無慈悲な正義と女難

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第四章 現代編(制裁される悪女①)

32 山野専務の後妻①

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財務監査で地方工場に出張しているはずの山野専務が、どの工場にも立ち寄った形跡が無い事から、様子を伺いに専務の自宅を訪ねると1年前に結婚した奥さんと顔を合わせた隆之は腰が抜けるほど驚いた。
5年前、経営者として隆之の師匠とも呼べる高齢の元大手重電機メーカー社長が信頼していた訪問介護士に5000万もの預金を持ち逃げされた事件があった。その預金を持ち逃げした介護士の女がなんと山野専務の後妻であった。
我が目を疑ったが、間違いなくあの女だ。老舗の大手福祉法人から派遣された介護士だったので、彼もまさか預金を持ち逃げされるとは思わなかったのだろう。長女の新居購入資金として3000万を引き出してくるように依頼され通帳と印鑑を預かった翌日、銀行から全額引き出し、そのまま姿を消してしまったのだ。
彼の長女は同居を強く望んでいたらしいが、嫁ぎ先には旦那の両親が同居していたので、娘思いの彼は遠慮して同居を拒んでいた。彼は預金を複数行に分散していたので、長女への援助資金はどうにか別の預金で賄うことは出来たらしいが、やはり信頼していた女性に裏切られたショックは大きかったようで、急激に老け込んでしまい半年後に亡くなった。
長年、会社経営についてアドバイスを受けていた恩義もあったが、話し相手として月に数回彼の自宅を訪ねていた隆之に、自分が死んだ後、親切に介護してくれた彼女に幾らかの財産を分け与えるつもりだと嬉しそうに紹介してくれた。
その話は長女も承知していたらしいが、彼は亡くなるまで預金を介護士の女に持ち逃げされた件は隠していたらしい。それを知らなかった隆之が、彼の通夜の席で長女に話してしまった。その事件が彼の死期を早めた事に直感的に気付いた長女の嘆きは尋常で無く、今でもその女に深い恨みを抱いている。
隆之が彼の長女に連絡を入れようと携帯を取り出すと女は何かを察知したのか
「主人は、3日前から地方工場に出張しているのですが、どのようなご用件でしょうか?」
隆之の顔は覚えているようだが、預金を持ち逃げした件を知っているとは確信してないようだ。
「ちょっと内々の相談があったのだが、不在ならまた改めて伺う事にします」
名刺を差し出すと、それを受け取ろうとして女が手を出した瞬間、隆之は華奢な手首を掴み渾身の力を込めて握り締めた。
「ひぃぃっ!」
小さな悲鳴を上げ、必死に逃れようとする女。こんな玄関先で騒がれても困るので、威嚇だけに留め手を離してやると涙目で手首を摩っていた。
「専務が再婚されたのは、確か1年前だから、結婚前は何をされていたのですか?」
じっと睨み付けながら問い質す
「1年間、海外留学してから日本に戻り外資系商社に就職しました。仕事の関係で山野と知り合い、口説かれ続け2年半で退職してしまったのですけど」
と蚊の鳴くような声で女は答えた。
「ふぅん、預金を持ち逃げされたショックで意気消沈した彼が亡くなった頃、盗んだ金で海外留学とは良い気なものだな。まあ、何れ近いうちに天罰が下されるだろうな」
独言のように呟くと、目を見開き顔面蒼白の女は、言葉も出せないでいた。取り敢えず今日のところは、これぐらいで帰る事にした隆行は
「まあ、専務も不在なので」
玄関のドアを閉める時、呼び止めるような声が聞こえたが、隆之は無視するかのように玄関を出た。専務宅から直ぐの信号を渡り、女が追って来る事に気付きながら、ポストの横で携帯電話を掛けようとしていると
「待って、ねぇ、待ってよ」
女がいきなり腕を掴むので、鬱陶しそうに振り払い
「何か用ですか?」
「話しがあるのです」
「私は奥さんに話しなどありませんが」
女は携帯を掛けようとする隆之の前に回り込み
「亡くなった彼の娘さんに知らせたら喜んでくれるだろうから、何せ今でも泥棒女を探しているので」
「ちょっとで良いから話を聞いてよ」
「それが人に頼み事をする態度ですか。鬱陶しからどっかに行ってください」
「御免なさい、お願いですから話しを聞いてください」
