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Part4 Starting Over
Chapter_02.行逢りば兄弟(いちゃりばちょーでー)(3)勉、スピーチをする
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At UCLA, Westwood, Los Angeles, California; February 13, 2001.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
有志のスタッフたちが集い、ERの一室で簡単な送別会を開いてくれた。アメリカの慣習で僕は主賓としてスピーチをすることにした。僕は車椅子に座ったまま、語りかけた。
Today I'm grad to have a chance to make my speech.
(本日、スピーチできる機会に恵まれたことをうれしく思います)
Everybody knows I'm from Okinawa, so I'd like to introduce a famous Okinawan proverb.
(皆さんは僕が沖縄出身ということをご存知でいらっしゃるので、今日は沖縄の有名なことわざをご紹介します)
僕はそう言って、車椅子を白板へ移動し、黒いペンで大きくこう書いた。
行逢りば兄弟
「いちゃりば、ちょーでー」
僕が発音すると、台湾系の何人かのスタッフがくすくす笑って頷いた。文字から意味が通じたらしい。
It means once we have met each other, we become brother and sister.
(一度出逢えば、その時から僕らは兄弟姉妹になるという意味です)
僕は白板に書いた言葉を指しながら、お互いを指し示した。
I have a great time in Los Angeles, UCLA Medical Center.
(僕は素晴らしい時間をここロサンゼルスの、UCLAメディカルセンターで過ごしました)
It was only a half-year, but I've changed since I was arrived there.
(たった半年でしたが、来たときに比べると、僕は変わりました。)
Do you know what I've changed and I've been changing ?
(僕のどこが変わって、どこが変わりつつあるか、お解かりですか?)
急に、場がシーンとなった。すると、アルが叫んだ。
“Tom, how was your Christmas present?”
(トム、クリスマスプレゼントはどうした?)
とたんに、皆が一斉に笑い出した。僕もニッコリした。悲劇をジョークに昇華できる、これが、アメリカの人々が持つ強さであり、優しさだ。
Yes. Last Christmas eve, I had a serious accident in which one almost lost my life.
(ええ。昨年のクリスマス・イブ、僕は命を失ってもおかしくない事故に遭いました)
Everybody knows I have a broken ankle, and I can't dispense with a walking stick for the rest of my life.
(ご存知の通り、僕の足首は壊れ、一生、杖なしでは歩けない体になりました)
僕は自分の右足首を指しながら、顔色を変えずに続けた。
But, to be honest, I've never feel I'm miserable.
(ですが、正直なところ、みじめだなんて思ったことはありません)
In fact, I have matured since then.
(実際、僕はこの事故で成長したのです)
僕は胸を張って一人一人の顔を見回した。どうしても伝えたい言葉があった。
When I met all of you first time, I was so worried about I couldn't have good communication with you.
(僕が皆さんと最初に顔を合わせたとき、みなさんときちんとコミュニケーションが取れなかったらどうしようかと、随分心配しました)
I was a kind of hardheaded parson, also I was such a doubting Thomas, and I'm still shy.
(僕は一種の頑固者でしたし、主イエス・キリストの復活をその目で見るまで信じなかった使徒トマスのように疑い深かったですし、今なお僕は、はにかみ屋です)
But, I've changed.
(でも、僕は変わりました)
Specifically, I could be changed because all of you!
(厳密に言えば、皆さんのお陰で、変われたのです!)
“Woo!”
(おお!)
周りから、地鳴りのような、静かな喚声が上がった。僕は続けた。
You've been a great help for me, so I became much more open than I had been before.
(皆さんが大いに僕を励ましてくれたから、僕は以前より開放的になりました)
How can I ever thank you.
(どうお礼を言ったらいいものか)
僕は一呼吸置いて、皆の顔を注視した。あるスタッフは僕に微笑みかけ、あるスタッフは親指を立てて僕に示した。そしてまた、あるスタッフは、持っていたカップをほんの少し動かし、僕に小さな合図を送った。僕は再び白板に書いた文字を指し示した。
Now I get this proverb not only knowledge but also my feeling.
(今、僕はこのことわざを、知識としてだけでなく、自分のものとして実感できます)
そして僕は深呼吸して、一息でしゃべった。
If you see me somewhere or someplace, don't hesitant to talk to me.
(もしも、どこかで僕を見掛けたら、遠慮せずに話しかけてください)
I never say good-bye because now we are brother and sister.
(さよなら、なんて言いません。だって、僕らはもう兄弟姉妹なのですから)
Thank you very much. See you again !
(どうもありがとう。じゃ、また!)
