私の光

イチゴ牛乳

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『えー、明日から夏休みですがくれぐれも羽目を外さないように気を付けましょう。なおー……』
マイク越しに聞こえる校長の長い挨拶に小さくため息を吐く。
こんな暑いのに全校生徒を体育館に集めるって……。
軽くサウナみたいだ。
周りの生徒も暑そうに手で扇いでいる。
せめて冷房でも付ければいいのに。
金の出し惜しみをして生徒に何か在ったらどう責任をとるつもりなのだろうか。
またため息を吐き、瞼を閉じた。
最近は如月君と関わっているせいか視線が痛い。
男子は好奇心、女子は妬みや嫉妬。
別に、私から関わりに行ったんじゃないのに。
でも正直、如月君と一緒にいることが楽しい。
笑った顔、照れた顔、困った顔、…私のために怒った顔。
たくさんの"表情"を私に見せてくれた。
それが嬉しくて嬉しくて仕方がない。
なんか、悔しいから本人には絶対に言わないけどね。
終業式も終わり教室に戻っていると、如月君を見掛けた。
その隣には友達らしき男の子。
うん、イケメンはイケメンを呼ぶって本当だなぁ。
その友達もイケメンだ。
うーん、なんて言えば良いんだろう。
如月君は可愛い感じのイケメンでその友達は元気な感じのイケメン?
その周りの女の子達は2人に視線を送っている。
例えるなら目がハート状態。
1年の女の子だけでなく2年、3年も。
こういうのを目の当たりにすると嫌でも実感するし、思うところがある。
私みたいなブスが如月君に関わっていてもいいのか。
何より私はー……。


