異世界転生

イチゴ牛乳

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4話 は?何言ってんの?

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「「すみませんでした!!」」
土下座する男2人。
そのうちの1人は大の男だ。
そして、もう1人は紛う事なき王子様だ。
先程の一件から1時間程の時間が過ぎていた。
既に今は服を着ている。
当然だが。
スグリは今もなお、不機嫌だ。
人ひとり殺せそうな雰囲気に2人は怯えている。
それでいいのか、護衛隊長。
「スグリー、いい加減、機嫌直したらー?」
「ハナが良くても俺が良くない」
「何で?」
「……ハナの裸を見られた。」
「別に減るもんじゃないし……」
「俺が嫌だ。ハナの裸を見れるのも触れられるのも俺だけがいい」
駄々っ子のように言うスグリにキュンと来た。
あーもう、何この子!
可愛いすぎない?!
マジ天使!!!
身悶えていると身体が浮いた。
いや、持ち上げられた。
「?どうしたの?」
ムッとしているスグリの頬を撫でる。
「………なんか反応してよ」
「え、ごめん。スグリの反応に身悶えてた」
正直に答えたら、瞼にキスを落として来た。
「え、あのお2人方、俺たちいるんスけど……」
焦った声を出すリンヤを見る。
2人は顔を真っ赤にさせていた。
「…アハ、いい事思いついちゃった。そこで2人は私たちのイチャイチャを見てること。拒否権はないからね?」
フフッと笑うと抱っこされたままキスを始める。
「(で、デジャブ!!)」
クチュクチュとわざと厭らしい音を出し反応を確認すると2人は茹でダコ状態だった。
リンヤはともかく、…護衛隊長、意外とピュア?
そう思えざるを得ない反応に私のドS魂に火が点いた。
「んぅ、は、なぁ!!」
スグリの鼻から出る甘い声を聞きながらもっと激しくする。
普通は攻めるのが逆だろうが、私たちはこれが通常だ。
フフッ、スグリ、見られて興奮しているのかなぁ?
それなら、これからは視姦プレイとかも有りだねぇ。
ジュッとスグリの舌を吸うとビクンッとイッた。
「はっ、はっ…」
軽く息切れするスグリ。
なのに抱っこしたままって凄いよね。
イッたら力抜けるのに。
スグリをベッドに座らせ後ろを振り返った。
「………大丈夫?」
護衛隊長は鼻血を出して、ぶっ倒れていた。
かろうじてリンヤは生きてる。
「っ、ハナさんっ!ホッントに意地悪っスね?!俺、お2人の見てて勃ったんスが!?」
そう言われて見てみると確かにリンヤの股間部分が膨らんでいた。
「言われて見る女がいますか!!」
「ココにいるじゃん」
「開き直らないでくださいっス!!」
だってスグリので見慣れてるし。
今更恥ずかしがってもねえ。
「ところでなんでいんの?」
「この状態で?!そしてメッチャ今更っスね!」
今思ったんだもん。
しょうがないじゃん?
スグリとリンヤに護衛隊長をベッドに寝かせて貰って、聞く体制に入る。
「………一応聞きますがその体制で聞くんスか」
「うん」
その体制、とはスグリがソファに座った状態で私が膝に乗っていること。
リンヤはただ、溜め息を吐き、話し出した。
「実は父上……陛下にお2人のことを出してしまってその……あ、会いたいと……」
「は?何言ってんの?」
真顔でそう言うとリンヤはビクリと怯え出した。
「う、あっ…、で、ですから、一緒に来て欲しいなぁ、って……」
視線を逸らしながら口を開くリンヤ。
「イヤ。もう旅立ってましたとでも言えばいいでしょ」
「ゔっ、そ、それが………この宿屋の食堂にお忍びで既に来てるんっス」
「はぁ?」
食堂に?
冗談でしょ。
陛下自ら出向くなんて。
ウダウダ言っていてもしょうがないので、仕方が無く食堂に出向いた。
「あそこの角にいるのが陛下っス」
そう言って指された場所には1人の男と護衛らしき人間が数人。
多分、外にも護衛がいるんだろう。
………うん?
ちょっと待て。
さっきのウダウダがあって軽く1時間くらいは待たせてるんじゃ…。
さすがの私も顔から血の気が引いた。
それってマズイんじゃない?
