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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
第一王子アラン
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──トントン──
「アラン殿下!本日から仕えさせていただく、侍女のナタリーがご挨拶に参りました!」
ギースがドアの前で声を上げるも、一向に返事がない。
(いらっしゃらないのかしら·····)
その時、ナタリーの視界が急に真っ暗になった。
「──きゃあっ!!」
誰かに目隠しをされている。ナタリーは、突然のことに驚き、声をあげてしまった。
「誰だと思う??当ててみて!!」
弾んだ子どものような声が聞こえてきて、ナタリーは混乱してしまった。
「えー······と、どなたでしょうか?もしや、アラン殿下でしょうか?」
ナタリーはそんなわけはないと思ったが、冗談で答えてみた。
ギースはため息をつき、目隠しをしている相手を諌めた。
「······殿下。おやめください。ナタリーは今日初めて殿下に会うんですよ。」
ナタリーの視界が開き、一人の青年がナタリーの目の前に顔を出した。満面の笑みで、ナタリーの顔を覗き込んでいる。
「君すごいね!!正解、僕がアランだよ。ナタリー?───僕と遊ぼ!」
ナタリーはアラン王子だと名乗る青年が、あまりにも子どものようだったので面食らってしまった。見た目は、アレクシア王女によく似て美形だ。幼い言動の割に、背が高く体格がいい。
「アラン殿下は昔からああなのだ。精神的に、子どものまま成長しない。今年で20の歳になられるのだがな。」
ナタリーはなんとなく王室の事情が分かってきた。本来であれば、第一王子のアランが王位を継ぐとして、最適な教育を受け権力を持つのだろうが、このような幼い性質を持っていた為、離宮に追いやられ、実質王女が我が物顔で振る舞っているのだろう。
「かくれんぼしよ!ギースが鬼ね!!ナタリー、一緒に隠れよう!!」
ナタリーはアランに手を引っ張られ、隠れ場所を見つける為に連れ出された。
後ろの方でギースが
「殿下!!私は鬼はやりませんよ!!戻ってきてください!」
と叫んでいるのが聞こえた。
ナタリーはアランに手を掴まれたまま、離宮の中を走り回り、回廊の一番端の部屋までやってきた。
「·····はぁはぁ──アラン殿下、ここまで来てしまったら、ギース様も到底見つけられません····!戻りましょう。」
ナタリーの訴えも虚しく、アランは隠れ場所を探さなきゃ!とばかりに目を輝かせていた。かくれんぼをやめる気はないのだろう。
「ここに、本宮につながる秘密の抜け道があるんだ。アレクシアも知らないよ!ナタリーにだけ、こっそり教えてあげるね。」
アランが、本棚の一冊の本を抜くと、何やら木の板が出現した。
アランがその木の板をガチャンと下にさげた途端、本棚が裏返って、地下室へ続く階段が出現した。
「──!!!」
ナタリーは驚いた。見てはいけないものを見てしまっている気がする。
「よーし!ナタリー付いてきて。冒険に出発だ!」
まさか、この秘密の地下を通って、王女達のいる王宮へ行こうとしているのか。ナタリーは真っ青になった。万が一見つかり、ナタリーがアラン王子をそそのかし、王宮へ忍び込んだと糾弾されれば命はないだろう。
「お願いです!お、おやめください!!アラン殿下──」
アランは、ナタリーの制止を全く聞かずに、ズンズンと奥へ進んでいった。
「アラン殿下!本日から仕えさせていただく、侍女のナタリーがご挨拶に参りました!」
ギースがドアの前で声を上げるも、一向に返事がない。
(いらっしゃらないのかしら·····)
その時、ナタリーの視界が急に真っ暗になった。
「──きゃあっ!!」
誰かに目隠しをされている。ナタリーは、突然のことに驚き、声をあげてしまった。
「誰だと思う??当ててみて!!」
弾んだ子どものような声が聞こえてきて、ナタリーは混乱してしまった。
「えー······と、どなたでしょうか?もしや、アラン殿下でしょうか?」
ナタリーはそんなわけはないと思ったが、冗談で答えてみた。
ギースはため息をつき、目隠しをしている相手を諌めた。
「······殿下。おやめください。ナタリーは今日初めて殿下に会うんですよ。」
ナタリーの視界が開き、一人の青年がナタリーの目の前に顔を出した。満面の笑みで、ナタリーの顔を覗き込んでいる。
「君すごいね!!正解、僕がアランだよ。ナタリー?───僕と遊ぼ!」
ナタリーはアラン王子だと名乗る青年が、あまりにも子どものようだったので面食らってしまった。見た目は、アレクシア王女によく似て美形だ。幼い言動の割に、背が高く体格がいい。
「アラン殿下は昔からああなのだ。精神的に、子どものまま成長しない。今年で20の歳になられるのだがな。」
ナタリーはなんとなく王室の事情が分かってきた。本来であれば、第一王子のアランが王位を継ぐとして、最適な教育を受け権力を持つのだろうが、このような幼い性質を持っていた為、離宮に追いやられ、実質王女が我が物顔で振る舞っているのだろう。
「かくれんぼしよ!ギースが鬼ね!!ナタリー、一緒に隠れよう!!」
ナタリーはアランに手を引っ張られ、隠れ場所を見つける為に連れ出された。
後ろの方でギースが
「殿下!!私は鬼はやりませんよ!!戻ってきてください!」
と叫んでいるのが聞こえた。
ナタリーはアランに手を掴まれたまま、離宮の中を走り回り、回廊の一番端の部屋までやってきた。
「·····はぁはぁ──アラン殿下、ここまで来てしまったら、ギース様も到底見つけられません····!戻りましょう。」
ナタリーの訴えも虚しく、アランは隠れ場所を探さなきゃ!とばかりに目を輝かせていた。かくれんぼをやめる気はないのだろう。
「ここに、本宮につながる秘密の抜け道があるんだ。アレクシアも知らないよ!ナタリーにだけ、こっそり教えてあげるね。」
アランが、本棚の一冊の本を抜くと、何やら木の板が出現した。
アランがその木の板をガチャンと下にさげた途端、本棚が裏返って、地下室へ続く階段が出現した。
「──!!!」
ナタリーは驚いた。見てはいけないものを見てしまっている気がする。
「よーし!ナタリー付いてきて。冒険に出発だ!」
まさか、この秘密の地下を通って、王女達のいる王宮へ行こうとしているのか。ナタリーは真っ青になった。万が一見つかり、ナタリーがアラン王子をそそのかし、王宮へ忍び込んだと糾弾されれば命はないだろう。
「お願いです!お、おやめください!!アラン殿下──」
アランは、ナタリーの制止を全く聞かずに、ズンズンと奥へ進んでいった。
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