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Part1 My Boyhood
Chapter_08.繁華街の憂鬱(2)初体験、のあと
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At Naha City, Okianwa; from July to August, 1992.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
**This episode is PG12**このエピソードはPG12です。
僕には、大学一年の夏休みに、どうしても一度は経験しておきたい仕事があった。那覇の繁華街・松山での水商売だ。
その頃の僕は、とにかく、出会いがほしかった。もちろん、女の子と遊びたかったってことは否定しないけど(医学科の同級生は対象外。第一、「遊べる」と思う?)、いろいろな世界の人々が交錯する夜の街で、現代社会が抱える闇とか、孤独とか、そういったものをこの目でしっかり見ておきたかったのだ。
医学科は二年次から怒涛のカリキュラムが組まれている。だから、やるなら一年次の今がチャンスだった。
僕は、松山のとある雑居ビルにある、クランチという店にいた。
最初はバーテンダーの見習いだったが、僕はほとんど酒が飲めなかった。未成年だからというだけでなく、本当に弱かった。ビールを、それもバドワイザーを一杯引っ掛けただけで真っ赤になった。
そんな僕を見て、店のママが、いっそのこと表に立ったらいいんじゃないか、と言い出した。
気がつくと僕は、トミーという名の新米ホストになっていた。
未成年だった僕は、身元がばれないよう、毎晩、左頬の大きな赤あざの上にドーランを塗りたくり、ブルーのカラーコンタクトを入れ、店のママが貸し出すアルマーニの背広を着けて出勤した。
最初は何をしていいかわからなかったから、先輩ホストの側でお酒とかを作って、店の女の子たちと一緒にソファに座っていた。女の子たちから話しかけられれば適当に答え、ひたすら話を聞いてあげた。そのうち、相槌の打ち方もうまくなり、指名もされるようにもなった。
そうだな、クランチでは二百万くらい稼いだかな。僕は年上受けするタイプらしい。指名してくれた中年のおばさん達が、ドンペリとか抜いてくれたし。僕は飲めなかったけど。
ホストの仕事を通して、女性の口説き方を学んだ。周りにならって、香水を使い始めた。ブルガリが出している有名なシトラス系のやつだ。爽やかな香りは女の子といい雰囲気になる小道具だった。彼女たちは男としゃべりたくて来ているわけだから、会話の糸口さえ見つけてつかむべきところをつかまえてあげれば、あとは楽勝だった。……というか、今振り返ると、ほとんどノリで女を落としていた。
間違いなく、僕は狂っていた。物心ついたときからの貧乏暮らしで、ずっと耐え抜いた分、弾けてしまっていたのだ。
そんな状態だったから、初体験なんてものはさっさとクリアしてしまった。
相手は同じ店に勤めていた新米の女性ホステス。たしか、二十歳をひとつかふたつ超えていた。
彼女が店を辞めると言い出したので、店の仲間数人で酒を飲んだ。二次会のボウリングの帰り、そのまま意気投合してラブホテル直行だったらしいが、酒に弱い僕はその辺りの記憶がまったくない。だから、行為そのものもほとんど覚えてない。相手が経験者だったし、こっちは酒の勢いで行ってしまったようなものだ。
とにかく、終わったあと、洗面所でブルーのカラーコンタクトを外していたら、そいつがぶーたれている様子が目に入った。僕の瞳が元から青いものと思い込んでいたらしい。アメリカの血を引くクォーターのせいか、僕は金髪で色白、おまけに少々童顔だった。その上、沖縄の人間にしてはめずらしく背が高めで、175㎝あった。つまり、彼女は僕の外見につられて、一晩の相手をしただけなのだ!
こいつは俺という人間をわかってない。
一気に酔いも浮ついた気持ちも醒めた僕は、テーブルに一万円札を叩きつけ、部屋を後にした。納得できない大人への第一歩を刻んでしまい、僕は一人で夜の海を眺め、泣き明かした。
次の相手からは、もう少し慎重になろうと心掛けたが、無駄だった。
悲しいかな、当時の僕は一種の麻疹みたいな状態だった。いままで遊ばなかった分、ちやほやされるとすぐに舞い上がってしまい、歯止めが利かずにそのまま行くところまで行ってしまうのだ。一瞬の快感が忘れられず、だれかれ構わずプレゼントをしまくり、ホテル代まで出していた。
あのころは湯水のように金があった。今では信じられない。
女の子たちはみんな勝手に外見だけで僕をハーフと判断し、あるいは医者の卵であることをどこからともなく聞きつけ、彼女というポジションに居つこうとした。そう、僕がどんなアイデンティティを持ち、どんな思いで日々をすごしているかなんて、彼女たちの知ったことじゃなかったのだ。
自分で撒いた種ではあったが、僕はひどい女性不信に陥った。そして、ある人との出会いがきっかけとなり、二ヵ月後にはきっちり、ホストを辞めたのだ。
……ということで、次章へTo be continued.
