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私と最愛の魔法使い~王女様、私の夫に惚れられても困ります!~
本宮潜入
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アランはナタリーの制止を全く聞く耳を持たなかった為、ナタリーは半分諦めた。
とにかく誰にも見つからずに、アラン王子を適当に遊びに飽きさせ、離宮へ戻ろうと決意した。
「アラン殿下、どこに隠れましょうか?私は、誰にも見つからなそうな、この地下通路がいいと思います!」
この地下から出なければ、誰にも見つかることはない。お願いだから、誘いに乗ってきてくれとナタリーは願った。
「ダメだよ!遊びにはスリルがなくちゃ面白くないだろ。いい場所を知ってるんだ。ナタリー付いてきて!!」
遊びにスリルを求めるとは、子どもらしからぬ発想だ······アランは地下から本宮へ続く階段を勢いよく駆け上がり、回廊を抜けると、突き当たりにあった大きな扉を開け、中に入った。大層豪華な作りの応接間だ。
「で、殿下····!!ここはさすがにマズイです!!誰かくるかも···あっ誰かきた!!──」
扉の外で、話し声が聞こえた。
ナタリーは、とっさにアランの袖を掴み、長テーブルの下に隠れた。テーブルクロスで隠れてはいるが、少しでも物音をたてれば気付かれてしまうだろう。
「ふふっナタリー楽しいね」
アランはニコニコしている。この状況を楽しんでいるようだ。
そして、扉が開く音がし、ぞろぞろと人が入ってきた。
「さぁ、皆さん座って。」
王女の声がした。
(よりにもよって王女だ······!!お願い!気付かないで───!)
ナタリーは、アランの口元を手で押さえ、少しの声も出ないようにした。
「まずは、お礼を言わなくちゃね。ウィル、先日はありがとう。私がお忍びでフィガロの町に視察に行っていた時に、過激派の連中に命を狙われたの。護衛の者ともはぐれ、崖を滑り落ちて気を失ってたところをあなたに助けてもらったわ。」
「·····いえ、助けたのは僕ではなく、ナタリーです。見つけたのも、家に連れて帰ろうと言ったのも彼女でした。」
「──あらそう、あの女が。でも、誰が助けたかはあまり重要じゃないのよ。私があなたと会えた、それが運命だったのよ。」
ウィルが王女を見ると、ウットリとした目でウィルを見つめていた。ウィルにはその表情が不気味に思えた。
「王女様は、僕を連れてきてどうしたいのですか?魔法使いを集めて、何をする気なんです?」
ウィルが聞くと、王女は嬉しそうに答えた。
「ウィルは知りたがりなのね。そういう、野心的で計算高いところも好きよ。」
「愚かな人間達が、魔法使いを目の敵にしているけど、私は違う。あなた達魔法使いは特別で崇高な存在よ。私達、王家にはどうしてもあなた達が必要なの。」
「───王宮で、我々魔法使いを管理し、利用するということですか?」
「·········少し違うわ。私は、王配(女王の夫)が欲しいのよ。そして、魔力を持った子を成す。」
ウィルは、王女の歪んだ野望に不快な表情を隠せなかった。
「あなた達のような、一部の使える魔法使い達は、役職を与え、私の駒となって動いてもらう。悪い話じゃないでしょ?今までのように、逃げ回る必要はない。王女専属の魔法使いなんて、誉れ高い存在よ。でも、魔法使いは多くは要らないわ。希少性があるから意味があるの。魔法使いを王家が独占し、他の魔法使いは排除する。」
「───排除するとは·····」
「言葉通りよ。処刑する。」
淡々としたその言葉を聞いた時、机の下にいたナタリーは心底この王女が怖くなってしまった。他の連れてこられた魔法使いはどうなったのだろうか。どこかに閉じ込められているか、もしかしたら既に······考えただけで、気分が悪くなった。
「私は、夫にするならウィルだと決めたの。そこの2人の中から選ぼうかと思ってたけど、クソ真面目な男と軽薄そうな男じゃ、私は気分が乗らなかった。そしたら、運命のようにあなたが現れたわ!見た瞬間、魔法使いだと分かった。結婚していると聞いた時は腹が立ったけど、あの女の存在なんて取るに足らないもの。」
「結婚式は1ヶ月後よ。民衆の前であなたを夫として紹介する。その前に、その他魔法使い達の処刑を行うわ。人民の魔法使いへの怒りを沈めなきゃね。名目上、悪い魔法使いを処刑し、良い魔法使いを王宮に残したということにすればいい。」
(あの女·······!!なんてひどいことを考えるの───!?)