リンヤの案内に渋々着いて行く。
「へい、父上、遅くなって申し訳ありませんでした」
「いや、いい。そちらがお前の言っていたお2方か?」
「はい。紹介します、こちらの女性がハナさんです。そしてこちらのハナさんを守るようにしている男性がスグリさんです」
「ふむ、そうか」
こちらに視線を向けた陛下に、頭を下げる。
「王子に紹介されました、ハナです。
参上するのが遅くなり申し訳ありませんでした」
「(あの、ハナさんが、礼儀をとってる!?)」
「頭を上げよ。其方にも事情があるだろうし、急に訪ねたこちらにも非がある。突然申し訳なかったな」
頭を下げる陛下に申し訳なる。
事情、と言えば事情になるんだろうが私たちはただイチャイチャしてただけなんだよなぁ………。
それにしても、この陛下はきちんとしているんだ。
前世では王が一番偉いのだって威張ってるのが殆どだったから、虚を突かれた思いだ。
スグリも同じだったようで、驚いていた。
目を見開くスグリも可愛い。
…って、そうじゃなくて!!
なんかもう煩悩に塗れて過ぎる!!
そのせいでスグリに呆れられたらどうしよう!?
内心発狂していると陛下の戸惑った声が耳に届いた。
「だ、大丈夫か?」
「へ?」
顔を上げると陛下の困惑した顔が在った。
いつの間にか人の目を集めてるし…。
あはははー、ヤラカシタ。
リンヤなんて手で顔を覆う始末だ。
スグリは、うん、相変わらず私を守るように立っている。
呆れた様子はない。
なら、いいや。
「ところで、何故このようなところにいらっしゃったのですか?」
変わり身の速さに王族親子はびっくりしていた。
ふん、スグリさえ良ければ他はどうだっていいんだよ。
どう思われようがね。
「……馬鹿息子の所業を聞いてね、是非、直に会って礼を言いたかったんだよ。ココからは父親として礼を言おう、この子を道中助けてくれてありがとう。とんでもない方向音痴っぷりだっただろう?」
「はい」
迷う事なく頷くとリンヤは項垂れた。
「何も即答することないじゃないっスかー」
ペタンとテーブルに張り付くリンヤに笑ってしまう。
「ホントのことじゃない。どうやったら森に入ることになるのやら」
「それ、出会った時のこと言ってるスよね?!今更蒸し返さないでくださいっスよ!!」
「え?だって、ずっと謎だったんだもの。どうやったら道が在るのに森に入って迷子になるのか」
「食料を探してたんっスーー!」
「それでどうやったら迷子になる。」
「うぅー、食料探しに夢中になってたら出れなくなってたんっスー…」
阿保の子だ。
陛下の目も心なしか哀れんでるような気がするのは私だけか?
「ところでハナさん」
「?はい」
「その話し方が本来の君なのかな?」
「話し方…?………あ、」
陛下の前なのに思いっきしリンヤを弄ってた。
「まぁ、はい……」
どんな反応をしてくるのか…。
「そうか。ならば、私にもそれでいいぞ?」
「はい?」
え、今この人なんて言った?
タメ口でいいって?
そんなのもちろん……、
「本人がいいならそうさせて貰う。えーと、リンヤのお父さん?」
敬語なんて堅苦しいから了承して貰えて良かった。
「ふっ、はははは!肝が据わっているんだなぁ、ハナさん。普通は遠慮するところだぞ?」
楽しそうに笑う陛下…、リンヤのお父さんに不機嫌になる。
「自分でいいって言っておいて……、
こういう時はその好意を無下にする方が失礼なんだよ?」
ガッツしタメ口で話す私にリンヤも護衛の人も顔を青ざめさせた。
当の本人は笑っているが。
「あっはっは!確かにその通りだ!」
大丈夫か、この人。
「ハナ、」
「ん?」
声を掛けられて後ろにいるスグリを振り返る。
と、眉間に皺を寄せていた。
「どうしたの?警戒態勢に入って」
小声で尋ねると怪しい気配がする、と告げられた。
怪しい気配?
