異世界転生

イチゴ牛乳

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15話 契約した神獣

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「ハナさん、そういえば神獣様と契約してたっスよね?」
野宿中、リンヤがそう尋ねて来た。
「んー、そういえばそんな事言ったね~。それがどうしたの?」
「いえ、ただ気になっただけっス」
苦笑を浮かべるリンヤに首を傾げた。
ふーん。
………言わないんだ。
「………“我を護りし守護獣よ、此処に降り立て”」
「………………え?」
私のその言葉にリンヤは唖然としている。
その他の皆は興味深かそうにこちらを見ている。
………そういえば、スグリでさえもあの子達のこと知らないんだよね~。
てことは初のお披露目?
そんな呑気な事を考えながらも私の周りには複数の召喚陣が。
『ハナ、どうした?もしかして、何か在ったのか?』
1番初めに現れたのはフェルだった。
「フフッ。違う違う。ただ私が会いたくて呼んだんだよ。ダメだった?」
哀しげに首を傾げるとフェルは慌てて念話を送って来た。
『ダメなわけない!!寧ろずっと側に居たいくらいだ!』
それに私はクスクスと笑った。
『………相も変わらず、ハナは意地悪だな。』
いじけたようなその姿にますます笑みを深めた。
「そう?まぁ、これが私だしね。それについては諦めてね?」
『ハナ、そこの駄犬だけじゃなくて俺にも構え』
不機嫌そうに言う、なんともオレ様なレッカ。
フェルは狼……ましてや神獣なんだけどなぁ。
扱いが雑。
まぁ、同じ神獣だからだろうけども。
「ごめんごめん、慌てる姿が可愛くてつい」
楽しそうに笑う私を見てか、レッカは呆れた“声”を出す。
『悪びれもせず言うところがハナらしいよな』
そりゃ、悪いと思ってないしね。
にこにこする私にレッカは頭を擦り付けて来た。
……オレ様なのにこう言う甘えん坊なところがあるから憎めないんだよね。
その頭を撫でつつ最後の1匹に視線を移す。
「琥珀、久しぶり」
綺麗な純白な毛皮を持つ琥珀。
『ん。』
幼な気に頷く琥珀に笑みを深めた。
「………ハナさん」
すると、口を閉ざしていたリンヤが口を開いた。
あ、忘れてた。
皆んなが居るの。
「何?」
「フェンネルにドラゴン、それに白虎っスよね?!!なんでそんなに神獣と契約してるんスか?!というか白虎のことは初耳っス!!」
「ん?琥珀??……あぁ、琥珀とはつい最近に契約したからね~。一時期姿見せなかったでしょ?私。その時にこの子を拾ってね、それからかな?」
「それからじゃないっスよ!どうしてそうポンポンと契約を……!!神獣は気高くその姿を現わすことはないという伝承はなんなんスか?!!嘘なんスか?!」
………大分、荒れてんなぁ。
これは……、精霊王とか創造主とも契約しているなんて言えないなぁ。
リンヤ、将来禿げるんじゃ……?
まぁ、その苦労というか悩みのタネはほとんどの確率、私だけど。
『なんだ、この人間。荒れに荒れてるなぁ』
悪気なしに言ったレッカ。
『仕方なかろう。我らはそれほど、姿を見せることがなかった。こうなる事は予測出来ただろう』
うん、“普通は”神獣の姿なんて見れないよね。
一生のうちに見れただけでも奇跡に近い、それほど神獣は神聖なのだ。
そんな神聖なモノと契約、ましてや3匹も契約しているのだ、荒れない方が可笑しいのだろう。
………それに比べて、リンヤ以外の者が落ち着いているって事の方が異常なのだろう。
キルなんて分かり切っていたような顔をしている。
「ハナが凄いのは当然だろ?リンヤ」
スグリ、それは違う。
さも当然のように言い切ったスグリに思わず突っ込みたくなった。
それはなんとか心の内に留めたが。
今も尚、唸っているリンヤに内心同情する。
…………死なない程度に頑張れ。


「う~、頭痛いっス………」
1番後ろを頭を抑えながら歩くリンヤ。
見ていてなんか罪悪感が湧くから神獣達には可哀想だけども、帰ってもらいました。
まぁ、いつでも逢えるしね。
呼べば。
名残り押しそうだったけど。
「ハナ、フェンネルとドラゴンとはいつ契約したんだ?」
スグリのその質問に全員の視線が集まる。
何気に、リンヤの視線もこっちを向いている。
「ん~、いつだっけなぁ。確か13歳らへんでだったと思うよ。フェルは何気なく召喚してみたら出て来て、レッカは樹海をフラフラしてたら洞窟が在って入ってみたらレッカが其処に居た、みたいな?」
「「「……はぁ?!!」」」
………見事に全員に呆れられた。
うん、分かってた。
自分でも言いながらあ、普通じゃないな、自分とか思ったくらいだし。
普通だったら召喚しようとして出来るもんじゃないし、樹海に入るなんて以ての外だ。
樹海、とは通称“迷いの森”のことである。
迷いの森はその名の通り、入ったら迷ってしまう森だ。
それだけではない。
その森にはSランクの魔獣がウジャウジャと住み着いている。
上級冒険者の経験値上げには打って付けな場所なのだが……何せ、一度入ったら出られないという曰く付きである。
屈強な冒険者でも怯え…んんっ、躊躇してしまう森だ。
(普通の子どもが)幼い私が入って生きて帰れるような場所ではない。
「…いつ樹海に行く機会があった?」
スグリは恐る恐る尋ねてきた。
「えーと、家族旅行の時に私、ワザと……あー、迷子になったじゃない?その時」
「「「(………ワザと??)」」」
若干、目が引いてる気がする。
いや、絶対。
「別にいいでしょ。基本的に私、快楽主義者で楽しければオッケーなとこあるし。分かってることでしょ?」
今までだってそういう事あったし。
ね?
ん?と無言の圧力をかけると視線を全員で逸らしましたよ、ええ。
失礼ね。
他はともかく、スグリとソラはそれくらい分かるでしょ。
前にも色々やらかしてたし、私。
未だに謎の沈黙が男性陣を包んでおり、それを無視して私は1人、先を歩きだした。
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