この先しばらくPG12解除します。
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
**This episode is PG12**このエピソードはPG12です。
僕には、大学一年の夏休みに、どうしても一度は経験しておきたい仕事があった。那覇の繁華街・松山での水商売だ。
その頃の僕は、とにかく、出会いがほしかった。もちろん、女の子と遊びたかったってことは否定しないけど(医学科の同級生は対象外。第一、「遊べる」と思う?)、いろいろな世界の人々が交錯する夜の街で、現代社会が抱える闇とか、孤独とか、そういったものをこの目でしっかり見ておきたかったのだ。
医学科は二年次から怒涛のカリキュラムが組まれている。だから、やるなら一年次の今がチャンスだった。
僕は、松山のとある雑居ビルにある、クランチという店にいた。
最初はバーテンダーの見習いだったが、僕はほとんど酒が飲めなかった。未成年だからというだけでなく、本当に弱かった。ビールを、それもバドワイザーを一杯引っ掛けただけで真っ赤になった。
そんな僕を見て、店のママが、いっそのこと表に立ったらいいんじゃないか、と言い出した。
気がつくと僕は、トミーという名の新米ホストになっていた。
未成年だった僕は、身元がばれないよう、毎晩、左頬の大きな赤あざの上にドーランを塗りたくり、ブルーのカラーコンタクトを入れ、店のママが貸し出すアルマーニの背広を着けて出勤した。
最初は何をしていいかわからなかったから、先輩ホストの側でお酒とかを作って、店の女の子たちと一緒にソファに座っていた。女の子たちから話しかけられれば適当に答え、ひたすら話を聞いてあげた。そのうち、相槌の打ち方もうまくなり、指名もされるようにもなった。
そうだな、クランチでは二百万くらい稼いだかな。僕は年上受けするタイプらしい。指名してくれた中年のおばさん達が、ドンペリとか抜いてくれたし。僕は飲めなかったけど。
ホストの仕事を通して、女性の口説き方を学んだ。周りにならって、香水を使い始めた。ブルガリが出している有名なシトラス系のやつだ。爽やかな香りは女の子といい雰囲気になる小道具だった。彼女たちは男としゃべりたくて来ているわけだから、会話の糸口さえ見つけてつかむべきところをつかまえてあげれば、あとは楽勝だった。……というか、今振り返ると、ほとんどノリで女を落としていた。
間違いなく、僕は狂っていた。物心ついたときからの貧乏暮らしで、ずっと耐え抜いた分、弾けてしまっていたのだ。
そんな状態だったから、初体験なんてものはさっさとクリアしてしまった。
相手は同じ店に勤めていた新米の女性ホステス。たしか、二十歳をひとつかふたつ超えていた。
彼女が店を辞めると言い出したので、店の仲間数人で酒を飲んだ。二次会のボウリングの帰り、そのまま意気投合してラブホテル直行だったらしいが、酒に弱い僕はその辺りの記憶がまったくない。だから、行為そのものもほとんど覚えてない。相手が経験者だったし、こっちは酒の勢いで行ってしまったようなものだ。
とにかく、終わったあと、洗面所でブルーのカラーコンタクトを外していたら、そいつがぶーたれている様子が目に入った。僕の瞳が元から青いものと思い込んでいたらしい。アメリカの血を引くクォーターのせいか、僕は金髪で色白、おまけに少々童顔だった。その上、沖縄の人間にしてはめずらしく背が高めで、175㎝あった。つまり、彼女は僕の外見につられて、一晩の相手をしただけなのだ!
こいつは俺という人間をわかってない。
一気に酔いも浮ついた気持ちも醒めた僕は、テーブルに一万円札を叩きつけ、部屋を後にした。納得できない大人への第一歩を刻んでしまい、僕は一人で夜の海を眺め、泣き明かした。
次の相手からは、もう少し慎重になろうと心掛けたが、無駄だった。
悲しいかな、当時の僕は一種の麻疹みたいな状態だった。いままで遊ばなかった分、ちやほやされるとすぐに舞い上がってしまい、歯止めが利かずにそのまま行くところまで行ってしまうのだ。一瞬の快感が忘れられず、だれかれ構わずプレゼントをしまくり、ホテル代まで出していた。
あのころは湯水のように金があった。今では信じられない。
女の子たちはみんな勝手に外見だけで僕をハーフと判断し、あるいは医者の卵であることをどこからともなく聞きつけ、彼女というポジションに居つこうとした。そう、僕がどんなアイデンティティを持ち、どんな思いで日々をすごしているかなんて、彼女たちの知ったことじゃなかったのだ。
自分で撒いた種ではあったが、僕はひどい女性不信に陥った。そして、ある人との出会いがきっかけとなり、二ヵ月後にはきっちり、ホストを辞めたのだ。
……ということで、次章へTo be continued.
この先しばらくPG12解除します。
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