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悪意
悪意
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「よんでくだしゃい」
「あらあら」
ニコニコの笑顔で頼まれれば駄目だとは言えず。お婆ちゃんは膝の上にこはるちゃんを座らせると【ママがママになったひ】というタイトルの絵本を読んで聞かせてあげた。
近くの椅子に座り微笑ましいふたりの姿を目を細め眺めていたお爺ちゃんが、あ、そういえば……なにかを思い出したみたいで、ポケットからスマホを取り出すと画面を操作しはじめた。
「お爺ちゃんどうしたの?」
「この間直売所に行ったとき、挙動不審な男性客がいたんだ。出入口に並べてあった花を見ていたんじゃなく、レジにいた熊倉さんを見ていたんじゃないかな。今だからはっきり断言出来る。40代後半白髪混じりの男だ。征之も一緒だったからもしかしたら儂より詳しく覚えているかも知れないと思ってな。老眼だからな、時間ばかりかかる。年は取りたくないな」
苦笑いを浮かべた。
「お爺ちゃん、帰りに本屋さんに寄ってもらってもいいかしら。こはるちゃんに絵本を買ってあげたいの」
「こはるちゃんは、おなかすいたーー」
「おぅ、分かった」
左手を挙げると、
「あともうちょいだけ待ってくれ」
苦戦しながらなんとか文字を入力すると送信ボタンを押した。
「お爺ちゃん、歯医者さんにも連れていかないと」
「近所に住んでいる遠山さんの娘が歯医者に勤務していて、事情を説明して、予約を入れてもらった。嘘を付かず、なんで歯医者に行かなきゃならないのか、心春ちゃんにちゃんと説明してやらんとな」
「お爺ちゃんいつもありがとう」
「いやぁ~~なんか照れるな」
困ったように頭を掻いた。
和真さんは今日が最後の出社日。有給消化で10日ほど会社を休んでいた。明日から須釜製作所で働くことになっている。新しい環境に慣れるまで大変だから、お昼くらいは美味しいお弁当を作ってあげなきゃ。そう思って昼食の前に立ち寄った本屋さんで棚に並ぶレシピ本やお弁当の本を眺めていたら、
「もし良かったら、お手伝いしましょうか?」
長身の若い男性に声を掛けられどきっとした。
「あらあら」
ニコニコの笑顔で頼まれれば駄目だとは言えず。お婆ちゃんは膝の上にこはるちゃんを座らせると【ママがママになったひ】というタイトルの絵本を読んで聞かせてあげた。
近くの椅子に座り微笑ましいふたりの姿を目を細め眺めていたお爺ちゃんが、あ、そういえば……なにかを思い出したみたいで、ポケットからスマホを取り出すと画面を操作しはじめた。
「お爺ちゃんどうしたの?」
「この間直売所に行ったとき、挙動不審な男性客がいたんだ。出入口に並べてあった花を見ていたんじゃなく、レジにいた熊倉さんを見ていたんじゃないかな。今だからはっきり断言出来る。40代後半白髪混じりの男だ。征之も一緒だったからもしかしたら儂より詳しく覚えているかも知れないと思ってな。老眼だからな、時間ばかりかかる。年は取りたくないな」
苦笑いを浮かべた。
「お爺ちゃん、帰りに本屋さんに寄ってもらってもいいかしら。こはるちゃんに絵本を買ってあげたいの」
「こはるちゃんは、おなかすいたーー」
「おぅ、分かった」
左手を挙げると、
「あともうちょいだけ待ってくれ」
苦戦しながらなんとか文字を入力すると送信ボタンを押した。
「お爺ちゃん、歯医者さんにも連れていかないと」
「近所に住んでいる遠山さんの娘が歯医者に勤務していて、事情を説明して、予約を入れてもらった。嘘を付かず、なんで歯医者に行かなきゃならないのか、心春ちゃんにちゃんと説明してやらんとな」
「お爺ちゃんいつもありがとう」
「いやぁ~~なんか照れるな」
困ったように頭を掻いた。
和真さんは今日が最後の出社日。有給消化で10日ほど会社を休んでいた。明日から須釜製作所で働くことになっている。新しい環境に慣れるまで大変だから、お昼くらいは美味しいお弁当を作ってあげなきゃ。そう思って昼食の前に立ち寄った本屋さんで棚に並ぶレシピ本やお弁当の本を眺めていたら、
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