急げ、プーベル!!」
「おう!」
騎士団と物資ごと転移させられるほどの、大型魔法のため… 発動から転移までに、魔道具の魔石から大量の魔力が放出され、魔法陣へ循環させるまで、普通の魔法よりも時間がかかる。
魔石に蓄積された良質な魔力が大量に放出され、綺麗な真円が最初に描かれ… 複雑な紋様を作る線と、びっしりとすきまをうめるように、魔法文字が魔道具から流れ出て、真円の中を泳ぐようにグルグルと動き、順番に定位置へと納まった。
「これで生きて王都へ帰れる…!」
2人は顔を見合せ、ホッ… とため息をつく。
だが………
熱風が魔法陣の周囲で吹きあれ、青い炎が狂ったように舞う。
ハッ… と息をのみ、2人が頭上を見あげると… 魔人イフリートが青い炎とともに下りて来きた。
転移魔法陣を作る、良質な大量の魔力にイフリートがひかれたのだ。
「ひいっ…!! 死ぬのは嫌だっ…!! 嫌だっ…!!」
「クソッ…! 早く発動しろ! 早く! 早くっ…!!」
イフリートから逃げ出した2人は、逃げきるために発動させた魔法陣で、自分たちをさらなる命の危機に、追い込むこととなった。
あとは魔法陣の中心に打ち込まれた、杭に触れれば王都まで一瞬で移動できる。
ディアレは魔法陣の中心へ飛び込み、腕を伸ばし杭に触れた。
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