サザン・ホスピタル byうるかみるく

くるみあるく

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Part1 My Boyhood

Chapter_08.繁華街の憂鬱(1)勉、バイトに明け暮れる

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At Nishihara Town, Okinawa; from April to June.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.

一九九二年春に、僕は見事に琉海大学医学部医学科へ現役合格を果たした。
長助師匠も東風平こちんだのおばさんも、自分のことのように喜んでくれた。入学式に一緒に参列したいとまでいわれ、僕はどう答えていいのか悩んだ。
運がいいのか悪いのか、入学式は多恵子の看護学校のそれと日程が重なったため、僕は一人で入学式に参加した。もともと琉海大学は本土出身者や外国からの留学生が占める割合が多い。入学式も一人の奴は多かった。
四月初旬にはサザン・ホスピタルでの小論文と面接を終えた。僕は奨学金貸与生として認められ、ありがたいことに、その日のうちに四月分として五万円が現金で支給された。

僕は早速、とある学習塾の物理講師のバイトを見つけた。医学科といっただけで即、採用がきまり、サザン・ホスピタルからの五万円はシャツとスラックスとネクタイ、そして交通費に化けた。
僕は働いた。欲しいものがたくさんあり、とにかく先立つものが必要だった。大学の授業とバイト先との往復で忙しかったが、ようやく普通の十八歳らしい生活を送れるようになった喜びでいっぱいだった。
この塾へは、あとから島ちゃんもやってきた。彼は工学部へ合格し数学の講師になった。島ちゃんはすでに自動車で通っていて、僕は自分が免許を取るまで彼の車でちゃっかり送迎してもらった。
塾のバイトはとても良かった。スケジュールが組みやすかったし、給料も弾んだ。生徒も皆お利巧で問題なかった。自動車教習所に通えて免許をとれたのも、がたついた眼鏡を新調できたのも、このバイトのおかげだ。

でも、僕の心には、島ちゃんが発したある一言が引っかかっていた。高校時代、地理の受験勉強で引っかかっていた僕に対して、彼はこう言ったのだ。
「お前、物事の背景ってのを考えてないだろ?」
そして、こう付け加えた。
「いいか上間、地理ってのは、今までの歴史の積み重ねってのがあって、その結果として存在してる現在形なわけよ。だから、歴史を勉強すれば、自然と現在もわかってくる。お前、医者になるんだろ? 俺、よくわからんけど、病気ってのは、なんかこう、体に悪い生活習慣みたいなものがずーっとあって、その結果、なるものなんじゃないの? 物事の上っ面ばかり見ないで、思考回路ちょっと変えたほうがいいと思うぜ」
このままでいいとはどうしても思えなくて、六月の末には医学科の同級生に物理の講師を引き継ぎ、塾を辞めた。

それから、いろいろなバイトに手を出した。交通量調査、ピザの宅配、クレジットカードの勧誘員、ダム工事の作業員。さすがに、工事現場の仕事は外科医として指先が使いものにならなくなるからって医学科の先輩たちから止められて、三日間しかやらなかったけど。
工事現場のあの独特の雰囲気は今でも忘れがたい。僕は背丈のわりにはあまり力がなく、コンクリートの詰まれた袋を落としては何度もおじさんたちにどやされた。医者は体力勝負というのをよく耳にしていたから、なんとか力をつけなくてはと心に決め、その日から腹筋と背筋を鍛え始めた。((2)へつづく)
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