ナタリーは怒りに震えた。
「いずれにせよ、あなた達の身の安全は保障するわ。他の魔法使いを助けたいなんて、馬鹿なことは考えないことね。ウィルの偽の奥さんの立ち位置も、あなたの振る舞い次第で決まると思いなさい。」
ナタリーを人質にとり、ウィルを脅しているのか。今のナタリーでは何の力にもなれない。『その場の感情で動くな』ウィルに言われたことを思い出し、ナタリーは涙目になりながら、唇を噛んだ。
とにかく誰にも見つからずに、アラン王子を適当に遊びに飽きさせ、離宮へ戻ろうと決意した。
「アラン殿下、どこに隠れましょうか?私は、誰にも見つからなそうな、この地下通路がいいと思います!」
この地下から出なければ、誰にも見つかることはない。お願いだから、誘いに乗ってきてくれとナタリーは願った。
「ダメだよ!遊びにはスリルがなくちゃ面白くないだろ。いい場所を知ってるんだ。ナタリー付いてきて!!」
遊びにスリルを求めるとは、子どもらしからぬ発想だ······アランは地下から本宮へ続く階段を勢いよく駆け上がり、回廊を抜けると、突き当たりにあった大きな扉を開け、中に入った。大層豪華な作りの応接間だ。
「で、殿下····!!ここはさすがにマズイです!!誰かくるかも···あっ誰かきた!!──」
扉の外で、話し声が聞こえた。
ナタリーは、とっさにアランの袖を掴み、長テーブルの下に隠れた。テーブルクロスで隠れてはいるが、少しでも物音をたてれば気付かれてしまうだろう。
「ふふっナタリー楽しいね」
アランはニコニコしている。この状況を楽しんでいるようだ。
そして、扉が開く音がし、ぞろぞろと人が入ってきた。
「さぁ、皆さん座って。」
王女の声がした。
(よりにもよって王女だ······!!お願い!気付かないで───!)
ナタリーは、アランの口元を手で押さえ、少しの声も出ないようにした。
「まずは、お礼を言わなくちゃね。ウィル、先日はありがとう。私がお忍びでフィガロの町に視察に行っていた時に、過激派の連中に命を狙われたの。護衛の者ともはぐれ、崖を滑り落ちて気を失ってたところをあなたに助けてもらったわ。」
「·····いえ、助けたのは僕ではなく、ナタリーです。見つけたのも、家に連れて帰ろうと言ったのも彼女でした。」
「──あらそう、あの女が。でも、誰が助けたかはあまり重要じゃないのよ。私があなたと会えた、それが運命だったのよ。」
ウィルが王女を見ると、ウットリとした目でウィルを見つめていた。ウィルにはその表情が不気味に思えた。
「王女様は、僕を連れてきてどうしたいのですか?魔法使いを集めて、何をする気なんです?」
ウィルが聞くと、王女は嬉しそうに答えた。
「ウィルは知りたがりなのね。そういう、野心的で計算高いところも好きよ。」
「愚かな人間達が、魔法使いを目の敵にしているけど、私は違う。あなた達魔法使いは特別で崇高な存在よ。私達、王家にはどうしてもあなた達が必要なの。」
「───王宮で、我々魔法使いを管理し、利用するということですか?」
「·········少し違うわ。私は、王配(女王の夫)が欲しいのよ。そして、魔力を持った子を成す。」
ウィルは、王女の歪んだ野望に不快な表情を隠せなかった。
「あなた達のような、一部の使える魔法使い達は、役職を与え、私の駒となって動いてもらう。悪い話じゃないでしょ?今までのように、逃げ回る必要はない。王女専属の魔法使いなんて、誉れ高い存在よ。でも、魔法使いは多くは要らないわ。希少性があるから意味があるの。魔法使いを王家が独占し、他の魔法使いは排除する。」
「───排除するとは·····」
「言葉通りよ。処刑する。」
淡々としたその言葉を聞いた時、机の下にいたナタリーは心底この王女が怖くなってしまった。他の連れてこられた魔法使いはどうなったのだろうか。どこかに閉じ込められているか、もしかしたら既に······考えただけで、気分が悪くなった。
「私は、夫にするならウィルだと決めたの。そこの2人の中から選ぼうかと思ってたけど、クソ真面目な男と軽薄そうな男じゃ、私は気分が乗らなかった。そしたら、運命のようにあなたが現れたわ!見た瞬間、魔法使いだと分かった。結婚していると聞いた時は腹が立ったけど、あの女の存在なんて取るに足らないもの。」
「結婚式は1ヶ月後よ。民衆の前であなたを夫として紹介する。その前に、その他魔法使い達の処刑を行うわ。人民の魔法使いへの怒りを沈めなきゃね。名目上、悪い魔法使いを処刑し、良い魔法使いを王宮に残したということにすればいい。」
(あの女·······!!なんてひどいことを考えるの───!?)
ナタリーは怒りに震えた。
「いずれにせよ、あなた達の身の安全は保障するわ。他の魔法使いを助けたいなんて、馬鹿なことは考えないことね。ウィルの偽の奥さんの立ち位置も、あなたの振る舞い次第で決まると思いなさい。」
ナタリーを人質にとり、ウィルを脅しているのか。今のナタリーでは何の力にもなれない。『その場の感情で動くな』ウィルに言われたことを思い出し、ナタリーは涙目になりながら、唇を噛んだ。
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