サザン・ホスピタル byうるかみるく

くるみあるく

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Part3 The year of 2000

intermission~ある反省会(1)島袋(しまぶくろ)桂(けい)、呼び出される

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At Nishihara Town, 7:06PM JST, June 3, 2000.
This time, the narrator of this story is Kei Shimabukuro instead of Tsutomu Uema.
I dedicate this story to all of you in commemoration of 111th day anniversary of the birth of this story. (^o^)
このエピソードは2005年当時、物語執筆111日目記念として書かれたものです。島袋桂のモノローグでおとどけします。

どうも、島袋桂です。お久しぶり。
いや、ね、さっき珍しく上間からメールが来たんですよ。「今晩、空いてる?」って。奴はめったに人を誘ったりしないから、何かあったのかと思ってね。それに今日は土曜だし。仕事は適当にあがりました。
えっと、たしか西原の坂田交差点あたりとか言ってたよな? アパートに車置いて、バスで来たんですよ。あ、あった。ここだ。
「いらっしゃーい、何名様ですか?」
いや、たしかもう来ていると思うけど……あ、いたいた。

げっ! 上間が手酌でビール飲んでる! しかも、オリオンビールだ。たしか、こいつ、アルコールめちゃくちゃ弱くて、普段はバドワイザーじゃなかったっけ?
「よぉー、島ちゃんお久しぶり! 遅かったねー?」
既に顔中真っ赤だ。笑ってるけど、眼鏡の奥の目が据わりはじめている。……大丈夫か?
しかし彼はうろたえる俺を気にすることなく、店の奥へ向かって叫んだ。
「店員さーん、オリオンもう一本追加ねー!」
あ、あのね上間。お前、自分が大柄な金髪頭で、‘ぱっと見’は白人そっくりっての、忘れちゃいかんぜ。正直、今にも暴れだしそうに見えて、怖いよ。

彼は俺のグラスにさっさとビールを注いだ。
「はい、駆けつけ三杯! ほらほら!」
まあ、俺も酒は嫌いじゃない。注がれたビールをさっさと飲み干した。
「で、お前、今日は突然どうしたの?」
「ま、ま、ミックスナッツでも食べて」
俺は、新しいビール瓶を持ってきた店員にスクガラス豆腐とフーチャンプルーを頼んだ。その間に上間がビールを俺と自分のグラスに注いでいる。
「俺、アメリカ行くことになってねー」
「例の臨床技能試験って奴?」
「いや、研修で二年間、UCLAに」
上間はひたすら落花生の殻をむいて、中のピーナッツをポリポリ食べている。
「UCLA? それって、ロス?」
「そう、ロサンゼルス」
「お前、すげえなー!」

俺はスクガラスを箸でつまんで口へ持っていった。酒の肴はやっぱりスクガラスだ。塩辛とはまた違った食感と、濃厚な島豆腐との絶妙なハーモニーが口中に広がる。

「で、アメリカ行くのはうれしいんだけどさ」
今までの笑顔はどこへやら、上間はうなだれた。
「多恵子見てたら、急に不安になってさ」
なるほどね。それで、俺にご相談ってわけ?
「不安だったら、思い切って告白したら?」
「したよ、今日」

何? した、だと?
思わず俺は上間を見た。奴の茶色い目がトロンとしたまま宙をさまよっている。
「そしたら、あいつ、泣いた」
……はあ、そういうことですか。
「なあ島ちゃん、俺、早まったかなー」

わかった、こうなったら、飲ませるしかないよな。
「そう落ち込むなよ。言っちまったものは仕方がないでしょ?」
俺は空になった上間のグラスにビールを注いだ。
「ところでお前、何て言ったの?」
「何って、帰ってくるまで俺を待てるかって。そしたら、泣いた」
上間は注がれたビールをのどに流し込んだ。テーブルにグラスを置く音が少し荒っぽい。両手で金髪をぐしゃぐしゃに揉んでいる。
「これって、どうなんだろうなー。これで、もしうまくいかなかったら、俺、生きていけんよー!」
「上間、そ、そんな、頭を抱え込むなってば。落ち着け!」
俺は彼の肩を叩いた。必死で慰めの言葉を探した。
「断られたわけじゃないんでしょ? その場で怒ったとか、お前を投げたとかじゃないから、望みはあるんじゃないの?」

あえて上間には言わなかったが、客観的に判断しても脈はあるとみていい。多恵子の性格なら、断るときははっきり断るだろうし、気に食わなければ投げ飛ばすだろう。脈がなかったら、少なくとも泣いたりはしないはずだぜ? ((2)へつづく)
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