首を傾げると目線で訴えられた。
2人が危ない、と。
チラリと視線を向けると2人は談笑していた。
スグリの感は外れない。
これだけ護衛がいるから大丈夫だろうけど………。
「ごめん、ちょっと私出てくるね。
スグリはココにいて」
ボソリ、と最後だけスグリに呟くと頷いた。
宿屋の外に出て雰囲気を魔力で探る。
すると、宿屋の陰に数人の気配を感じた。
………アレか。
走って向かうと話し声が聞こえる。
「なぁ、アレって本当に陛下なのか?
人違いじゃねーの?」
「いや、陛下であってる。それに護衛があんなにたくさんいるんだ。違うわけないだろ。」
只のゴロツキ?
それとも"陛下"の命を狙う刺客?
「一緒にいた可愛い女が言ってたじゃねーか。王子に紹介されたってな」
「そういえば…。なら間違いないな」
「これで金をたくさんせびれば一生遊んで暮らせるなー」
………只のゴロツキだった。
それなら身元を聞き出さずでいいか。
「ねぇねぇオジサンたちー」
「な、誰だ…って、陛下と一緒にいた女じゃねーか!!」
「こりゃ好都合だぜ!」
「人質にすりゃ、楽だぜ!」
ウッザ。
「今の話ぃー、本当なのぉー?」
………私キモい。
ぶりっ子キャラじゃないんだけどな。
ニコニコ顔でゴロツキに近寄る。
「なぁ!こいつ奴隷商人に売ったら高くつくんじゃねー?!」
………人の質問に答えろよ。
まぁ、別にいっか。
というかココにスグリいなくて良かったね。
スグリが聞いてたら殺されてたよ?
襲い掛かってくる男たちを手でいなし、気絶させる。
魔法しか使えないと思ったら大間違いだよー。
スグリに護身術覚えるの手伝って貰ってたんだよね。
だから魔法を使わずに敵を倒すこと、少しなら出来るんだよね。
全員倒し終えると表にいた護衛の人を呼んだ。
「すみませんー、そこの護衛の人ー!あなたたちの主人の命を狙っている奴等がココにいまーす!!」
「何だと!?」
バタバタと慌ただしく走って来る十数人の男たち。
………こんなに居たの。
お忍びならもうちょい減らそうよ。
確かに相手は王様だけどさー。
呆れて物が言えないとはこの事だね。
(ていうか、よくあなたたちの主人で自分たちのことだと分かったな……)
影を薄くし護衛の人たちとすれ違う。
宿屋に入り元の位置に着くとしばらくしたら表の護衛の人があの男たちを連れて入って来た。
げっ!
目、覚めたんだ。
スグリの影に隠れるように座った。
「何事だ」
「はっ!この男たちがへい、旦那様の命を狙っていました!」
「なに?」
「ち、違いますって!命じゃなく金ですってば!」
いや、どっちもダメだから。
様子を伺いながら話を聞いていると1人の男が余計なことを口走った。
「さっきココにいた可愛い顔した女にやられたんだよ!あの女のフリをした悪魔に!!」
「………悪魔?」
リンヤと陛下の視線がこちらに向けられる。
………というか、
「だーれが、女のフリをした悪魔だって?ん?」
ダンッとそれを言った男の股間の前の床を踏んだ。
「ヒィ!」
「どうしたの?ん?その口は只の飾りなのかな?さっさと言わねぇとこのお粗末なモン、踏み潰すぞ?」
ニッコリと笑って見せると男は泡を吹いて気絶した。
ついでに他の男も。
「ったく。これくらいでだらしない。
………何やってんの」
顔を上げるとその場(宿屋内)に居た男たちが股間を押さえて悶えていた。
「い、いや、想像しちゃって………」
答えたリンヤを見やる。
「………別に、ソレがなくなっても男は後ろでもイクことできんだからいいでしょ」
現にスグリがそうだし。
前世でもそうだったしね。
前立腺ってのを刺激したら、ね。
「そ、」
「そ?」
ガバッと顔を上げたリンヤの顔は青いのか赤いのか……。
「そ、そんなこと、知りたくなかったっスーーーっ!!」
うわぁーん、と手で顔を隠すリンヤ。
何故か、陛下もおんなじ反応をしている。
食堂内を見回すと(スグリ以外の)他の男たちも手で顔を隠していた。
「………部屋に戻ろっか」
「ああ」
手を繋いで部屋に戻ると重要なことを思い出した。
「あ、護衛隊長のこと忘れてた」
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