夏休みに入って数日後の夜、私は繁華街に来ていた。
シンプルな黒のワンピースを着て。
実はこのワンピース、今から行く知り合いに買って貰ったものなのだ。
基本、黒が好きだからこれは気に入っている。
似合う似合わないは別だけど。
入り込んだ裏路地を通り目当てのbarに辿り着く。
veriteという名のbar。
veriteとはフランス語で真実という意味だ。
此処は裏世界では有名な情報屋がいるbarなのだ。
そしてその情報屋はとは此処のbarであるマスター。
普段はbarで仕事をしているが"仕事"が入ると裏の顔になる。
扉を開けるとチリンチリンッ、と小さな鈴の音が鳴る。
どんなにゆっくり開けたとしても音が鳴るからバレないで入ることは出来ないだろう。
「いらっしゃい…ってお姫ちゃんか。久しぶり、元気だった?」
フワリと笑うマスターに頷く。
「久しぶり、マスター。あの子達、もう来てる?」
「ああ、随分と前から来てるよ。上にいるから行っといで」
「ありがとう。お仕事頑張ってね」
そう言ってホールの奥にある階段を昇ると1番手前にある扉を開け中に入るとソファーに座る3人の姿……。
「あれ?茜ちゃんはいないの?」
キョロキョロと、靴を脱ぎながら室内を見回すがそれらしき姿はどこにも見えない。
「ああ、茜ならさっき女のところに行ったよ?」
葵のその言葉にピシリッと固まった。
お、女のところ…?
「遅いって言って出て行ったよねぇ」
クスクスと笑う蓮にまたまたピシリッと固まる。
「今頃、女とシてんじゃねぇ?」
意地悪い笑みを向ける悠に確信した。
「嘘でしょ?だって茜ちゃん……不能だし」
「誰が不能だ!!!」
バンッと勢い良く音を立てて扉を開けた人物に口角が上がる。
……やっと全員揃った。
「え、茜ちゃん女嫌いでしょ?」
「女嫌いだからって勃たない訳じゃないからな?!」
「え、じゃあ、男に……」
「違うから!!て言うかそういう趣味はないからな?!!」
顔を真っ青にして叫ぶ茜に、全員で笑い合う。
「改めて、久しぶりだね。葵、茜、悠、蓮。」
そう言うと4人は私に笑い返してくれた。
……茜ちゃんは拗ねてたけど。
黒い髪の毛先を"青く"染めている葵。
同じく、黒い髪の毛先を"赤く"染めている茜。
茶髪に染めている悠。
藍色に染めている蓮。
この4人がいる此処の空間は私にとってとても暖かい。
私を導いてくれる"光"。
暫くの間、他愛ない話をしているとホールから連絡が来た。
『お姫ちゃんの知り合いって名乗る男の子がホールにいるんだけど確認してくれる?』
……私の知り合い?
ガラス越しにホールを見下ろすと見覚えのある姿を発見した。
え、なんで?
慌ててマスターに連絡し上に連れて来てもらうようにお願いした。
少しすると、小さく切ったフルーツと"知り合い"を連れて来てくれたマスターが部屋に入って来た。
「お姫ちゃん、この子知り合いなの?」
「…学校の後輩の如月奏君」
「……学校の?」
怪訝そうな視線を送って来るマスターを無視して如月君を見た。
「如月君、なんで此処にいるの?」
「……先輩が此処に入って行くところを見たんです。中々出て来ないから心配で…」
目線を合わせようとしない如月君に小さくため息を吐いた。
すると、それが聞こえていたのかビクッと肩が揺れた。
罪悪感はあるのか…。
「帰れ」
「っ、」
「って言いたいところだけどこの時間帯のこの辺りは危ないからねぇ。遅くなっても大丈夫なら此処にいてもいいよ?」
「え?」
「っ、遥!?」
私の答えに嫌そうに顔を歪める茜。
いや、茜だけじゃない。
この場にいる私と如月君以外は皆、嫌そうだった。
まぁ、想定内だけど。
その反対に如月君は唖然としていた。
「何?今此処で如月君を帰したとして"何か"あったら夢見悪いでしょ」
そう言うと言葉に詰まったように視線を逸らした。
茜だけは納得してないけど。
「ふざけんな!!得体も知れないヤツをなんで此処に置かなきゃいけないんだよ?!」
「得体が知れないなら調べればいい。それとも、茜ちゃんが送る?」
そう言うと茜ちゃんは私をひと睨みして隣の仮眠室に入って行った。
部屋には気まずい空気が流れる。
「あ、あの…」
「ああ、放ったらかしにしてごめんね?取り敢えずそこに座りなよ」
私が促した場所は茜ちゃんがさっきまで座っていた場所。
如月君はそれに戸惑いながらゆっくりと座った。
「マスターごめんね?後、フルーツありがとう」
マスターを見ると苦笑いしていた。
「"はるちゃん"、あんまり茜を虐めないであげなよ?」
「……大丈夫だよ、"圭志"。分かってるから」
私の答えに安心したようにマスターは部屋を出て行った。
「さて、私はちょっと茜ちゃんのところに行って来るから如月君のことよろしくね」
そう言うと私はさっさと仮眠室に入った。
あっちは蓮がいるし大丈夫だろう。
中に入ると案の定、茜が部屋をベットの上で布団に包まって拗ねていた。
近寄っても顔を上げてくれる気配がないからベットにゆっくりと座った。
するとギシリとスプリングが鳴る。
「茜ちゃん、勝手に決めてごめんね?……如月君ってね、学校の人で唯一"私"を見てくれた人なの。卒業までずっと1人なんだろうな、と思いながら過ごして来たから、今が凄く新鮮でね?学校を初めて"楽しい"って思ったんだー」
クスクスと笑うと茜ちゃんは少しだけ顔を出した。
「…何が言いたい訳」
「分かってるくせに。…そんな人にもしも"何か"あったら悲しいって思ったの」
嘲笑すると茜ちゃんは布団から身体を全部出し、私を壊れモノを扱うように優しく優しく抱きしめてくれた。
茜ちゃんの肩に顔を埋めると頭を優しく撫でてくれる。
「茜、如月君を此処に置いていい?」
ギュッと茜の服を握るとその手を握り締めてくれた。
「今日だけなら」
「…ありがと」
「………なんで"如月君"って呼んでんの?」
唐突に茜は聞いてきた。
なんで、って。
「私の性質を知れば如月君も離れて行くだろうし…。それを知っても離れて行かないのって茜達くらいなんだよ?……世間ではこれを異常だって言うし、浮気だって、セフレだって言う。だから、離れて行った時のための予防線」
そう言って笑うと茜は自分が傷付いたように顔を歪めた。
ああ、やっぱり茜は私の光だ。
茜だけじゃない。
私のことで自分が傷付いたようにするあの子達が凄く大切で凄く愛しい。
だから、そんな顔しないでよ。
如月君が離れて行ったら確かに傷付くだろうけど、皆んなが居れば私は立ち直れるんだよ?
「ね、茜。…キスして?」
茜を見上げると顔を真っ赤に染めて私を見つめていた。
それに思わずクスリと笑うと、茜は口角を上げた。
あ、これはヤバい。
そう思った時はもう遅くて…。
瞳をギラつかせた茜は私の唇を荒々しく塞いだ。
「ん、…んぅっ」
息を継げない激しさに生理的な涙が溢れていく。
口内を犯す茜の舌に頭が真っ白になって行く。
ああ、気持ちいい。
もっともっと茜が欲しくて堪らない。
茜にリードされていたはずの私はいつの間にか、スイッチが入っていた。
油断している茜の隙をついて私が上に乗る。
「っ、は、遥っ!…んあ、」
先程茜がやっていたように荒々しく唇を塞ぎ息継ぎの暇を与えずに舌で口内を犯す。
茜の切ない喘ぎ声に反応するように私の手は茜の身体を弄る。
「茜、気持ちいい??どうしたい?」
フフッと笑うと茜は瞳を潤ませた。
ああ、可愛いなぁ。
愛しくて愛しくて仕方がない。
快楽に堕ちる茜の表情をもっともっと見たくなる。

ねぇ、こんな私を茜は嫌う?
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