こんな道端で押し問答しているのを人に見られると厄介なので
「駅前の喫茶白馬車で話しを聞かせなさい」
振り向きもせず歩き始める隆之の背後から
「電話は待ってください」
何度も念を押すと、自宅に戻って行った。喫茶店でホットコーヒーをのみ終わった頃、他所行きの服に着替えたらしい女が店に入って来る。暫く、切っ掛けを掴めず女は何も話さず黙っでいたが、隆之がそれ見よがしに時計を覗くと
「御免なさい」
「謝る相手は私では無い」
女は預金を持ち逃げした経緯を話し始めた。5年半前、友人に騙され保証人を引き受けたばかりに1000万の借金を背負い、その借金と言うのがタチの悪い金融会社のもので、毎日の取立て屋に追い回され、後はソープにでも身を沈めるしかない状況まで追い詰められていたらしい。
そんな時、残高5000万の通帳を預かり、悪いことだと知りながら全額を引き出し、借金を清算した残りの金で海外留学し外国語を勉強したのは昔から憧れていた重役秘書の夢を叶えたかったからで、そして最終的にお金持ちと結婚するのが目的だったらしい。
水商売をしていた母親が何人もの男に抱かれお金を得ている姿を見て育った女は、水商売だけはどんな事をしてもやりたくなかったと涙を浮かべて話した。それにしても少女を奴隷として慰み者にしている山野と結婚して、この女は本当に幸せなのだろうかと疑問を感じる。
「人の信頼を裏切り、山野専務夫人となった奥さんは本当に幸せなのか?」
女は黙り込んで何も答えない。
「幸せなのかと聞いているのだが」
「はい、とても大事にして貰っています」
「山野専務は、奥さんの過去を知っている訳は無いだろうな」
女は目にいっぱいの涙を浮かべていた。
「まあ、どんな事情があろうが泥棒犯には違いないからな。それじゃ、清算に行こうか?」
「嫌、嫌々、許して」
女は首を何度も横に振り嫌がる
「嫌では済まない。それじゃ、警察に自首でもするか?」
「そ、そんな・・・」
「彼の死期を早めたのは間違いなく奥さんなのですよ。彼の墓にお参りして頭を下げるくらいは出来るだろう。当然、彼の娘にも謝って貰うつもりだが、彼を無理矢理でも同居させ無かった事を後悔しているから、奥さんに対する憎しみは半端ないとは思うがな」
顔面蒼白で身体を震わせている女に更なる追い討ちをかける
「殺されても文句を言えないような事をしたんだから、仕方ないだろ」
首をブルブル振る女、その喜劇のような仕草に隆之は思わず苦笑いしてしまう。それをどう捉えたのか
「お願い、彼の娘さんには言わないで、取り敢えず、今は3200万しかないので、残りは必ず返金しますから」
隆之は鋭い眼差しで女を睨むと
「彼は既に亡くなっているのだが、奥さんは誰に返すつもりかな。それに、山野が2000万余りの金を理由も聞かず出すわけ無いだろう。離婚してソープでも務めれば奥さんの美貌なら5年有れば帰せるかもしれないが、何れにしても返金する相手が亡くなっているのだから、彼の娘さんに謝って交渉する以外の選択肢は無いな」
テーブルの向かい側で唇を噛んで震えている女を見てる内に、悪戯をしてみたくなった隆之は靴を脱ぎ、爪先で女のスカートを捲り上げ、膝の間に押し当てた。女は両膝を強く締めて少し肩を震わせていたが、そのまま爪先で膝を割るように差し込んだ。
どうするか期待を込めて待っていると、女は自分からゆっくり膝を開いた。
「ふんっ、そう言うつもりか」
小さく呟き、爪先をゆっくり奥に進め、股間を下着越しに親指で突いてみるが、女は俯いているだけで黙ったままであった。別に強要しているわけではないのに、隆之の行為を容認しているように思える。そのまま悪戯を続け店員を呼ぶ
「悪いが、同じのを頼む」
店員がやつて来ると、ビクッと膝を閉じかけるが、隆之が爪先を退けないのを知ると、また膝を緩め始めた。店員も隆之の行為に気付いたようで、露骨な視線で眺めていた。女の股間を弄りながらコーヒーを飲み終わると
「出ようか?」
靴を履き、立ち上がった隆之が伝票に手を伸ばすと、サッと横から女が奪うように伝票を持ってレジに向かうので、隆之は店を先に出て行った。ゆっくり歩いていると女が急ぎ足で追いついて来る。
「ご馳走さん」
「いえ」
女は隆之の後を着かず離れず、ついて来る。
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