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Part3 The year of 2000
Chapter_09.白ヤギの遠吠え(2)白ヤギ、願い事をする
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At UCLA and Westwood, Los Angeles, California; November 2, 1:15PM PST, 2000.
= At Nishihara Town, Okinawa; November 3, 6:15AM JST, 2000.
At Westwood, Los Angeles, California; November 17, 8:26PM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
「あ、じゃ、これから朝ごはんだから」
多恵子の声で僕は我に帰った。
「ちゃんと食べろよ。貧血治せよ」
「うん、最近、チーズ食べるようにしてる。あ、また荷物送るよ。何か希望ある?」
「そうだな、もっと黒砂糖が欲しいな。すぐ舐めれるから。そうそう、スクガラスあるかな? 大家さんがアンチョビみたいにピザで焼きたいって」
「じゃ、入れてあげるね。ほかにも、いいものがあったら、入れるからね。またメールするから。切るよ?」
「おう、仕事、頑張れな!」
電話を切り、僕はベッドに横になった。多恵子さん、おやすみなさい。
十一月十七日の夕方。しし座流星群が、見えた。やっと。
その日shortだった僕は、家主さんに招かれ、ダイアナやアレクシスと一緒にアパートの屋上へ上がった。去年ほどではないそうだが、二年連続沖縄ではあいにくの天気だったから、僕はとてもうれしかった。
さあて、何を祈ろうかな。
昨年は、ECMFG (アメリカ医師国家資格)が欲しいと思っていた。そして、多恵子に気持ちが伝わるようにって思っていた。結局、全然見えなかったけど、ECMFGは自力で取ったし、多恵子ともずっと、ましな状況にはなった……というか、そういう状況に、した。電話ボックスの出来事はちょっと強引だったけど、ま、いいか。
さて、今年は……。いいかなー、いいのかなー。こんなムフフなお願いして。でも、しちゃおうっと。
僕は胸の前で手を組んで、目を閉じた。
いつか、近い将来、多恵子と一晩過ごせますように。
えー、願うだけなら、自由ですよね?
というか、全く期待なんか、できません。なにせ相手はお嬢さんです。むやみに手出しなんかできっこない。それに、多恵子はそういう面では非常に、非常に頑固者だから、多分結婚するまで何もないでしょう。
僕の周りでダイアナとアレクシスが騒いでいる。
“Tsutomu, what wish did you make on the star? Tell us!”
(勉、お星様にどんなお願い事したの? 教えて!)
No! I can't. It's a secret !
(言えないよ。秘密だから!)
まさか、あんなに早く願い事が叶うなんて、本当に予想外だった。それが良かったかどうか、正直振り返ってみてもよくわからない。とにかく、この時の僕は寂しくて寂しくて仕方がなかった。沖縄にいるときとは違い、誰一人知り合いのいないこの土地で、僕は孤独の意味を骨の髄から味わっていたのだ。
詳しくは改めてお話します。もうしばらくお待ち下さい。
次章へTo be continued.
= At Nishihara Town, Okinawa; November 3, 6:15AM JST, 2000.
At Westwood, Los Angeles, California; November 17, 8:26PM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
「あ、じゃ、これから朝ごはんだから」
多恵子の声で僕は我に帰った。
「ちゃんと食べろよ。貧血治せよ」
「うん、最近、チーズ食べるようにしてる。あ、また荷物送るよ。何か希望ある?」
「そうだな、もっと黒砂糖が欲しいな。すぐ舐めれるから。そうそう、スクガラスあるかな? 大家さんがアンチョビみたいにピザで焼きたいって」
「じゃ、入れてあげるね。ほかにも、いいものがあったら、入れるからね。またメールするから。切るよ?」
「おう、仕事、頑張れな!」
電話を切り、僕はベッドに横になった。多恵子さん、おやすみなさい。
十一月十七日の夕方。しし座流星群が、見えた。やっと。
その日shortだった僕は、家主さんに招かれ、ダイアナやアレクシスと一緒にアパートの屋上へ上がった。去年ほどではないそうだが、二年連続沖縄ではあいにくの天気だったから、僕はとてもうれしかった。
さあて、何を祈ろうかな。
昨年は、ECMFG (アメリカ医師国家資格)が欲しいと思っていた。そして、多恵子に気持ちが伝わるようにって思っていた。結局、全然見えなかったけど、ECMFGは自力で取ったし、多恵子ともずっと、ましな状況にはなった……というか、そういう状況に、した。電話ボックスの出来事はちょっと強引だったけど、ま、いいか。
さて、今年は……。いいかなー、いいのかなー。こんなムフフなお願いして。でも、しちゃおうっと。
僕は胸の前で手を組んで、目を閉じた。
いつか、近い将来、多恵子と一晩過ごせますように。
えー、願うだけなら、自由ですよね?
というか、全く期待なんか、できません。なにせ相手はお嬢さんです。むやみに手出しなんかできっこない。それに、多恵子はそういう面では非常に、非常に頑固者だから、多分結婚するまで何もないでしょう。
僕の周りでダイアナとアレクシスが騒いでいる。
“Tsutomu, what wish did you make on the star? Tell us!”
(勉、お星様にどんなお願い事したの? 教えて!)
No! I can't. It's a secret !
(言えないよ。秘密だから!)
まさか、あんなに早く願い事が叶うなんて、本当に予想外だった。それが良かったかどうか、正直振り返ってみてもよくわからない。とにかく、この時の僕は寂しくて寂しくて仕方がなかった。沖縄にいるときとは違い、誰一人知り合いのいないこの土地で、僕は孤独の意味を骨の髄から味わっていたのだ。
詳しくは改めてお話します。もうしばらくお待ち下さい。
次章へTo be continued.
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