温かい拍手が鳴り響き、なんと指笛まで聞こえた。皆が僕に握手を求め、僕の肩を叩いた。僕らはメールアドレスを交換し、しばしの別れを惜しんだ。((4)へつづく)
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
有志のスタッフたちが集い、ERの一室で簡単な送別会を開いてくれた。アメリカの慣習で僕は主賓としてスピーチをすることにした。僕は車椅子に座ったまま、語りかけた。
Today I'm grad to have a chance to make my speech.
(本日、スピーチできる機会に恵まれたことをうれしく思います)
Everybody knows I'm from Okinawa, so I'd like to introduce a famous Okinawan proverb.
(皆さんは僕が沖縄出身ということをご存知でいらっしゃるので、今日は沖縄の有名なことわざをご紹介します)
僕はそう言って、車椅子を白板へ移動し、黒いペンで大きくこう書いた。
行逢りば兄弟
「いちゃりば、ちょーでー」
僕が発音すると、台湾系の何人かのスタッフがくすくす笑って頷いた。文字から意味が通じたらしい。
It means once we have met each other, we become brother and sister.
(一度出逢えば、その時から僕らは兄弟姉妹になるという意味です)
僕は白板に書いた言葉を指しながら、お互いを指し示した。
I have a great time in Los Angeles, UCLA Medical Center.
(僕は素晴らしい時間をここロサンゼルスの、UCLAメディカルセンターで過ごしました)
It was only a half-year, but I've changed since I was arrived there.
(たった半年でしたが、来たときに比べると、僕は変わりました。)
Do you know what I've changed and I've been changing ?
(僕のどこが変わって、どこが変わりつつあるか、お解かりですか?)
急に、場がシーンとなった。すると、アルが叫んだ。
“Tom, how was your Christmas present?”
(トム、クリスマスプレゼントはどうした?)
とたんに、皆が一斉に笑い出した。僕もニッコリした。悲劇をジョークに昇華できる、これが、アメリカの人々が持つ強さであり、優しさだ。
Yes. Last Christmas eve, I had a serious accident in which one almost lost my life.
(ええ。昨年のクリスマス・イブ、僕は命を失ってもおかしくない事故に遭いました)
Everybody knows I have a broken ankle, and I can't dispense with a walking stick for the rest of my life.
(ご存知の通り、僕の足首は壊れ、一生、杖なしでは歩けない体になりました)
僕は自分の右足首を指しながら、顔色を変えずに続けた。
But, to be honest, I've never feel I'm miserable.
(ですが、正直なところ、みじめだなんて思ったことはありません)
In fact, I have matured since then.
(実際、僕はこの事故で成長したのです)
僕は胸を張って一人一人の顔を見回した。どうしても伝えたい言葉があった。
When I met all of you first time, I was so worried about I couldn't have good communication with you.
(僕が皆さんと最初に顔を合わせたとき、みなさんときちんとコミュニケーションが取れなかったらどうしようかと、随分心配しました)
I was a kind of hardheaded parson, also I was such a doubting Thomas, and I'm still shy.
(僕は一種の頑固者でしたし、主イエス・キリストの復活をその目で見るまで信じなかった使徒トマスのように疑い深かったですし、今なお僕は、はにかみ屋です)
But, I've changed.
(でも、僕は変わりました)
Specifically, I could be changed because all of you!
(厳密に言えば、皆さんのお陰で、変われたのです!)
“Woo!”
(おお!)
周りから、地鳴りのような、静かな喚声が上がった。僕は続けた。
You've been a great help for me, so I became much more open than I had been before.
(皆さんが大いに僕を励ましてくれたから、僕は以前より開放的になりました)
How can I ever thank you.
(どうお礼を言ったらいいものか)
僕は一呼吸置いて、皆の顔を注視した。あるスタッフは僕に微笑みかけ、あるスタッフは親指を立てて僕に示した。そしてまた、あるスタッフは、持っていたカップをほんの少し動かし、僕に小さな合図を送った。僕は再び白板に書いた文字を指し示した。
Now I get this proverb not only knowledge but also my feeling.
(今、僕はこのことわざを、知識としてだけでなく、自分のものとして実感できます)
そして僕は深呼吸して、一息でしゃべった。
If you see me somewhere or someplace, don't hesitant to talk to me.
(もしも、どこかで僕を見掛けたら、遠慮せずに話しかけてください)
I never say good-bye because now we are brother and sister.
(さよなら、なんて言いません。だって、僕らはもう兄弟姉妹なのですから)
Thank you very much. See you again !
(どうもありがとう。じゃ、また!)
温かい拍手が鳴り響き、なんと指笛まで聞こえた。皆が僕に握手を求め、僕の肩を叩いた。僕らはメールアドレスを交換し、しばしの別れを惜しんだ。((4)へつづく)
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