12 / 21
はるかからの電話
しおりを挟む
「もしもし、はるか?」
奈緒子が電話に出ると、拍子抜けするくらい、いつも通りのはるかの楽しそうな声が聞こえた。
「あれ?奈緒子!?久しぶり~!!弘人くんにかけたんだけど、奈緒子一緒にいたんだね。弘人くんに話があるんだけど、代わってくれる?」
奈緒子は、はるかの人をおちょくるような態度に、今まで堪えていたものが限界に達し、語気を強めて言い放った。
「あんた一体どういうつもり!?私や弘人と知り合いだってこと隠して、人の夫奪って!!頭おかしいんじゃない!?もう私達の前に現れないで!!消えてよ!!」
消えてという言葉が、奈緒子自身の胸にも突き刺さった。奈緒子は元々温厚な性格で、誰かに対してひどい言葉を使ったことがなかった。
よりにもよって、親友だったはるかに、この言葉を人生で初めて言ってしまった。
「·······奈緒子がそんなに怒ってるの、初めて見たわ。なんだか、私うれしい。」
「───は?」
「奈緒子、誰かに対して怒鳴ったりしたの始めてでしょ?それが私でうれしいの。」
奈緒子は、もうはるかのことを1ミリも理解できなかった。言葉が通じないみたいだ。
「とにかくね、本当に大事な話なのよ。奈緒子も聞いた方がいいかも。今どこにいる?私そこに行くから、2人で待ってて。」
◇
寅は、自室でお米を研いでいた。時計は20時を回ろうとしている。
いつもは、仕事が終わり次第、18時頃には部屋に帰ってくる奈緒子が、まだ帰っていないようだった。聞き耳を立てているわけではないが、古いアパートなので、玄関を開け閉めする音や生活音は聞こえるのだ。
この1ヶ月、奈緒子は誰かと飲みに行って遅くに帰ってきたり、残業して帰りが遅くなるということはほとんどなかった。
本当に聞き耳を立てているわけではないが、寅自身が、常に夕方には家にいる人間なので、奈緒子や、下の階の住人の生活パターンが分かってしまうのだ。
寅は、何だか奈緒子が心配になってきた。大人の既婚者の女性が20時に帰らないからといって、ただの隣の部屋に住む学生が心配するのは、まるでストーカーのようだが、寅はどうしても気になってしまった。
(······奈緒子さん、何かあったのかな。)
寅は、ストーカーっぽくならないよう、
『今日は残業ですか?』とメールしてみた。どうしてそんなことを聞くのかと言われたら、貸したい漫画があったとでも言えばいい。
すぐに奈緒子から返信があり、メールを見た寅は驚いてしまった。
『夫が職場で待ち伏せしてました。今から浮気相手と会います。修羅場かも。』
予想外に、穏やかではない事情だった為、寅は奈緒子の居場所を聞き、念のため近くで待っていることにした。余計なお世話かもしれないし、人の家庭のことに首を突っ込むべきではないが、あのはるかという強烈な女性に、優しい奈緒子が太刀打ちできるとは到底思えなかった。
奈緒子が、穏便に話し合いで解決できるなら、寅は黙って帰ればいい。
(流血沙汰にはなりませんように·····)
寅はそう祈りながら、目的地へ急いだ。
奈緒子が電話に出ると、拍子抜けするくらい、いつも通りのはるかの楽しそうな声が聞こえた。
「あれ?奈緒子!?久しぶり~!!弘人くんにかけたんだけど、奈緒子一緒にいたんだね。弘人くんに話があるんだけど、代わってくれる?」
奈緒子は、はるかの人をおちょくるような態度に、今まで堪えていたものが限界に達し、語気を強めて言い放った。
「あんた一体どういうつもり!?私や弘人と知り合いだってこと隠して、人の夫奪って!!頭おかしいんじゃない!?もう私達の前に現れないで!!消えてよ!!」
消えてという言葉が、奈緒子自身の胸にも突き刺さった。奈緒子は元々温厚な性格で、誰かに対してひどい言葉を使ったことがなかった。
よりにもよって、親友だったはるかに、この言葉を人生で初めて言ってしまった。
「·······奈緒子がそんなに怒ってるの、初めて見たわ。なんだか、私うれしい。」
「───は?」
「奈緒子、誰かに対して怒鳴ったりしたの始めてでしょ?それが私でうれしいの。」
奈緒子は、もうはるかのことを1ミリも理解できなかった。言葉が通じないみたいだ。
「とにかくね、本当に大事な話なのよ。奈緒子も聞いた方がいいかも。今どこにいる?私そこに行くから、2人で待ってて。」
◇
寅は、自室でお米を研いでいた。時計は20時を回ろうとしている。
いつもは、仕事が終わり次第、18時頃には部屋に帰ってくる奈緒子が、まだ帰っていないようだった。聞き耳を立てているわけではないが、古いアパートなので、玄関を開け閉めする音や生活音は聞こえるのだ。
この1ヶ月、奈緒子は誰かと飲みに行って遅くに帰ってきたり、残業して帰りが遅くなるということはほとんどなかった。
本当に聞き耳を立てているわけではないが、寅自身が、常に夕方には家にいる人間なので、奈緒子や、下の階の住人の生活パターンが分かってしまうのだ。
寅は、何だか奈緒子が心配になってきた。大人の既婚者の女性が20時に帰らないからといって、ただの隣の部屋に住む学生が心配するのは、まるでストーカーのようだが、寅はどうしても気になってしまった。
(······奈緒子さん、何かあったのかな。)
寅は、ストーカーっぽくならないよう、
『今日は残業ですか?』とメールしてみた。どうしてそんなことを聞くのかと言われたら、貸したい漫画があったとでも言えばいい。
すぐに奈緒子から返信があり、メールを見た寅は驚いてしまった。
『夫が職場で待ち伏せしてました。今から浮気相手と会います。修羅場かも。』
予想外に、穏やかではない事情だった為、寅は奈緒子の居場所を聞き、念のため近くで待っていることにした。余計なお世話かもしれないし、人の家庭のことに首を突っ込むべきではないが、あのはるかという強烈な女性に、優しい奈緒子が太刀打ちできるとは到底思えなかった。
奈緒子が、穏便に話し合いで解決できるなら、寅は黙って帰ればいい。
(流血沙汰にはなりませんように·····)
寅はそう祈りながら、目的地へ急いだ。
101
あなたにおすすめの小説
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる