1 / 67
第一章 現代編(闇組織の存在)
01 奴隷販売業者①
しおりを挟む
白川運輸は"森下製作所"が小さな町工場であった時代からの取引業者で、数年前に亡くなった先代社長は最も信頼出来る親友の一人で、昔は安酒場を二人で頻繁に飲み歩いていた。
その一人娘である"白川浪江"は早くに実母を亡くし、昔から娘を欲しがっていた珠江と共に隆之も実の娘のように可愛がっていた。
勝気な浪江は誰に対しても、為口で話しするのと、どこか黒い霧に包まれたアングラな面があり、珠江と隆之が猫可愛がりしていたのも気に入らなかった二人の息子は、潔癖で糞真面目な性格もあり、浪江を酷く嫌っている。
白川運輸も昔は大手の下請け運送で食いつないでいるような小さな運送会社だったが、"森下製作所"が大きくなるにつれ海外との取引も始め、今では国内で5本の指に数えられる大手運送会社になっている。
先代が亡くなり、浪江が二代目社長となった頃から、二人の息子は白川運輸を切ろうと考えていたのは隆之も薄々分かっていた。そして隆之に社長職を譲られた長男と次男の専務は、隆之が代表権を返上した事を契機と考えそれを実行しようと準備を始めているのを、勘の良い浪江も気付いていた。
夕方の5時過ぎ、研究室から出て息抜きのコーヒーを飲もうとお湯を沸かしている時、浪江から電話が掛かって来た。
『浪江ですけど、おじ様が引退して別荘で暇してるって従業員達に話したら、年寄り連中が是非とも一杯やりたいと言い出したの、突然で申し訳無いけど時間が取れれば今日の7時、白川運輸の旧本店まで来て貰えませんか? 但し、おじ様と違って内の従業員は貧乏なので、期待はしないでね』
『年寄りと言ったら隠居した源蔵さんや正一さんも来るのか?』
『叩っ殺しても死ななそうな源蔵爺さんが、おじ様と飲ましてくれないと死んでも死に切れないとか、訳の判らないことを言い出して大変なの、だから、ねぇ、お願い、おじ様』
『源蔵さんが来るなら他の連中も一緒だろうな。久し振りに立ち飲み屋で一杯やりたいから、浪江ちゃん、私の別荘に迎えに来てくれないか?』
『了解よ。うふっ、おじ様が浪江ちゃんって呼んでくれたの何年振りかしら?』
6時半過ぎ、迎えに来た浪江は作業服姿の隆之を見て
「おじ様の作業服姿を見ると、お父さんが戻って来たみたいで凄く懐かしいわ」
「浪江ちゃん、大将が亡くなった時、私がなんと言ったか覚えているかな?」
「えっ!」
浪江が忘れているとは思えなかったが、
「今日から、私の娘だと言っただろ」
「あの時は凄く嬉しかったわ。でも私のようなお転婆娘じゃ、おじ様には不釣合いでしょ。それより、源蔵爺さんが首を長くして待ってるから」
話を逸らすかのように隆之を連れ出し車に押し込んだ。白川運輸の旧本店に到着すると、軒先で待ち構えていた源蔵さんが宴会場に案内してくれた。既に引退したOB連中に囲まれ1時間余り、大いに語り、大いに飲み合った。
宴会はまだまだ続いていたが、特に親しくしていた白川運輸OB連中を、近くの立ち飲み屋に誘い出し、改めて再会を祝った。久々の楽しい酒に酔い、別荘での一人暮らしは味気ないと、つい愚痴を漏らしてしまう。
それから数日後、浪江から
『おじ様、そろそろ一人暮らしにも飽きてきたんじゃない。食事とかどうしてるの?』
『昔は、亡くなった妻がパートの掛け持ちで、よく自炊していたので、これと言った不自由はしていないのだが』
『おじ様が料理上手なのは昔から知ってるから心配してないけど、囲っていた愛人と全部手を切って、別荘に引っ込んでしまうから、あっちの方で不自由しているような気がしたの。だって、おじ様って、まだバリバリの現役でしょ』
『浪江ちゃん、亡くなった妻一筋の私が愛人など囲うはずないだろ。それに、還暦を迎えて、とっくの昔に現役引退だよ』
『亡くなった奥さんや、息子さんは騙せても、娘の私には通用しないわよ。何人もの女を孕ませて愛人にしていたのを私が知らないと思っているの。まあ、呆れるくらいの手切れ金を渡したようだから、誰もおじ様を恨んでる愛人はいないけど』
『浪江ちゃんには隠し事が出来ないな。それで、私に何をさせたいのかな?』
『私が裏社会と付き合いがあるのは、おじ様ならご存知でしょ』
『裏手コソコソする薄汚い奴らをとことん嫌っている割に、裏社会の連中に好かれていたのは知っている。それでも、浪江ちゃんがそっち方面に染まる事は無いだろうと無視していたがな』
『実は、女性をマゾ 調教して男達に斡旋する奴隷販売業者から上物を手に入れたので、誰か良い売り先を紹介してくれと頼まれたの』
『それを私が買って、その業者を潰してくれとか思ってないか』
『さすが、おじ様。この業者程度なら私でも潰せるけど、結構ヤバい組織が後ろにいるみたいなの。だからお願い、おじ様なら何とか出来るでしょ』
『ともかく、明日の夕方5時頃に箱詰めで届けるように連絡するから、外出しないでね』
『どうせ殆ど出ることもないから、多少時間が前後しても構わないと運送業者に伝えてくれ。それで、金は幾らくらい準備すれば良い』
『まずは商品を見て、一緒に同行してくる女と交渉して決めて。あっ、かなりやり手の女だから、気をつけてね。まあ、おじ様があの程度の女に丸め込まれる訳無いか』
その一人娘である"白川浪江"は早くに実母を亡くし、昔から娘を欲しがっていた珠江と共に隆之も実の娘のように可愛がっていた。
勝気な浪江は誰に対しても、為口で話しするのと、どこか黒い霧に包まれたアングラな面があり、珠江と隆之が猫可愛がりしていたのも気に入らなかった二人の息子は、潔癖で糞真面目な性格もあり、浪江を酷く嫌っている。
白川運輸も昔は大手の下請け運送で食いつないでいるような小さな運送会社だったが、"森下製作所"が大きくなるにつれ海外との取引も始め、今では国内で5本の指に数えられる大手運送会社になっている。
先代が亡くなり、浪江が二代目社長となった頃から、二人の息子は白川運輸を切ろうと考えていたのは隆之も薄々分かっていた。そして隆之に社長職を譲られた長男と次男の専務は、隆之が代表権を返上した事を契機と考えそれを実行しようと準備を始めているのを、勘の良い浪江も気付いていた。
夕方の5時過ぎ、研究室から出て息抜きのコーヒーを飲もうとお湯を沸かしている時、浪江から電話が掛かって来た。
『浪江ですけど、おじ様が引退して別荘で暇してるって従業員達に話したら、年寄り連中が是非とも一杯やりたいと言い出したの、突然で申し訳無いけど時間が取れれば今日の7時、白川運輸の旧本店まで来て貰えませんか? 但し、おじ様と違って内の従業員は貧乏なので、期待はしないでね』
『年寄りと言ったら隠居した源蔵さんや正一さんも来るのか?』
『叩っ殺しても死ななそうな源蔵爺さんが、おじ様と飲ましてくれないと死んでも死に切れないとか、訳の判らないことを言い出して大変なの、だから、ねぇ、お願い、おじ様』
『源蔵さんが来るなら他の連中も一緒だろうな。久し振りに立ち飲み屋で一杯やりたいから、浪江ちゃん、私の別荘に迎えに来てくれないか?』
『了解よ。うふっ、おじ様が浪江ちゃんって呼んでくれたの何年振りかしら?』
6時半過ぎ、迎えに来た浪江は作業服姿の隆之を見て
「おじ様の作業服姿を見ると、お父さんが戻って来たみたいで凄く懐かしいわ」
「浪江ちゃん、大将が亡くなった時、私がなんと言ったか覚えているかな?」
「えっ!」
浪江が忘れているとは思えなかったが、
「今日から、私の娘だと言っただろ」
「あの時は凄く嬉しかったわ。でも私のようなお転婆娘じゃ、おじ様には不釣合いでしょ。それより、源蔵爺さんが首を長くして待ってるから」
話を逸らすかのように隆之を連れ出し車に押し込んだ。白川運輸の旧本店に到着すると、軒先で待ち構えていた源蔵さんが宴会場に案内してくれた。既に引退したOB連中に囲まれ1時間余り、大いに語り、大いに飲み合った。
宴会はまだまだ続いていたが、特に親しくしていた白川運輸OB連中を、近くの立ち飲み屋に誘い出し、改めて再会を祝った。久々の楽しい酒に酔い、別荘での一人暮らしは味気ないと、つい愚痴を漏らしてしまう。
それから数日後、浪江から
『おじ様、そろそろ一人暮らしにも飽きてきたんじゃない。食事とかどうしてるの?』
『昔は、亡くなった妻がパートの掛け持ちで、よく自炊していたので、これと言った不自由はしていないのだが』
『おじ様が料理上手なのは昔から知ってるから心配してないけど、囲っていた愛人と全部手を切って、別荘に引っ込んでしまうから、あっちの方で不自由しているような気がしたの。だって、おじ様って、まだバリバリの現役でしょ』
『浪江ちゃん、亡くなった妻一筋の私が愛人など囲うはずないだろ。それに、還暦を迎えて、とっくの昔に現役引退だよ』
『亡くなった奥さんや、息子さんは騙せても、娘の私には通用しないわよ。何人もの女を孕ませて愛人にしていたのを私が知らないと思っているの。まあ、呆れるくらいの手切れ金を渡したようだから、誰もおじ様を恨んでる愛人はいないけど』
『浪江ちゃんには隠し事が出来ないな。それで、私に何をさせたいのかな?』
『私が裏社会と付き合いがあるのは、おじ様ならご存知でしょ』
『裏手コソコソする薄汚い奴らをとことん嫌っている割に、裏社会の連中に好かれていたのは知っている。それでも、浪江ちゃんがそっち方面に染まる事は無いだろうと無視していたがな』
『実は、女性をマゾ 調教して男達に斡旋する奴隷販売業者から上物を手に入れたので、誰か良い売り先を紹介してくれと頼まれたの』
『それを私が買って、その業者を潰してくれとか思ってないか』
『さすが、おじ様。この業者程度なら私でも潰せるけど、結構ヤバい組織が後ろにいるみたいなの。だからお願い、おじ様なら何とか出来るでしょ』
『ともかく、明日の夕方5時頃に箱詰めで届けるように連絡するから、外出しないでね』
『どうせ殆ど出ることもないから、多少時間が前後しても構わないと運送業者に伝えてくれ。それで、金は幾らくらい準備すれば良い』
『まずは商品を見て、一緒に同行してくる女と交渉して決めて。あっ、かなりやり手の女だから、気をつけてね。まあ、おじ様があの程度の女に丸め込まれる訳無いか』
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる