すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される

みみぢあん

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70話 災厄の転移

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 石造りの騎士団本部が轟音ごうおんとともに破壊され、地下施設の天井もなくなり今は瓦礫がれきと化していた。

 もうもうと舞いあがる砂ぼこりがあたり一面をおおい、極端きょくたんに視界が悪かった。
 そんな中で天井がなくなった騎士団本部の地下を、曇り空からぼんやりとした光が差す。


「…何が起きたんだ?! 殿下! コンプレス殿! ご無事ですか?! 他の者たちは?!」
 危なかった! 一瞬でも防御の魔法が遅れていたら、命を落としていた!

「ああ、伯爵のたてのおかげで何とか生きている!」

「伯爵様、私も大丈夫です!」
 アンバレのすぐ近くにいた、王太子クリストフとコンプレスは返事をした。

「我々も無事です!」
 王太子の護衛騎士3人も無事である。

 少し離れた場所にいた、聖女と聖女の護衛騎士2人の生死は不明である。

 転移魔法の光で地下施設が満たされた瞬間、アンバレは異質な魔力を感知した。
 魔獣との戦いで積んだ経験から、アンバレはほとんど条件反射でぶあつい風のたてを作り、騎士団本部を破壊させた爆発的な魔力の高まりから、身を守ることが出来たのだ。


 ホッ…  とアンバレが胸をなでおろしたのもつかの間… もうもうと舞いあがる砂ぼこり中で、若い男たちの悲鳴が響く。

「ヒイィィィッ…!! 嫌だ、死にたくない!! 止めろバケモノ――ッ!!」

「助けてくれ! 誰か助けてくれぇぇ!! うわあぁぁぁぁぁ――――!!!」
 

 アンバレは悲鳴が聞こえる上方を見あげると… 暗く青い炎が無数にふってきた。


「こ… これは、まさかイフリートの炎なのか?!」
 ソレイユから聞いた、聖女エクレラージュを苦しめた、イフリートの記憶と同じだ! 

「何だって?! 伯爵、あれがイフリートなのか?!」

「殿下、さっきの転移魔法陣の発動で… イフリートが転移してきたようです!」

「イフリートが転移魔法を使っただと?! いくら強力な魔人でも、あいつに魔法が使えるほどの知能は無いはずだ! どうやって、そんなことを…?!」

「ここではせますぎて身動きがとれない! 全員、地下からから出てイフリートと距離を取れ――!」
 王都は厳重な結界で守られているというのに、イフリートが出現した。
 騎士団の全滅どころか、王国の滅亡を引きよせるほどの、危機的状況におちいってしまっている! それに今すぐ幻鳥げんちょうを飛ばして、ソレイユに王都から避難するよう指示しないと! …だが、幻鳥げんちょうを受け取れる魔力を持つ者が、伯爵邸にはいない! クソッ…! 彼女を死なせてしまうかも知れない!!

 号令をかけながら、アンバレの心臓がドクドクッ… と激しく拍動はくどうし、緊張で身体が強張こわばる。


「団長! あれは…?! 新人のディアレとプーベルが…!! あいつらだけ… 先に帰還きかんしたのか?!」
 少し離れた場所で、アンバレと同じく防御のたてを作り生きのびた、魔法騎士団の騎士たちが、ぼうぜんと指を差した。
 
 空に浮かび青い炎をき散らす魔人に首をつかまれ、若い騎士2人がもがき苦しみ悲鳴をあげている。

「先に帰還きかんしただと? …ああ、そう言うことか!!」
 イフリートが転移した謎が解けた!

「伯爵… それはつまり、新人が魔法陣を起動し、イフリートを引きつれて帰還きかんしたということか?」
 騎士たちとアンバレとの会話を聞いていた王太子も、すぐに謎の答えを解き、答えあわせをする。

「ええ、恐らくそうでしょう! 殿下、どちらにしても、今はぼんやりしていられませんよ?!」

「そうだな、伯爵! 生きびることができたら、その件について話し合おう!」


 自分たちの頭の上に浮かぶイフリートを注意深く観察しながら、アンバレたちは瓦礫がれきが散乱する地下から退避たいひする。




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