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81話 聖女の役め3 アンバレside
しおりを挟む聖女エクレラージュから聖なる力を受け入れたソレイユは、霊廟の石床に寝かされた意識不明のカルムのわきにひざまずく。
騎士服の胸元が大きく開かれ、カルムの肌にひろがる禍々しい呪毒紋が目立つ。
「本当に、なんてひどい呪毒なの?! 呪毒紋が全身に広がって瘴気が湯気のように身体から出ている… これでは地獄のような苦痛を、感じているのでしょうね? 生きているのが不思議なぐらいだわ…」
「ソレイユ、これほど酷い呪毒は1度で浄化を全部、終わらせることは難しいだろう… 無理はしないで、何度かに分けると良い」
カルムの命の危機を脱する程度に浄化を制限すれば、ソレイユの負担も少ないはずだ。
呪毒に侵されているのは、カルム1人ではないのだから。
オルドナンスの神殿で私を浄化した時のように、聖なる力を大量に使えば、ソレイユの身が持たない。
聖女ブリュイが浄化を行う時は、いつも数日に分けておこなっている。
アンバレはブリュイが浄化する姿を見て来た経験から、ソレイユに助言したのだ。
「とにかく、やってみます…」
呪毒紋で覆われたカルムの胸に手を置き… ソレイユは瞳を閉じて一度、深呼吸をする。
ソレイユの手から聖なる力の輝きがあふれ出し… 固唾をのんで見守る者たちの前で、オルドナンスの神殿で起こした奇跡を再現した。
「……なんと、素晴らしい!」
「聖女様… ソレイユさんは新たな聖女様だわ! ああ、女神様… 女神様……」
アンバレの隣に立つ王太子クリストフが、感嘆の声をあげ… 神官のジャンティエスは祈りを捧げるように両手を組み合わせ、カルムを浄化するソレイユに羨望の眼差しを向ける。
「話は聞いていましたが、まさかこれほどとは! 聖女ブリュイ様と比べても、引けを取らないどころか… 聖なる力の使い方は伯爵夫人の方が、上回っているように視えます」
神官長コンプレスは少し興奮気味で語った。
聖女エクレラージュの聖なる力を受け入れただけではなく、記憶とともにソレイユは力を使う技術まで、浄化魔法に反映させていた。
「……」
困難に見えたカルムの浄化が無事に終わり、聖なる力を止めると、ソレイユは閉じていた瞳を開きホッ… とため息をつく。
アンバレの心配をよそに、ソレイユは1度で軽々と浄化しきってしまった。
「伯爵夫人はすごいな! 制御する技術で、最小限に力をしぼり浄化を完成させてしまった! ここまで上手い魔力制御は、私は今まで見たことがない!」
王太子クリストフ自身も、高位の魔法士だからこそわかることである。
「殿下のおっしゃる通り、同じ称号を持つ聖女様でもここまで能力差が出るとは思いませんでした!」
大きくうなずきながら、過去にブリュイの浄化を見たことがある神官長コンプレスは、王太子に同調した。
聖なる力を持つ聖女でも、それぞれ産まれた時から大きな力を持つ者もいれば… 修練で力と技術を極めたりと、聖女の能力には大きな個人差がある。
修練嫌いの現役聖女ブリュイは、技術力や魔力など総合的に評価すると、『中の下』ぐらいの能力だが… 生前、修練に熱心だった聖女エクレラージュは、最終的に『上の上』まで能力を高めていたと当時の記録に残っている。
「……っ」
クソッ…! ダメだ… このままではソレイユは聖女に仕立てられ、王家に奪われてしまう! ソレイユは私の妻だ! 黙って愛する妻を渡すほど、私はお人好しではない! 今、何とかしないと取り返しがつかなくなる!
奇跡を目の当たりにして、その場にいる全員がソレイユに熱い視線を送っているなかで… アンバレだけが、ひしひしと危機感をおぼえていた。
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